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人払いされた部屋の中で、二人だけの会話。
やっぱりまだ、二人にされるのは気まずい。
愛する妻を乗っ取った悪霊(仮)みたいな存在であると思われたばかりなのに。
「君はリリアを救うため、それだけの為に」
それだけと言われるとそうなのだが、けれど、本当の事だ。
物語には居ても端っこでいつも泣いている。酷い事を命じられてもできない良い子。そして報われないし、地獄に自ら歩いていくような子。だから、幸せにしたかった。なってほしかった。
「責めているわけじゃない。リリアは私にとっても、娘なんだ。
ただ、君は……いはら嬢には関係ない、物語だけの存在なんだろう。
リリアも、私も、パンジーも、リクもカイも……。
この世界のすべてはあなたには関係ない、なのにどうして」
所詮作り物。そんなの、知っている。
わかっている。
ご都合主義だと言われたって、自分勝手な原作レイプだと言われても。
「リリアが好きなんです。泣いてばかりで、不幸でも、他人を恨まないあの子が。
どんなにつらい目に遭っても、決して折れずに、負けずに。
パンジーさんは、唯一『リリアが可哀想』と言ったキャラなんです。
きっと物語にはないだけで、ハイド子爵家も言ってくれてたかもしれません。
けれど、『私』には知ることは出来なくて。
それで、『私』は、自分勝手に幸運だと思って、リリアを助ける為に」
「そうか。パンジーは、そういう人だから。きっと貴方がいなくても声を上げていたんだろう。
……でも、『物語』には貴方はない。だから、助けることが出来なかった」
「そんな」
でも、そうなのだ。
物語では、こうならなかった。
この家の人たちは良い人ばかりだ。
だからきっと、リリアは幸せになれたんだろうと理解できる。
「でも、もう『物語』じゃありません。この世界は現実。
『私』のせいで色々変わったかもしれません。
これから元のようになるかもしれません。
それでも『私』はこの世界でリリアを、みんなを、幸せにするんです」
「みんな?」
「私の手が届く範囲だけでも、幸せに書き換えて、『私』の自分勝手に巻き込んでやります。
ずっと、ずっとそうやってしてきました。
何を言われても良い。『私』が見たい結末は皆が幸せになることなんです。
リクもカイも、リリアも。
それに、あなたもです。ウィリアムさん。
『私』が必ずパンジーをここに、あなたと共にいられるように。
『私』はハッピーエンドが好きなんです」
そう。この世界に悪役なんていない。
悪霊みたいな『私』はいるけれど。
とりあえず、『私』がどうにかできそうなのは家族。そして領民だ。パンジーの身についた知識がずっと助けていてくれていた。なら、『私』はせめて、みんなの為に頑張ろう。ずっとずっとそうしてきた。『私』は自分の自己満足で描き続けた。ずっとずっと自分の欲望を見たくて描いた。たまに誘惑に負けて動画とか、画面をスクロールし続けたり……そんなこともあったけれど、欲望の為に世界を歪ませ続けた『私』だ。今更止まらない。今更やめてどうにかなることでもない。
なら、このまま突き進むだけ。
なら、このまま好きにやってやる。
『私』が望むのは光のエンディング。リリアが笑ってくれる世界。
いいや。改め、みんなが笑う世界だ。
リリアは自分だけの幸せなんて望まない。
リリアは自分だけが幸せになって喜ぶ子じゃない。
『私』ができるのは狭いけれど、それでも。
「『私』、勝手に世界を変えようとしました。
パンジーさんの人生も乗っ取って、ずっと好きに生きていました。
だからせめて、彼女に体を返すならそうしたい。
せっかく出来るなら、それに懸けたい」
「いくら彼らが天才でも、すぐにとはいかない。
上手くできたとして、永久の時間を生きる可能性だってある。その逆もだ。
パンジーと会えるのは嬉しい。出来るならば望むことだ」
「望むこと、なんて言わないでください。
望んでください。『パンジーに会いたい』って望んでください。
『私』は好き勝手しました。だから、これからはお二人が望んでください」
「ふた、り……そうか。そうだな……。そこにいるのだったな。
パンジー……、私は、私たちは共にいるのが当たり前だと思っていた。
君の変化にもっと早く気づき、口にしていれば、いはら嬢も苦しまずにすんだだろう。
申し訳ない。私は、パンジーに会いたい。そう、必ずだ」
きっと届いている。
聞こえている。
だってパンジーは、ここに居るのだもの。
二人はこの世界で愛を確かに育んでいた。
それはきっと、揺るがない確かなものなんだろう。
だからこそ、やはりその愛で怨霊(仮)は消えよう。
消えるというか、憑依先が変わるというか。
悪霊は消えないのだけど、でも、今度は二人の愛を見つめるのも良い。
あの優秀な二人なんだ。
なんか、出来そうだし、何とかしてくれる。そう信じたい。信じる。




