迫る影、選ばれし八つの標的
「アルケオン 第二章 感情の色を探して」
彩葉たちの活躍から、十年――。
世界は大きな戦乱もなく、静かな平和を取り戻していた。
日本・大阪府大阪市。
その街に、一人の守護者が存在していた。
イラストから生まれた守護者――ユズ。
絵を描くことを愛する彼女は、
しかしひとつの欠落を抱えていた。
それは――
“色で感情を表現できない”こと。
どれだけ描いても、そこに宿るはずの“想い”が分からない。
色が、ただの色にしか見えないのだ。
そんなある日、ユズは一体の想霊と出会う。
苦しみの上位想霊――
感情体「サファリング」。
感情から生まれる存在である彼女は、
ユズの“欠落”に興味を抱く。
そしてユズもまた、
“感情とは何か”を知るため、彼女と共に歩むことを決める。
タブレット端末を手に、
二人は旅に出る。
喜び、怒り、悲しみ、愛――
さまざまな感情から生まれる“想霊”を探すために。
これは、色を知らない守護者が、
“感情の色”を探し出す物語。
そして――
世界に隠された、新たな異変へと繋がる物語でもあった。
ユズ、サファリング、プライドは——
福島の公園で、
勇気を司る上位想霊感情体「カレッジ」と出会っていた。
子供たちと遊び終えたカレッジは、
ベンチに腰掛けながら楽しそうに話していた。
「へぇ〜!色んな感情を集めてるんだ!」
「はい!まだ途中ですけど……」
ユズが嬉しそうに答える。
カレッジは目を輝かせた。
「いいね、それ!すっごく大事なことだと思う!」
「感情ってさ、全部必要だからね!」
その言葉には、
迷いのない強さがあった。
プライドが軽く肩をすくめる。
「相変わらずね、あんたは」
サファリングも静かに続ける。
「……変わってない」
カレッジは笑う。
「そりゃそうだよ!これが私だもん!」
穏やかな空気。
子供たちの笑い声。
——だが、その空気が。
一瞬で、変わった。
「……へぇ」
低く、不気味な声。
公園の入り口付近。
そこに、一人の影が立っていた。
黒い気配。
どこか歪んだ存在感。
カレッジの表情が、すっと引き締まる。
「……誰?」
影はゆっくりと歩み寄る。
そして——
口元を歪めた。
「出てきて早々で悪いが——」
「俺は至上教の者だ」
その言葉に、
プライドの目が鋭くなる。
サファリングもわずかに構える。
ユズの胸に、緊張が走る。
男は、カレッジを指さした。
「今回の標的は——お前だ」
「勇気、カレッジ」
カレッジは立ち上がる。
「……私を?」
男は笑う。
「そうだ」
「俺たちの目的は——」
「戦争で活躍した“八人の感情体”の回収」
空気が、重くなる。
ユズは思わず息をのんだ。
男は続ける。
「いずれは——」
「自負、プライド」
「苦しみ、サファリング」
「お前らも奪いに行く」
プライドが冷たく言い放つ。
「……やれるものならやってみなさい」
サファリングも静かに呟く。
「……来るなら、受ける」
男は肩をすくめる。
「威勢がいいな」
「だが——」
「“恐怖”の回収に失敗したあの雑魚どもとは違う」
「ゴートマンとイエティ……あいつらより、俺は強い」
その言葉に、
ユズの表情が険しくなる。
そして——
男は、さらに衝撃的な言葉を放った。
「それとな——」
「“悲しみ”サッドネス」
「“優越感”スペリオリティ」
「——その二人は至上教の者だがな」
「……え?」
ユズの声が、震えた。
信じられない言葉。
だが——
その男は、確信を持って言っている。
静かな公園に、
不穏な空気が広がっていく。
カレッジは拳を握りしめた。
その瞳には——
強い“意志”が宿っていた
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