思い出したくなかった記憶
『み、美咲やめるんだ!わかった、話すよ、話す!』
間抜けな声がレコーダーから聞こえてくる。
『ああそうだ。私は、鹿島くんが首を吊るされた現場にいたよ。用務員室から、真島、神宮寺、ナルト、有島がみんなで鹿島くんを吊るしている現場を、、、怖かったんだ!見殺しにするつもりなんて、、ああそうだ、結果的には見殺しだ。でも、踏み台を蹴ったのは、、、鹿島くんなんだ、
彼らは鹿島くんを助けようとした、
鹿島くんはこう叫んで踏み台をーーーーー。』
さて、これはどういう事だろうか。
音源を録音したものを母に渡す事にしよう。
かつての教え子の、美咲をヤク漬けにしたボクは彼女からボイスレコーダーを受け取った。
『やっぱりあの用務員は見殺しにしたんだね。だったら鹿島の敵だ。殺さないといけないね。』
爪を噛む。
爪は割れて、血がぼたぼたと滴り落ちる。
幸いなことに、あの用務員はよくボクのお店にきてワンカップのお酒を買う常連客だ。
『緑の缶ビールをすすめよう。』
『おはよう御座います。』
『あら、おじさま。今日は早いんですね。』
『ああ、今日は休みでね。』
『朝からお酒。最高ですね。』
『うん、昨日寝れなくてね。』
『あら大変。』
『気持ちよく酔いたくて。嫌なことを忘れられるような。』
『それなら。これ、ボクのおすすめなんです。』
缶ビールを差し出した。
『じゃあ1本貰おうかな。』
小銭を渡される。
こんな端金で作れない。
『あ、いや、これキャンペーンで5本プレゼントしてるんです。』
『ああ、そうなんだ。じゃあ貰おうかな。しかし爽やかなラベルだね。なんだか、森にいるような綺麗な新緑だ。』
『ええ。いいラベルですよね。ボクもよく飲むんです。はい、どうぞ。』
あくる日。
『緑、の!緑の缶ビールをくれえええっ!!』
見たことない浮浪者風情の男。
外を見る。
用務員と見知らぬ熟女が話し込んでいる。
『キミ、あの男と知り合いかい?』
『ああそうだ、缶ビール、缶ビールをくれえええっ!!』
『いいよ。あの男をさ、この地図のところまで連れてきたらいいよ。』
男はしばらくしてふらふらとした足取りで店を出ていった。
参ったな。
おおかた、用務員から缶ビールを奪って飲んだのだろう。
『罪のない人間はあまり巻き込みたくないのだけど、、、、』
真島のサークルの人間も巻き込んだじゃないか。
ねえ、ナルちゃん?
『うるさい!』
ボク、僕?のことだってさ、、、乱暴して、、
『違う!鹿島を守れたのは、、、ボクだ、、、』
だったらさ、、、ボイスレコーダーをもう一度ききなよ。
『やめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろ!』
ボイスレコーダーの再生ボタンを、ボク、僕?僕は押した。
『もううんざりだ!!キミらにはいじめられて、そうだ!!担任の鳴沢ケイには、、、小さい頃から僕はずっとずっと!性暴力を受けてきた!もう嫌なんだ!!耐えきれない!こんな地獄!!キミらや鳴沢の悪事は既に遺書に書いた!このことが世間に出回ればみんな終わりさ!!ああああああああああ!!!
・・・・・鹿島くんはそう言って、踏み台を蹴り飛ばし首を吊りました。』
かちゃりと虚しく、レコーダーの止まる音が静寂を貫いた。




