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男装の荷物持ちが実が聖女でした~戻って来いと言われても帝国騎士団長のお膝元にいるのが忙しくて無理です~  作者: 早乙女姫織


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5/16

保護

地下通路から地上へ出たとき、少年──いや、あの光を放った存在は、私の腕の中で完全に力を失っていた。

軽い。あまりにも軽い。


だが、それだけではない。

腕に抱えた身体から、微かに温かい気配が伝わってくる。

魔力ではない。

もっと柔らかく、もっと澄んだ……祝福のような気配。

「……説明がつかん」

私は馬を走らせ、帝都の自宅へ向かった。

騎士団本部ではなく、あえて自宅を選んだのは、この少年が“保護対象”であり、“尋問すべき危険人物”ではないと直感したからだ。


扉を開け、客間の寝台にそっと横たえる。

フードがずれ、顔が露わになった。

「……少年、ではないな」

華奢な顎の線。

長い睫毛。

荒れた生活の痕跡があるのに、どこか神聖さを感じさせる顔立ち。


私は息を呑んだ。

「女……?」

だが、それ以上に気になったのは、彼女の胸元から微かに漏れる光の残滓だった。

あの地下で見た光と同じ。

魔物を退けた、あの神聖な輝き。


私は椅子に腰を下ろし、額に手を当てた。

「魔物のスタンピード……そして神聖光……。

教会の聖女でも、こんな純度の光は出せん」

帝国の記録にも、こんな例はない。


だが、目の前の少女は確かに光を放った。

私は彼女の手首に触れ、脈を確かめた。

弱いが、規則正しい。


「……無茶をしたのか。それとも、力の反動か」


彼女の服は冒険者の粗末なもの。

荷物持ちとして扱われていたのだろう。

だが、あの光を見た後では、

彼女が“ただの荷物持ち”であるはずがない。

私は深く息を吐いた。

「君は何者だ……」

寝台の上で彼女の指が微かに動いた。


胸の奥に、説明のつかない感情が湧く。

守らねばならない。

理由は分からない。

だが、この少女を放っておけば、また誰かに利用される。

私は立ち上がり、部屋の扉に鍵をかけた。

外敵から守るための鍵だ。


「安心しろ。君を傷つける者は、ここにはいない」


その言葉は、誰に向けたものなのか自分でも分からなかった。

ただ、彼女が目を覚ましたとき、

怯えた瞳を向ける必要がないように──そう願っただけだ。

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