34話
武器を前の物に戻して早速狩りに戻る。
とは言っても、一旦戻ってしまったからあまり時間が無い。
クロックチキンのグリルを複数買って移動しながら腹を満たす。
道すがら間合いの確認に数回戦闘をしつつコボルトのテリトリーに進入する。
コボルトを処理しながら昨日のコボルトの群生地に向かう。
昨日のハンター達が囲まれて居た場所でコボルトを集めて殲滅していく。
片手半剣で切り裂き、バックラーで殴り付け、体術で薙ぎ倒して行く。
流石に連日コボルトばかりだとルーチンワークになる。
「いい加減飽きてきたな」
取り敢えずノルマの50匹を淡々と片付けて行く。
レベルも上がってほぼ一撃でコボルトを倒せるのは有り難い。
結局、53匹を片付けて次のモンスターの生息地に移動する。
新しいモンスターで、しかも毒持ちとなると慎重に対処しなければ成らない。
購入した布をマスク代わりに口元に巻いて、
ポイズンモスを探す。
どうやら森の奥まで入らないと見付からないらしい。
暫く木を交わしながら15分程森の中を探索する。
蚊や蜂の様な激しい羽音がしない分、見付けにくい気がする。
周囲を見回しながら森の木々の間を抜けて歩く。
時折ハンターが入るからか薮を切り開かなくて良いのは助かる。
枝や下木を払いながら進むか、獣道を想像していたから大分楽だ。
唐突に首に小さな痛みが走る。
「痛っ、いや熱い」
振り返り仰ぎ見ると頭上に巨大な蝶が視界に入る。
「蝶? いや、ポイズンモスか!」
後ろに飛び退いて、剣を構える。
フワフワ、フラフラと舞う巨大な蛾を見据えて距離を計る。
タイミングを測って真下から跳ね上げる様に斬り付けると、簡単に両断出来た。
思いの外手応えの無いモンスターに拍子抜けする。
地面に散らばったドロップアイテムや貨幣を拾おうと近付くと、マスクで覆えていない顔や首筋に痛みが走る。
「熱い、酸性の燐粉が舞うから厄介なのか……」
顔をしかめて微痛に耐えながらアイテム等を拾う。
「最悪にウザいモンスターだ……」
そうボヤくとBGMが変わった。
辺りを見回すと新たに三匹のポイズンモスが現れた。
数歩下がって少し考える。
間合いを出来るだけ取ってサクサクと処理する方法を考える。
手の中の剣の持ち手をずらす事にする。
切っ先を下にして、手を緩める。
スッと落ちる剣の柄の末端を強く握る。
剣を構えると重心のズレから来る重量の変化に苦笑しながらポイズンモスに斬りかかる。
「ああ、全く重い!」
そう毒吐きながら体を回転させて、遠心力と剣速を稼いでポイズンモスを斬り伏せていく。
右回りをして横薙ぎに斬り付け、腕を回して遠心力の向きを変更して次のモンスターに撃ち下ろす。
もう一度勢いを殺さずにオーバースローの様に剣を回して三匹目も両断する。
三匹目がアイテムに成るまで下がって待機する。
酸で肌が焼ける痛みを態々味わう意味も無い。
30秒程待ってからアイテムの回収をする。
4つの糸玉と銀貨12枚に成った。
蛾の糸玉だから絹糸に成るはずだ。
流石に糸玉から生糸を紡ぐ技術は無い。
買い叩かれる可能性も有るので、レベルが上がるまでやったらコボルト退治に戻る事にする。
暫くするとポイズンモスがリポップする。
柄の末端を握って振るのはやたらと手首に来る。
出来るだけ同じ軌道で剣を振れる様に、立ち位置を細かく調整しながら処理して行く。
「ああ、チリチリと痛い!」
募る苛立ちが口を吐いて出る。
燐粉が見えないから位置取りが難しい。
目に見えない苦痛の原因に盛大に悩まされ続ける。
こんな所だけ非表示とか基準が分からない。
ドロップした糸玉もシルクのはずなのに、結局白い四角だ。
ありがたみが分からないシルクだと思う。
でも、ドット絵。