84話
水曜更新出来ず申し訳ありませんでした。
これからはキチンと月水金に更新していきます。
さっきまで夕暮れの赤い光が部屋に射していたが、もう薄暗くなってきた。
グラデーションが認識出来ない俺には数分毎に色が切り替わる様に見えている。
何とも情緒の無い話だ。
「暗くなって来たな……」
「リュート様は夕陽がお好きなんですか?」
「ん~、明け方と夕方の赤々とした太陽が好きなんだと思う」
「なんとなく分かる気がします」
赤く染まった太陽が窓の外の建物の向こうに完全に消える。
娯楽の無いこちらの生活だとただ夕陽を眺めているのも一つの娯楽なのかも知れない。
賭博の類は俺には不可能だし、絵画含む芸術も鑑賞不可。
音楽の類は楽しめる、か。
ただ、この文化水準だとどの位普及しているかが先ず分からない。
「エミリー、この街で音楽と言えばどこで聞けて、どんな種類が有るんだろうか?」
「私は聴いた事は有りませんが、この時間帯に吟遊詩人が歌っていると聞きます」
「ああ、この時間は外に出れなかったから、か」
「はい、なので噂でしか……」
「今度、その噂の吟遊詩人の歌を皆で聴きに行こう」
「はい!」
俺以上に気晴らしも無く、苦い日常を繰り返して来たのだろう。
エミリーの髪を繰り返し撫でながらそんな事を思う。
ギターも含めて何か楽器を嗜んでいたら良かったのだが、
生憎と自分が演奏すると言う事に興味が無かったのでそんな特技も無い。
BGMが流れるとは言え、馴染の有る音楽でも無い。
いや、これで竜探索とか最後の幻想の音楽がBGMで流れたら、どこに突っ込んで良いのかも分からないから問題回避には成るのだろうが。
馴染無い音楽しか身近に無いのは少し寂しい物が有る。
そんな事を考えていると外も部屋の中も薄暗くなっていた。
「リュート様、灯りを点けますね」
「ああ、でもいくつか点けるだけで良いと思うぞ、アンも寝ているし俺達も煌々とした灯りは要らないだろうし」
「そうですね、一つ二つだけ点けましょうか」
そう言うとテーブルの上の多分火口箱を開けて火種を起こしてから燭台の蝋燭に火を灯す。
体力を使った訳でも無いのに、気が緩んでいるのか眠気がずっと付いて来る感じがする。
「なんだか、今日は凄く眠たいな……」
「リュート様は今日一日、力が抜けていてリラックスしていた様ですからね」
窓を閉めながら、エミリーが笑う。
傍目からも弛緩していたのが見え見えだったらしい。
二か所、六本の蝋燭の灯りが部屋を薄ボンヤリと照らしている。
「少し早いですが、お風呂に為さいますか?」
「そうだな、それにアンに体も拭いてやった方が良いかも知れないな」
「そうですね、では用意して参ります」
「適当にワインか何かを頼む」
「畏まりました」
そう言うとエミリーは部屋を出て湯と酒の手配に降りる。
アンも疲れたのか、気が付いたら寝息を立てていた。
満喫したのと、生理痛で体力を使い果たしたのだろう。
本当は起こさないで寝かしていてやりたいが、どう考えても痛みで汗をかいている。
風呂に浸かるのは体に良いか分からないが、汗は流した方が良いだろう。
痛むなら、体を温めた方が良い気もするが、これはエミリーに聞いてからだな。
風呂の準備が出来たら声を掛けるとして、それまでは寝かせておこう。
しかし、血が出るって事は、生理は今日じゃなく昨日からだったのではないか?
無理をし続けていた事に思い至って眉を顰める。
こんな仕事をしていれば、信用するなんて簡単には出来ないだろうが。
知り合ってからの日数も、娼婦と言う立場も、ハンターと言う俺の立場も考えたら、信用も安心も出来ないのは仕方が無いが。
小さく悪態を吐きながら、髪を掻き毟る様に苛立ちを紛らわす。
アンは信じる信じないの答えを出せずに、そのまま耐えるしか選べなかった、そんな所だろう。
納得はするが、心外でも有る。
でも、心外だと言えるだけの関係性かと言えばそれは否だとも思う。
結局、互いに言い出せないでアンは負担を抱えたし、言って貰えず俺は不満に思っているのだろう。
今日の事で「今更手を引く事は無い」と分かってくれると良いのだが。
「信用は得難く、信頼は尚遠い、か……。まあ、数日で信頼されたら正気か疑うのだが」
そう苦笑して、我ながら我が儘な事を求めていると呆れる。
取り敢えず、エミリーが戻ったらレバーソテーの類の鉄分の豊富な食事が用意可能か確かめる事にする。
とは言え、内臓系の肉の取り扱いがこの文明度合で可能かは疑問では有るが。
冷やしたエールが無い時点で、冷蔵庫・冷凍庫の類は無いと判断して良い。
そうなると足の速い内臓系の肉はその日に仕入れた物でも危うい。
明日自力で仕入れてインベントリに入れておくのが無難だろうか。
熊が居る森にレバーがドロップするモンスターでも居れば良いのだが。
モンスター分布も詳しく調べないと駄目らしい。
そうこうする内にエミリーが部屋に戻ってくる。
複数の足跡がドアの向こうでしている所を見ると湯の準備も出来ていたのだろう。
水音を立てながら湯を湛えた瓶を持った少女達が浴室に入って行く。
少女達は二度三度と往復して、浴槽が湯で満たされたらしい。
エミリーに人数を確認して、人数分の銀貨をエミリー経由で渡す。
少女達はお辞儀をして部屋を出て行くが、何故か一人だけがその場に残る。
表情は分からないが強い視線を感じる。
このお子さんは誰だろうか?
「お客様、今夜も姉を買われたのでしょうか?」
「ん? 姉? 君はアンの妹さんかな? ああ、前金で押さえてはいるが……」
「お客様はこんな状態の姉でも買われるのですね?」
「すまんが言っている意味が分からないのだが?」
この少女は何を憤っているのだろうか?
もしかして生理中でダウンしていても御構い無しに抱くのか?と糾弾されているのか?
ちょっと待て、そこまで外道では無いつもりなのだが?
「月の物で身動き取れない女でも相手をさせるのですか?と伺っているのです」
「いや、無理させるつもりも無いから、風呂で身体を温めて寝かせるつもりだが?」
「そのお言葉は本当ですね?」
「嘘を言って何に成る? 少なくとも俺は二人を苦しめ様とは考えていないが?」
「殿方は皆同じです、女を物としか扱いません」
「部分的には正しい指摘だが、全てでは無いぞ? 少なくとも俺は」
「娼館で娼婦を買っているお客様が、ですか?」
「それでもだ、少なくとも俺は二人に嫌われたくないと思う程度には大事にしたいぞ?」
アンの妹はアンが寝込んでいるのを見て怒りが爆発した訳だ、相手が客でも我慢出来ない位に。
それは当然の反応だ、姉妹愛に溢れた話だ、と受け流せる部分では有る。
取り敢えず、誤解は解いておこう。
このお子さんも般若が幻視出来てしまう位には怖いからな。
「でも、ドット絵!!」
主人公がまた振り回されてますね。
そしてアン妹初登場(笑)




