歪なる捕食者、その名は——
「アルケオン 第二章 感情の色を探して」
彩葉たちの活躍から、十年――。
世界は大きな戦乱もなく、静かな平和を取り戻していた。
日本・大阪府大阪市。
その街に、一人の守護者が存在していた。
イラストから生まれた守護者――ユズ。
絵を描くことを愛する彼女は、
しかしひとつの欠落を抱えていた。
それは――
“色で感情を表現できない”こと。
どれだけ描いても、そこに宿るはずの“想い”が分からない。
色が、ただの色にしか見えないのだ。
そんなある日、ユズは一体の想霊と出会う。
苦しみの上位想霊――
感情体「サファリング」。
感情から生まれる存在である彼女は、
ユズの“欠落”に興味を抱く。
そしてユズもまた、
“感情とは何か”を知るため、彼女と共に歩むことを決める。
タブレット端末を手に、
二人は旅に出る。
喜び、怒り、悲しみ、愛――
さまざまな感情から生まれる“想霊”を探すために。
これは、色を知らない守護者が、
“感情の色”を探し出す物語。
そして――
世界に隠された、新たな異変へと繋がる物語でもあった。
福島の公園。
ユズ、サファリング、プライド、カレッジの前に現れた男は——
至上教の者だと名乗り、
さらに“サッドネス”と“スペリオリティ”がその一員であると告げた。
「どういうこと!」
カレッジが鋭く問い詰める。
男は、ゆっくりと笑った。
「そのままの意味だよ……」
「あの方達は——そういう方だ」
空気が、ひどく冷たくなる。
ユズは言葉を失っていた。
だが、男は気にする様子もなく続ける。
「そうそう、名乗ってなかったな」
その体が、わずかに“歪む”。
影がぶれる。
存在が、定まらない。
「俺は——」
「フラットウッズという者だ」
その名と同時に、
周囲の空気が重く沈んだ。
異質な存在。
人ではない、“何か”。
プライドが冷たく言い放つ。
「……気持ち悪いわね」
サファリングも静かに構える。
「……敵」
カレッジは一歩前へ出た。
剣を抜く。
「それ以上、好き勝手言わせないよ」
フラットウッズは、くつくつと笑う。
「いいねぇ……勇気」
「そういうの、嫌いじゃない」
その瞬間——
空気が、弾けた。
戦闘が、始まる。
カレッジが真っ先に踏み込む。
「はああっ!!」
剣が、一直線に振り下ろされる。
だが——
フラットウッズの体は、まるで霧のように揺らぎ、
攻撃を“すり抜けた”。
「軽いな」
次の瞬間——
サファリングが動いた。
長い両袖が、ふわりと揺れる。
その中から——
しなる“ムチ”が飛び出した。
バシィッ!!
鋭い音。
ムチがフラットウッズの体を打つ。
「……捕らえる」
サファリングの攻撃は、
単なる打撃ではない。
絡みつき、動きを制限する。
だが——
「無駄だ」
フラットウッズの体が歪み、
ムチをすり抜ける。
その瞬間。
プライドが、静かに呟いた。
「——見えてるのかしら?」
フラットウッズの視界が——
“消えた”。
「……ほう?」
一瞬の沈黙。
プライドの能力。
相手の“自負”に干渉し、
精神を操る。
視界の遮断も、その一つ。
「自分が見えてると思ってるから見えるのよ」
「それを、壊すだけ」
だが——
フラットウッズは笑った。
「面白い力だな」
次の瞬間。
その体から、異様な気配が広がる。
「だが——“自負”に依存する力は脆い」
空間が歪む。
プライドが一瞬、顔をしかめた。
「っ……!」
干渉を——弾かれた。
「効かない……?」
その隙を突き——
フラットウッズがカレッジへと迫る。
だが。
「させない!!」
カレッジが前に出る。
その瞳には——
揺るがぬ光。
「私は——守るために戦う!!」
その瞬間。
空気が、変わった。
公園の子供たち。
遠くで見守る人々。
そして——仲間たち。
“勇気”が、重なる。
カレッジの力が、一気に高まる。
「はあああああっ!!」
振り抜かれた一撃。
今度は——
確かに、捉えた。
「……!」
フラットウッズが初めて反応を見せる。
だが、その口元は——
まだ笑っていた。
「いいな……実にいい」
「だが——まだ足りない」
戦いは、
まだ始まったばかりだった。
ここまで読んでくれてありがとうございます。
次回もお楽しみに




