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男装の荷物持ちが実が聖女でした~戻って来いと言われても帝国騎士団長のお膝元にいるのが忙しくて無理です~  作者: 早乙女姫織


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魔物の異常発生

暗い通路を進んでいたはずなのに、突然、空気が変わった。

湿った石の匂いに混じって、焦げたような、鉄のような匂いが漂ってくる。

魔物の気配だ。


私は足を止めた。

胸の奥が、冷たい指でつままれたように強張る。

――こんなに多い?

壁の向こうから、複数の足音が響く。

爪が石を引っかく音。

低い唸り声。


異常だ。

こんな数、普通ではありえない。

私は後ずさろうとしたが、遅かった。

闇の中から、赤い目がいくつも浮かび上がる。

魔物たちが、私ひとりを囲むように姿を現した。

喉が震えた。

声は出ない。

武器もない。

戦えない。


――ここまで、なのか。

そう思った瞬間だった。

胸の奥が、熱くなった。

心臓の鼓動が、ひとつ、強く跳ねる。


光が、溢れた。

自分の身体から生まれたとは思えないほど、柔らかくて温かい光。

それは私を包み込み、魔物たちの影を押し返した。

魔物たちが怯えたように後ずさる。

低い唸り声が、恐怖に変わっていく。


私はただ立ち尽くしていた。

何が起きているのか分からない。

けれど、光は消えない。


まるで私を守るように、静かに揺れている。

魔物たちは、光に触れた瞬間、煙のように消えていった。

悲鳴もなく、ただ跡形もなく。

私は息を呑んだ。

――これは……私?


光は、私の手のひらに集まり、淡く脈打っている。

まるで心臓の鼓動と同じリズムで。

怖くはなかった。


むしろ、懐かしいような、温かいような感覚が胸に広がる。

「……どうして」

誰に向けた言葉か分からない。

ただ、自分の周りに円を書くように降り注がれた光に戸惑うばかりだった。



「なんか調子悪くない?」


リオネッタを見捨てた直後、彼らはようやく気付いた。

遺跡の奥へ進むにつれ、戦士が眉をひそめた。


「……おかしい。剣が重い」


魔法使いも呟く。


「魔力の巡りが悪い……? さっきまで普通だったのに」

僧侶は焦りを隠せない。


「回復が……遅い? どうして?」


リオネッタの加護が消えたことで、

彼らは本来の“凡庸な実力”に戻っただけだった。

しかし、本人たちはそれを認められない。


「なんで避けられないんだよ!」


魔物との戦闘で、いつもなら簡単に避けられる攻撃が当たる。


「痛っ……! なんでだよ!」

「お前が遅いんだろ!」

「違う! お前が合わせてこないから!」


リオネッタの加護は、

**彼らの動きを自然に噛み合わせる“見えない糸”**のようなものだった。

それが消えた今、彼らの連携はただの寄せ集めに戻る。


遺跡の奥で、魔物が異常に増えている場所に踏み込んでしまう。

「やばい……数が多すぎる!」

「なんでだ!? こんなの聞いてない!」

本来なら、リオネッタの加護が

“魔物の注意を逸らす”

“危険を察知させる”

といった形で働いていた。

それがない今、彼らはただの無防備な冒険者にすぎない。


「荷物が重い! 捨てろ!」


戦士が叫ぶ。


「くそっ……荷物が重い! 誰だよ、あいつに全部持たせてたの!」


魔法使いが青ざめる。


「リオンが……いないから……」


僧侶が震える声で言う。


「まさか……あの子が……」


だが、気づいたところで遅い。


「あいつがいないと……俺たちは……」


魔物に追われ、命からがら遺跡の外へ逃げ出した三人は、

地面に倒れ込みながら、ようやく理解する。


「……リオンがいなくなってから、全部おかしくなった」

「まさか……あいつが……俺たちを……?」

「そんな……あんな非力な荷物持ちが……?」


否定したい。

認めたくない。

だが、事実はひとつ。

彼らが強かったのは、リオネッタの加護があったから。

そして、見捨てた瞬間にすべてを失った。

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