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男装の荷物持ちが実が聖女でした~戻って来いと言われても帝国騎士団長のお膝元にいるのが忙しくて無理です~  作者: 早乙女姫織


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クラウス騎士団長

遺跡周辺の空気は、いつもより重かった。

魔物の気配が濃い。

それも、自然発生とは思えないほどの密度だ。


クラウス・ヴェルナーは、剣の柄に軽く触れながら周囲を見渡した。

帝国騎士団長として、異常の兆しには敏感でなければならない。


「……魔力の流れが乱れている。これはただのスタンピードではないな」

部下たちも緊張していた。

魔物の足跡が複数方向から交差し、まるで何かに“引き寄せられている”ように見える。

クラウスは眉をひそめた。


「中心は……遺跡の地下か」


そのとき、地面が震えた。

低い唸り声が、地の底から響く。

魔物の群れが暴走している。

だが、何かがおかしい。

まるで“逃げている”ようにも見えた。


「……魔物が怯えている?」


そんなことはありえない。

魔物が恐れるのは、圧倒的な力だけだ。

クラウスは即座に判断した。


「地下へ降りる。何が起きているのか確かめる」


地下へ降りると、空気が一変した。

湿った冷気の中に、微かに温かい気配が混じっている。


「……光?」


暗闇の奥で、淡い輝きが揺れていた。

松明の炎ではない。

魔法の光でもない。

もっと柔らかく、もっと澄んでいて、

それでいて、どこか懐かしいような気配。

クラウスは思わず足を止めた。


「これは……聖属性の……?」


帝国でも滅多に見ない、純粋な神聖の波動。

だが、教会の者がここにいるはずがない。

光がふっと強まり、通路全体を照らした。


その中心に──

ひとりの小柄な“少年”が立っていた。


フードを深くかぶり、荷物を背負った、冒険者の端くれにしか見えない。

だが、その周囲の空気だけが異様に澄んでいる。

クラウスは息を呑んだ。


「……お前は、何者だ?」


問いかけながらも、彼の目は光の残滓を追っていた。

魔物の死骸が、煙のように消えていく。

少年の足元には傷ひとつない。

魔物の群れを相手に、無傷で立っている。

それだけでも異常だ。


だが、それ以上に──

彼の周囲に漂う“祝福の気配”が、クラウスの理性を揺らした。


「聖女……いや、そんなはずは……」


少年の姿と、神聖な光が結びつかない。

だが、事実として目の前にある。

クラウスは剣を下ろし、慎重に一歩近づいた。


「……怖がらなくていい。私は帝国騎士団長、クラウス・ヴェルナーだ。

君に敵意はない」


少年──リオネッタは、怯えたようにわずかに肩を震わせた。


その仕草が、彼の胸に妙な違和感を残す。

この少年は、戦士ではない。

魔法使いでもない。

だが、魔物を退けるほどの光を放った。


「……本当に、何者なんだ……?」

クラウスは初めて、答えの出ない問いを抱えたまま、目の前の小さな存在を見つめた。

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