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男装の荷物持ちが実が聖女でした~戻って来いと言われても帝国騎士団長のお膝元にいるのが忙しくて無理です~  作者: 早乙女姫織


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12/16

予感

リオンが癒しの光を放った翌日。

騎士団本部は、いつもと違うざわつきに包まれていた。


「昨日の光……あれ、本当に見間違いじゃないよな?」

「団長があんなに焦った顔、初めて見たぞ」

「教会に報告すべきじゃ……?」


その言葉を聞いた瞬間、クラウスは静かに歩み寄った。


「報告は不要だ」


低い声が、空気を凍らせる。


「昨日の件は、すべて私の監督下で処理する。

誰ひとり、外部に漏らすことは許さない」


騎士たちは息を呑んだ。

団長の声は冷静なのに、どこか切迫している。


「……団長。あの少年は、いったい……?」

「ただの保護対象だ。それ以上でも以下でもない」


クラウスはそう言い切ったが、

胸の奥では焦りが渦巻いていた。

――教会に知られれば、彼女は奪われる。

それだけは絶対に避けなければならない。


屋敷に戻された私は、クラウスの部屋で静かに座っていた。

怒られると思っていたのに、彼はただ黙って私の手を包んでいた。


「……リオン。昨日のことだが」

「ごめんなさい……勝手に力を使って」

「違う」


クラウスは首を振った。


「君は間違っていない。

だが、君の力は……あまりにも目立つ」


その声は、怒りではなく、恐怖に近かった。


「君のような力を持つ者は、教会が放っておかない。

“聖女”として拘束され、利用される」


私は息を呑んだ。


「……私、そんな……」

「君がどう思っていようと、あの光は特別だ。

そして特別なものは、奪われる」


クラウスの手が、私の手を強く握った。


「だから……頼む。

もう二度と、私の目の届かないところで力を使うな」


その声は震えていた。

私は初めて気づいた。

――クラウス様は、私のために怖がっている。

胸が熱くなり、私は小さく頷いた。


「……はい。

クラウス様が言うなら、守ります」

クラウスは安堵したように目を閉じた。


その頃、帝都の教会では──


「帝国騎士団本部付近で、強い聖属性反応を確認しました」

「聖女の気配……?」

「はい。しかも、純度が異常に高いものです」


司祭たちがざわめく。


「調査隊を出せ。“聖女候補”が現れた可能性がある」


帝国に、静かに嵐が近づいていた。

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