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アルケオン 第二章 「感情の色を探して」  作者: れんP


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殺意の少女と忍び寄る影

「アルケオン 第二章 感情の色を探して」


彩葉たちの活躍から、十年――。

世界は大きな戦乱もなく、静かな平和を取り戻していた。


日本・大阪府大阪市。

その街に、一人の守護者が存在していた。


イラストから生まれた守護者――ユズ。


絵を描くことを愛する彼女は、

しかしひとつの欠落を抱えていた。


それは――

“色で感情を表現できない”こと。


どれだけ描いても、そこに宿るはずの“想い”が分からない。

色が、ただの色にしか見えないのだ。


そんなある日、ユズは一体の想霊と出会う。


苦しみの上位想霊――

感情体「サファリング」。


感情から生まれる存在である彼女は、

ユズの“欠落”に興味を抱く。


そしてユズもまた、

“感情とは何か”を知るため、彼女と共に歩むことを決める。


タブレット端末を手に、

二人は旅に出る。


喜び、怒り、悲しみ、愛――

さまざまな感情から生まれる“想霊”を探すために。


これは、色を知らない守護者が、

“感情の色”を探し出す物語。


そして――

世界に隠された、新たな異変へと繋がる物語でもあった。

新潟県——海に面した街。


 


白い波が寄せては返し、


 


潮の香りが風に乗って広がっていた。


 


 


ユズは、その景色に目を輝かせる。


 


 


「海が綺麗です」


 


 


その声は、どこか嬉しそうだった。


 


 


サファリングは周囲を見渡しながら呟く。


 


 


「ん、あの子ならここにいると思ったんだけど...」


 


 


プライドも軽く肩をすくめる。


 


 


「見た感じいないわね」


 


 


 


ユズは少し首をかしげる。


 


 


「あの、マーダラスさんって、どんな感じの方なんですか?」


 


 


プライドは少しだけ考えてから答えた。


 


 


「殺意を司っているけど、とても純粋で良い子よ」


 


 


「自分が近くにいるだけで周りに殺意をばらまいちゃうから、人間とはあんまり関わらないけどね」


 


 


「そうなんですね」


 


 


ユズが小さく頷いた、その時——


 


 


「ん、あれは」


 


 


サファリングが前方を見る。


 


 


 


砂浜の向こうから、


 


複数の人影が歩いてくる。


 


 


 


「珍しい組み合わせだね!」


 


 


元気な少女が手を振る。


 


 


サファリングは静かに応じた。


 


 


「ん、時雨、大和、長門、ユー、久しぶり」


 


 


「はい、お久しぶりです」


 


 


丁寧に頭を下げる少女——時雨。


 


 


ユズは戸惑いながら尋ねる。


 


 


「サファリングさん、この方たちは?」


 


 


サファリングは淡々と説明する。


 


 


「ん、彼女たちは軍艦シリーズの守護者」


 


 


「駆逐艦“時雨”から生まれた守護者、時雨」


 


 


「戦艦“大和”から生まれた守護者、大和」


 


 


「戦艦“長門”から生まれた守護者、長門」


 


 


「ドイツのUボートから生まれた潜水艦の守護者、ユー」


 


 


 


ユズは慌てて頭を下げた。


 


 


「はじめまして!イラストの守護者ユズです!」


 


 


長門が穏やかに微笑む。


 


 


「うん、私は長門だよ。何をしてたのかな?」


 


 


プライドが軽く答える。


 


 


「ユズはね、感情の色を探して旅をしてるのよ」


 


 


「それでマーダラスを探してたんだけど」


 


 


ユーがすぐに口を開いた。


 


 


「マーダラスならさっきそこにいたよ」


 


 


大和が周囲を見渡す。


 


 


「もういなくなってる?」


 


 


時雨が少し不思議そうに言う。


 


 


「マーダラスが浜辺を離れるなんて、珍しい...」


 


 


 


ユズは小さく呟いた。


 


 


「二人ともすごいな~会話に入ってけないよ...」


 


 


 


その時——


 


 


「お困りかい?」


 


 


 


すぐ後ろから声がした。


 


 


 


「わぁ!?」


 


 


ユズが驚いて振り向く。


 


 


そこには——黒髪の少女が立っていた。


 


 


 


「あぁ、驚かせてしまったね」


 


 


穏やかな声。


 


 


だが——どこか“危うい”。


 


 


 


プライドの表情が変わる。


 


 


「ユズ?……って!」


 


 


「マーダラス!!」


 


 


 


ユズの目が見開かれる。


 


 


「え!?この人が!」


 


 


 


少女は、あっさりと頷いた。


 


 


 


「あぁ、うん」


 


 


「殺意——マーダラスだよ」


 


