回答
ジオランスの協力を得てから一か月が経とうとしていた。まぁ、協力を得たと言っても、もともと海斗の話ではジオランスはこちらに攻めてくる意思など最初から無いようだったのだが… 。それにしても、この一か月、シディア本部からジルオーダに攻めてくる様子は全く無かった。敵襲に備え、警戒をしつつも平和な日々を過ごしていたある日、ドアをノックする音が聞こえた。
「風牙!
久しぶりじゃのう! 」
ヨーコはオレを見るなり、いきなり問答無用で口づけをしてきた… 。まぁ、オレの嫁だから良いのだけれど… 。
「相変わらずズルいですね、ヨーコは。」
「お主も、マギアウラの補給は必要じゃろう? 」
「確かに… 。
でも、それってお互いにフーガ様とキスをする口実なんですけどね… 」
そう言って、エカチェリーナもオレに近寄ってきて口づけを交わす。結婚前のエカチェリーナなら、確実にヨーコを相手に、ここで修羅場になっていたのだが… 、平和になったもんだ… 。
「二人とも会いたかったよ。
偵察、お疲れ様。
で、様子はどうだった? 」
「うむ。
『ダンホーン』は制圧してきたのじゃ。
今は妾の式神四人に統治をまかせてきておるぞ。」
「え…… 」
「どうかされましたか?
ご安心下さい、フーガ様。
ちゃんと『バルアド』も四天王に任せてきております。
もちろん、制圧済ですよ。」
「えっ……… 」
やっぱりだーーー!! この人たち『偵察』の意味わかってないと思ってたんだよな… 。なんかやる気満々で出て行ったし… 。しかも、「私たちよく頑張ったでしょ? 褒めて~ 」みたいなオーラを満面の笑みでオレに向けてきている! 何よりもストレス発散した後の様な清々しい感じが怖い… 。
「フーガ様… 、先程から、どうかされたのですか? 」
「いや… 、何も… 。
二人ともよく頑張ってくれたね。
ありがとう。」
オレは済んでしまった事は仕方がないと少し諦めの感じで二人の頭を撫でてやった。そりゃ、シディアもジルオーダに攻めて来ないはずだわ… 。
「で、南の都市『ケーバル』はどうなってるの? 」
「それについてなんですが…
私たちが様子を見にいった時には、すでに街が壊滅していました。」
「人っ子一人おらんかったのぅ。
それに、誰かが支配している気配もなかったぞ。」
「どういう事だ?? 」
「私たちにもよくわかりませんでした。
ただ、無人の廃墟であったという事しか… 」
「うーん… 、一度リサに相談してみる必要がありそうだな… 」
「それはそうと、ヨーコ。
少し聞きたい事があるんだけど… 」
オレがヨーコにそう言うなりエカチェリーナはドアへ向かって行った。
「それでは、私はリサに偵察の報告をしてきますね。」
オレの真剣な表情を察したのか、エカチェリーナはすんなりと部屋を出て行った。
「で、話ってなんじゃ? 」
「オレの思い違いかもしれないけど、
研究室で白衣を着たヨーコの姿がオレの頭の中に浮かんだというか、思い出したというか… 。
あと、妹の楓香がヘルヘイムの魔王でマスターって聞いたんだけど… 」
「なるほどのぅ… 。
シャーロットとの闘いで剣術の記憶を開放した影響が出てきたようじゃの。」
「じゃあ、あれはオレの過去の記憶で事実なのか? 」
「風牙… 、そんなに過去の記憶を知りたいか? 」
「知りたいというか、気になるというか… 。」
「教えても良いが、今はまだ時期ではない。
それに、昔のお主が望んで記憶を消したことじゃ。
辛い現実を知ることになるが、本当に良いのか?? 」
「……… 、
それでも良いと思っている。
どうやってエカチェリーナや、ヨーコと出会ったのかも覚えていないし、
優奈についてもわからない事だらけだ。
リサやシャーロットだって、何でオレに好意を抱いているかわからない。
それに、オレの力を開放するには、記憶も戻さなきゃならないんじゃないのか? 」
「ふむ… 。
そこまで思っているのなら、教えてやらんでもない。
ただ、先程も言ったように、全てを教えるには時期尚早じゃ。 」
「なら、今、オレに教えれる事を教えて欲しい! 」
「……… 、
研究所で白衣を着ている妾の姿を思い出したと言っておったな… 」
「ああ… 」
「昔、妾とお主は恋人だったのじゃ… 。
ある事件をきっかけに三百年程の時を、共に過ごしていた時の記憶じゃろう… 」
「う~ん… 言ってることが良くわからない。
それに、もう一人誰かが、同じ研究室にいたんだけど… 」
「同じ研究室にいたのであれば、それはきっと楓香じゃろう… 。
他にも海斗、司、恵理奈たちも同じ施設で一緒に暮らしていた… 」
「楓香に海斗… 、それに司って… 、まさか!
あと、恵理奈って一体誰なんだ?? 」
「まぁ、そのうちわかる事じゃ。
今、話できるのはそれ位かものぅ… 」
「てか… 、三百年って… 意味がわからないんだけど… 。
海斗も言っていたけど、なんでオレはこんなに長寿なんだ?
この世界でのオレの設定的なもんじゃないのか?
記憶は全くないし…
そもそも人間が数百年生きるなんておかしいだろ? 」
「記憶はお主が望んで消したと言ったであろう… 。
それに、『この世界』とはお主の記憶にある世界じゃ。」
「そんな… 、ここは地球だっていうのか? 」
「その通りじゃ。」
「そんなバカな… 。
ミウはオレを召喚したと言っていた。
あ! あれか?
オレは平行世界から召喚されたとか?? 」
「いや、お主は一度、異世界に飛ばされているのじゃ。
というよりも、自ら異空間に封印されに行ったと言った方が良いかのぅ… 」
「ごめん、全く意味がわからない… 。」
「だから時期が早いと言ったであろう… 」
「じゃあ、時期ってのはいつ来るんだ? 」
「お主がこの世界を支配した時とでも、言っておこうかのぅ… 」
「……… 」
ヨーコから聞いた説明は納得し難いものであった。何か煮え切らずイライラしていたオレに、ヨーコは抱きついてきた。
「仮にこれから何が起こっても、何千年経ったとしても、私はあなたを愛し続けます… 」
そう言ってヨーコは涙を流しながら口づけをしてきた。そのいつもと違う口調と表情を見た時、今はこれ以上、過去の事をヨーコに聞く必要はないと思った。




