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Another Dimension Story  作者: Taro
第二章
17/32

出発

――― …この世界には、どのような生き物が存在するのだろうか… ―――


 突然の攻撃を受けて三日ほど意識不明だったらしいオレだが、ベッドから起き上がってみると身体はどこにも異常がない、というよりも、むしろ疲れが取れていて楽に感じる程だ。すげぇ!! 回復魔法!! と呑気にも喜んでしまった。


 オレが無事だという事を知らせる為、外で見張りをしてくれていたミウに会いに行くと、オレの姿を見るなり飛びついてきた。相当オレの事を心配していたようで抱きついて離れようとしない。オレはもう大丈夫だということを伝え、しばらくミウの頭を撫でてやった。


 その後、みんなを集め、オレは世界を支配する、という意思を伝えた。


「風牙くん! 

 やっと本気でやる気になったんだね! 

 神様もきっと大喜びだよ! 」


 神様?? そういえば『伝説の魔神』が世界を支配するにふさわしい存在だということを、神様とやらがミウに吹き込んでいたらしい事を思い出した。三、四ヶ月程前に、エカチェリーナが後で説明すると言っていたけど、すっかり忘れてたわ… 。


「まぁ、神様は置いといて… 

 あんな正体不明の奴らに世界を支配されるなら、オレが世界を支配しようと思っただけだよ。

 それで、今のミッドガルドの様に平和に暮らしていきたいなぁ、なんてね。

 で、リサの意見が聞きたいんだけど… 。

 『ジルオーダ』か『サーメラ』、どちらを攻めたら良いと思う?

 エリスはジルオーダを落とせと言ってたけど… 。」


「そうですね… 。

 少し悔しいですが、エリスの言ったようにジルオーダが良いかと思います。

 現在、シディア軍が優勢であり、彼らのベースキャンプはカーザス平原の西方に移動しております。

 つまり、今なら前線都市であるジルオーダから主力部隊が離れているので攻略しやすいかと思われます。」


「攻めるならジルオーダか… 。

 すごく初歩的な疑問だけど、なんで『シディア』と『ジオランス』は衝突したんだ?

 ジオランス共和国の勇者と言われている存在がシディア連邦の領地に侵入してきたのはわかるけど、シディア軍がジオランス軍に攻撃を仕掛けている間、第三国であるオレたちが攻めて来ることとか考えて無かったのか? 」


「確かにそうですね… 。

 罠という可能性も考えられなくはないです。

 もし仮に、シディアとジオランスが手を組んでいれば、私たちがジルオーダを攻めているタイミングを見計らってアスティナに侵攻してくる事も考えられます。」

 

 さすがはエカチェリーナ。かつて世界の半分以上を支配していただけの事はあって、この状況を冷静に分析しているようだ。するとリサが答える。


「断言はできないですが、その可能性は低いと思います。

 風牙様はご存知ではないでしょうが、互いが三大勢力となる以前から宗教で対立している国同士です。

 根深いものもありますし、両国が手を組むという事は考えにくいと思います。

 元々、一触即発の状態だったこの二カ国、軍事力が低いミッドガルドの事はあまり考えていなかったのでしょう。」


「……… 、わかった。

 リサの言う通りジルオーダに侵攻しようと思う。

 ただ、オレも戦争を始める前に相手の国の状況も知っておきたいと思うんだ。

 だから、ヨーコと二人でジルオーダの様子を見てきても良いかな? 」


「危険です!

 またエリスの様な者たちが現れたらどうするのですか! 

 それに、なぜヨーコなのですか! 」


 エカチェリーナは立ち上がって言った。 


「いや… 、そんな大声出さなくても… 。

 ヨーコなら帽子とかに変身できるから、いざという時の切り札になるかと思って… 。

 ……

 …

 だから、ヨーコ、一緒に来てくれる? 」


 エカチェリーナは渋々納得したようで黙ってしまった。


「もちろんじゃ。 断る理由がない。」

 少し勝ち誇ったような顔でヨーコが答えた。


 優奈とミウは「ヨーコさんいいなぁ… 」みたいな顔でオレを見ている。別に遊びに行くわけじゃないんだけど… 。


 行動が決まると、オレとヨーコはジルオーダへ向かう準備をしていた。優奈たちには引き続きアスティナを守るように指示を出しおいた。ヨーコより先に準備を終えたオレは出発前にエカチェリーナを呼び出した。


「フーガ様、どうされました? 」


「ああ、いや… 、出発する前にミウが言ってた神様の事を聞いておこうかと思って… 。

 ちょっと気になってたから… 。」


「………

 この世界には四人のマスター、つまり神の様な存在がいます。

 信じられないかもしれませんが… 、フーガ様、あなたもその一人なんですよ。

 もう一人は巫女の国『ジャンヌ』の帝、優奈のマスターです。

 そしてミウが言う神様、それは北の国『ヘルヘイム』の国王、いわゆる魔王だと思います。

 あとの一人は私も存在するという事しか知りません。

 …

 これは飽くまで私の推測ですが、ミウを魔族の学校に通わせている時に何らかの形で接触したものだと思っています。

 ミウの言う神様がもう一人のマスターでなければ、の話ですが… 。」


 魔族がいるから薄々は魔王とかいるんじゃねぇーかなぁ??? なんて思ってたけどマジで存在するのかよ! てか、オレもそんな神様的な存在だったの!! びっくりだわ!