 


 


その瞬間、


 


空気がほんの少しだけ張り詰める。


 


 


 


時雨が安堵したように言った。


 


 


「無事に見つかったようだね」


 


 


「私たちは海軍基地に用があるから、もう行くね」


 


 


 


サファリングが小さく頷く。


 


 


「ん、ありがと」


 


 


 


「それじゃあ!」


 


 


ユーと大和が手を振る。


 


 


「バイバーイ!」


 


 


 


長門も一礼する。


 


 


「失礼しました」


 


 


 


そして——


 


 


彼女たちは去っていった。


 


 


 


静かになった浜辺。


 


 


 


サファリングがマーダラスに問いかける。


 


 


 


「そうだ、浜辺から離れてたみたいだけどどうしたの?」


 


 


 


マーダラスは少し困ったように笑った。


 


 


 


「あぁ、帽子が飛んでいってしまってね」


 


 


 


プライドが納得する。


 


 


 


「それで離れてたのね」


 


 


 


 


マーダラスはユズの方を見る。


 


 


 


「そうだ、ユズだったよね」


 


 


「話は聞いていたよ。感情を探してるとか」


 


 


 


ユズは一歩前に出る。


 


 


 


「はい!」


 


 


 


少しだけ緊張しながらも、言葉を続けた。


 


 


 


「それで、良かったらマーダラスさんの……感情石を触らせてもらえないかと……」


 


 


 


その瞬間。


 


 


マーダラスの表情が、わずかに曇る。


 


 


 


「……やめておいたほうが良い」


 


 


 


静かな声。


 


 


 


「言葉は消えない暴力だ」


 


 


 


「私の聞いてきた“声”を……君に聞かせるわけにはいかない」


 


 


 


重い言葉。


 


 


 


サファリングが口を開く。


 


 


 


「ん、大丈夫」


 


 


「ユズはフィアーとアンガーの感情石に触れて無事だった」


 


 


 


マーダラスの目がわずかに見開かれる。


 


 


 


「恐怖と怒りかい!?……それはすごいね」


 


 


 


だが、すぐに首を振った。


 


 


 


「でも、私のはそれの比ではない」


 


 


 


「戦争でさらに力をつけたからね」


 


 


 


「戦争は殺意の集まりだ」


 


 


「敵同士、出会っただけで殺意が生まれる」


 


 


 


その声は——


 


どこか悲しげだった。


 


 


 


「……とてもいいものではないよ」


 


 


 


ユズは、それでも一歩踏み出す。


 


 


 


「それでも!お願いします!!」


 


 


 


真っ直ぐな声。


 


 


 


迷いはなかった。


 


 


 


マーダラスは、しばらく黙ったあと——


 


 


小さく息を吐いた。


 


 


 


「……わかったよ」


 


 


 


「でも、少しでも無理そうならすぐに切り離すよ」


 


 


 


「はい!」


 


 


 


ユズが強く頷く。


 


 


 


マーダラスはゆっくりと手を伸ばし——


 


 


 


「うん、わかった」


 


 


「じゃあ——」


 


 


 


その瞬間。


 


 


 


ぴたりと動きが止まる。


 


 


 


そして——


 


 


視線が、背後へ向いた。


 


 


 


「……そこにいるのは誰?」


 


 


 


空気が、一変する。


 


 


 


次の瞬間。


 


 


 


影の中から、大男が現れた。


 


 


 


「おやおや……さすが殺意」


 


 


 


「少し殺気が漏れただけで感づいたか……」


 


 


 


サファリングが目を細める。


 


 


 


「ん、もしかして」


 


 


 


プライドが鋭く言い放つ。


 


 


 


「また至上教!?」


 


 


 


男はゆっくりと頭を下げた。


 


 


 


「おや、先に言われてしまったね」


 


 


 


「そうだよ。その通りだ……」


 


 


 


そして、顔を上げる。


 


 


 


「名乗ろう」


 


 


 


「私は——バネ足ジャックと、呼ばれているよ」


 


 


 


ユズが小さく呟く。


 


 


 


「バネ足ジャック……?」


 


 


 


サファリングが淡々と補足する。


 


 


 


「ん、ヨーロッパの都市伝説の怪人……」


 


 


 


プライドが一歩前に出る。


 


 


 


「もしかしてあなたも私たちを狙いに!」


 


 


 


バネ足ジャックは大きく笑った。


 


 


 


「えぇ、そうですとも!」


 


 


 


その体がわずかに沈む。


 


 


 


そして——


 


 


 


「さぁ!かくごしなさい!」


 


 


 


次の瞬間、


 


 


戦いの気配が、一気に膨れ上がった。

ここまで読んでくれてありがとうございます。

次回もお楽しみに

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