↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
92/179

87話

 ご機嫌な声でサンダルを褒めるアンの声が途切れた所でエミリーも同意の声を上げる。


「本当に心地良いですね、いくら拭いても入浴直後は湿っていますから」


 湿った足で靴を履く事の不快感を初めて意識したのだろう、二人は口々に褒める。


「俺の故郷では室内で靴は履き替える文化が有ってな。室内でわざわざ重たい靴を履く意味も無いからサ

 ンダルみたいな物を用いるんだ」


 室内でスリッパに履き替える文化なんてここ百年以内の話だが、細かく説明する意味も無いのでザックリした説明で終わらせる。


 やれ文明開化だの、やれ幕末の南蛮渡来だのの説明に意味など無い。


 そんな事を考えていると二人が左右に腰掛ける。


 ふわりと寄り添う二人の体温が布一枚を通して伝わってくる。


「アン、横に成らなくて良いのか?」


「一人で寝てるのは寂しいです」


「それもそうだな、横に成るとするか」


「はい」


 短く返ってくる返事に、やはり痛みの波が来ているらしい事を察する。


 ソファーから背中を離して一杯だけワインを飲んで立ち上がる。


 火の灯った燭台に歩み寄って振り返るとエミリーがベッドで何かしてからアンが横たわる。


 敷物でもしたのだろう。


 アンに毛布を掛けてからエミリーが合図をする。



 二つの燭台の火を吹き消すと部屋は真っ暗に成る。


 肩の力を抜いて、躓かない様に気を付けながらベッドに向けて歩く。


 掲げた指先がエミリーに触れ、ベッドの正確な位置を把握して横たわる。


 エミリーも続いて横に成り、毛布を被る。


 足を延ばして横に成ると湯上りの身体は一気に力が抜ける。


 力が抜けて吐息が漏れる。


 今日は面白い一日だった。


 買い物を楽しいと素直に思えた。


 アンの妹に盛大に噛み付かれるのは予想外で驚いたが。


「リュート様、今日はご迷惑をお掛けしました」


「ん?体調は女性なら当然の事だ、気にするな」


「あ、いえそれもですが、妹が失礼な事を……」


「いや、誤解を招いた俺に責任が有る。俺の故郷には既に娼婦と言う職業が公には無いんだ。知識としては知ってるが、だから俺には分からずに君達を傷付けてしまったんだと思う」


「良い国なんですね……」


「そうだな、多分凄く恵まれた国だったんだと思う……」


 治安に関しては最上位で、経済的にも上位に在り、文化的にも歴史的にも一目を置かれた国だったと思う。


 恵まれ過ぎて気が付かない、思いもよらない地雷を踏み続けてしまった。


 アンの髪を撫でようと手を伸ばすと横を向き、多分膝を抱える様に体を丸めている様だ。


 アン、それは痛みの為か?それとも不安の為か?


 右手を伸ばして髪に手を置いてゆっくりと撫でる。


 暫く続けて、アンの力が抜けるのを確認してから手を放す。


 まさか数分で寝入ったとは思わないが、声を抑えてエミリーに話し掛ける。


「エミリー、ドロップした食材を持ち込んだら、ここの厨房で料理して貰う事は可能か?」


「はい、可能ですが手が込んだものは時間が掛かりますが」


「いや、手の掛かる料理では無いのだがな、アンの貧血に良さそうな料理を作って貰えるか気に成ってな」


「貧血に効く料理、ですか?」


「ああ、好みの判れる料理だが、臭味をワインや牛乳で取り除けばなかなか旨いしな」


「どんな料理なんでしょう?」


「レバーソテーだ、小麦粉をまぶしてバターで焼けば良い簡単な料理なんだがな」


「レバーは貧血に良いのですか?」


「俺の故郷ではそう言って良く食されるな」


 医者でも無い俺には詳しく分からないし本当かも知らないが、あれだけ食われているならマイナス効果

 は無いだろう。


 本当はほうれん草も良いのだが、有るのかも分からない。


 視覚がまともなら市場で探す事も出来るのに、それが出来ないのが悔しい。


 明日はヘビーカウを含めて色々と食材モンスターを狩ってから熊狩りに成りそうだ。


 今日一日羽を伸ばした分、真面目に稼がなければならない。


 三人を一度に抱えて狩りのペースも下がる。


 今の内に稼げるだけ稼ごう。


 まあ、ゲームみたいな世界で、ゲームさながらの生活だけれど。


 熊か、きっと怖いんだろうな……。


 でも、怖いのと同時に笑えちゃうんだろうな……。


「……でも、ドット絵」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。