「ちなみに、北の国ヘルヘイムは魔族の国ですので、この世界では誰も攻めようとする愚かな者はいませんし、大半の人間は伝説だと思い込んでいます。

 そして、ヘルヘイム出身の魔族は基本的には人間に興味がないようです。

 ただ、稀にアドルフの様な人間の世界を支配しようという厄介な魔族が出現するようですが… 。」


「じゃあ、未開の地に生息してるコボルトやゴブリン達は? 」


「あれらは魔族ではなく魔物。

 魔族とは異なり、なぜ奴らが存在しているのか私にもわかりません。」


「気を悪くしないで欲しいんだけど… 。

 エカチェリーナやヨーコ、あとミネルヴァたちって一体… 」


「私たちはヘルヘイム出身ではありません。

 ただ、それ以上の事は今は言えません… 。」


「そっか… 。

 まぁ、要するに、魔王はオレに世界を支配しろっていう事をミウを通して言ってきてるって事か… 。」


 ああ… 、神とか魔王とか… 、ベタベタなゲームの世界になってきたなぁ… そんな事を思いつつ、今の現実と向き合わなければならないと思った前向きなオレであった。


「ま、このままオレが動かない訳にもいかなさそうだし、とりあえずヨーコとジルオーダを見てくるよ。」


 ヨーコの準備も終わったようなので、エカチェリーナと話を終えた後、オレたちはジルオーダへ向かうことにした。アスティナを出てから、しばらく時間が経った。ジルオーダへの道中、完全に二人きりになった事を確認したヨーコは、話があるから少し時間が欲しいと言ってきた。オレがそれに答えるとヨーコは突然、魔法詠唱を始めた。彼女の魔法詠唱はエカチェリーナたちの詠唱とは違い、陰陽師が印を結びながら呪文を唱えるようなものであった事に驚いてしまった。


「アルファ、いるのじゃろ? 」


(ヨーコの声??

 何でオレの頭の中で聞こえるんだ??

 てか! 

 なんでヨーコがアルファの事知ってんだよ! 

 オレでさえまだ名前くらいしか知らねぇし!!! )


「まぁ、フーガが驚くのも無理はないのぅ… 。

 これには色々と深い事情があるのじゃ… 。」


(オレの考えてることバレバレかよ! )


「まぁ、そういう事じゃ… 」


(ヨーコさん… 、マジ怖ぇよ… 。)


「お久しぶりです… ヨーコ様… 」

 聞いた事のある声が聞こえた。アルファだ。


「なぜエリスとか言う小娘の雷撃を喰らった? 」


「あの時まではゼータに止められていましたから… 」


「なるほど… 、それにしてもあれは大失態ではないのか? 」


「申し訳ございません… 」


「だからアルファが悪いって僕は言ったのに! 」

 いつもの調子でゼロの声が聞こえた。


「ゼロ、お主もお主じゃ。

 気を抜いていたじゃろ?

 あの程度の雷撃なら「トニトルス」で弾くことができたはずじゃ。 」


「はい… 、すみません… 。」


「あと、ゼータよ… 。

 お主の役目は知っておるが、このような事になってしまった以上、アルファの接触はもちろんの事、残りの力も必要であればフーガに解放してもらう、良いな… 。 」


「はい、仰せのままに… 。」


 ヨーコがそう言い終わるとオレの頭の中が無音になった。どうやら術が解けたようだ。


「ヨーコ、どういう事だ? 」


 彼女は何事も無かったかのように笑顔で軽く口づけをしてきた。

 

「少し謎がある女の方が魅力的じゃと思わんか? 」

 

 そう言って話をはぐらかされた。これ以上ヨーコに、どういう事かを追求するのは危険だ、とオレの本能が感じていた。


「フーガ、頭の中でアルファに語りかけて、馬を用意してもらうと良い。

 ジルオーダまで一瞬じゃからな。

 妾も帽子に変身するぞ。」

 そう言ってヨーコは帽子に変身してオレの頭の上に乗ってきた。


(アルファ、馬を用意して欲しいんだけど、できる? )


「はい、では右手の手の平を地面に翳して、今から私が言う魔法詠唱をして下さい。 」


 それは五秒ほどの短いものであった。すると地面に光の円形のようなものができて、そこから馬が一頭現れた。エカチェリーナがバリオスとクサントスを出現させるのと同じような感じだ。ただ、違うのは闇ではなく光の円から現れたことだ。その馬をよく見ると足が八本ある。これって… 。


「マスターの愛馬、神獣『スレイプニル』です… 。」


 頭の中でアルファがオレにそう言った。まさかオレでも知ってる伝説の馬が存在するなんて… 。本当にこの世界はなんでもありだな… 、と思いつつ、スレイプニルにまたがりオレたちはジルオーダに向かった。

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