神の代行者
シディアの首都『ハイドラッド』の入口、オレたちと七聖者の三人、エリスの間には張りつめたような異様な空気が流れていた。
「どういうつもりだ… 、
何を考えている…? エリス… 」
エリスにとっては愚門かもしれないが、状況が全くわからないオレは敢えて聞いてみる。
「今の陛下の戦力では七聖者三人を相手にするのは少々荷が重いと思いまして。
私がこれらを相手させて頂きますので、陛下たちは街の中へ。」
エリスは淡々とオレたちにそう告げた。一人で七聖者三人を相手するというのか? それにこいつの言う事を鵜呑みにして良いのだろうか… 。
「貴様!
我らの力を侮っているのか! 」
戦力が劣るという意味で捉えたエカチェリーナはエリスに対して感情的になっている。
「弱くはないと思いますが、荷が重いと言っているのです。
そんなに気に入らないのであれば、お手伝いさせてあげても良いですよ。
あなた、闇の力を持っているようですし。 」
「お手伝いだと?! 」
どうやらエカチェリーナにとってエリスは相当相性が悪いようだ。もう彼女はブチ切れである。
「私一人で十分なのですが、
それだと『ケーバル』のように、『ハイドラッド』も壊滅してしまうと思いますので。
私は構わないのですが、陛下はそれを望んでいないように思えます。
ですから、次元の彼方へ葬り去る力で街の壊滅を回避するための手伝いならして頂いても構わないですよ。」
「言ってくれる!
なら、七聖者と共に貴様も闇に葬り去ってくれるわ!! 」
エカチェリーナは背中からコウモリの羽を生やし完全に本気の戦闘モードに入っていた。
「あなた方、好き勝手に言っていますが、我らは七聖者、神の代行者ですよ。
第二・第三・第四の使いを相手にそんな事ができると思っているのですか?
これだから人間というのは… 。 」
七聖者の一人が言う。
「本当に愚かですね、旧世界の産物達よ。
本当に『神の代行者』でも気取っているつもりですか? 」
エリスは七聖者を嘲笑う。
「旧世界の産物じゃと? 」
エリスのその言葉にヨーコは反応を示した。
「これはこれは… 。
旧世界に興味があるようですね… 、ま、それもそうですね… 。
シディア七聖者は第一から第七の使者で構成されていて、
神の代行者などと言っているのですからおかしなものだと思いませんか?
第一の使いは火と水の攻撃
第二の使いは火の塊を放ち
第三の使いは毒を吐いてくるでしょう。
第四の使いに関しては、おそらく局地的に天候を変える事ができる程の霧や雲を操作できる水の力を持っていると考えられます。
ここまで言えば七聖者が何者なのか?
ある程度予測できるのではないですか? 近衛陽子さん… 」
「なるほど… 。
七聖者についてはある程度予測はついたが、妾の名を知っているとはお主は何者じゃ、小娘よ… 。」
「いずれわかる時が来ますよ。
それよりも陛下、どうするのですか? 」
エリスはヨーコの質問を軽く流すとオレにどうするか? 話を振ってきた。エカチェリーナはもう完全に戦闘態勢に入っている… 。
「闇の四天王!
エカチェリーナと共にここを頼む! 」
「あなたに言われなくても、我らはエカチェリーナ様と共にありますゆえ。」
闇の四天王の一人がそう言うと彼らも戦闘態勢に入ったようだ。
「エカチェリーナ!
必要以上にエリスには絡むな!
とにかく生きて七聖者を倒してくれ! 」
「もちろんそのつもりです、フーガ様。
では、後ほど。 」
エカチェリーナがそう言うと彼女と闇の四天王は七聖者に攻撃を仕掛けて行った。彼女たちを背に、オレと残りの仲間は街の中へ駆けて行った。
~エカチェリーナSide~
「なかなかやりますね。
ただ、三人を相手にどこまで持ちますかね? 」
第三の使いはエカチェリーナと互角の戦いをしている。
「ふん、我らがいることを忘れているようですな! 」
闇の四天王は二手に分かれ、第二、第四の使いをなんとか抑える。
状況はどちらが勝ってもおかしくない互角の状況であると言えよう。それらを何もしないで見ていた一人の女は呆れたように言う。
「邪魔です。
一瞬で決着をつけますので、そこをどいて下さい。
あなた達は、逸れた相手の攻撃で街が破壊されないようにして頂くだけで結構です。」
「貴様ぁ! 」
エカチェリーナはエリスを睨み付ける。
「そこまで言うのであれば、あなたから死んでもらうとしましょう。
さすがのあなたでも、三人同時を相手にするのはいささか無理があると思いますので。」
七聖者三人はエリスに対して攻撃の準備をする。彼らの攻撃はエリスが予想していた通りのものであり、必殺技と言ってもよいかもしれない程の威力があるようだ。そして、それらは同時にエリスに向けて放たれた。
街の中心部まできたオレたちの目の前には大きな塔がそびえ立っていた。そう、この街『ハイドラッド』は、ミッドガルドの首都『バベル』と瓜二つであったのである。




