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提案

カランコロン。


ボクのお店にお客がやってくる。


非常に珍しい。

飲食店専門に卸でやっているからだ。

一応、一般の客にも売っているけどもドヤ街での売上はそんなによくない。



いわゆる日雇い労働者が多いこの街で、高級ワインや日本酒、クラフトビールなどを置いているのはただ家賃が安いからだ。


だからめったに来ない来客で奇跡が起きた。




『何をお探しですか?』


笑いが止まらない。


唯一取り逃した復讐相手。



『そ、そのあまり眠れなくて。何かいいお酒を。』


怯えた小鹿のようだ。



ボクは表情を崩さず、部屋の奥へと手招いた。



酒屋の奥にある、鍵付きの部屋。

南京錠を開ける。


扉を開けると、ひんやりとした冷気が身を包んできた。


『これはいいですよ。』



緑の缶ビール。

ビールというより麻薬だ。



『では、これを10ケースほど頂けますか?』


この怯えた小鹿は、意外と酒豪なのかもしれない。


『・・・!!かしこまりました。』




その日は緑の缶ビールがよく売れた。







あくる日。


『いらっしゃいませ。』


『ぐへ、へへ、、緑のお!缶ビール、、ちょーらい。』


目の焦点が定まっていない。

ふらふらと天井を仰ぐように見る。

千鳥足だ。


しかし、10ケースも飲んでよく死んでないな。

これは少し焦らしが必要かもしれないな。



『今、在庫が空でして、、、入荷中です。』


『ああ!なんでよおおおおっ!』


棚の高いワインを床に叩きつける。

そしてボクの襟首を掴む。



『早くう、、、あるんでしょおおおっ!!』


頃合いか。



『お客様。優先してお売りすることはできます。』


『金なら!!ほらっ、いくらでもあるわあっ、足りない!?ならその辺で体を売ってくるわよ!』


『いえ、その、頼まれごとをして欲しいのです。』



ボイスレコーダーを渡す。

『あなたのお父様、、いやキミのお父さんさ、ボク、僕?ボクが吊られた時のこと知ってるはずたからさあ、教えてよ、真実をさあっ!!!』


息があがる。

自分でもわかる怒気の纏い方。

自分?誰が?自分?

握り拳が強すぎたのか、握っていたボールペンが折れてしまっている。




ボイスレコーダーを受け取る。


『へへ、したらビールくれる?』


『ああたくさんあげるよ。約束さ。』



お客様の頭を撫でてあげる。

『ほら、行っておいで。』


『ふあーい。』



お客は出ていった。

これで僕?ボク?鹿島?鹿島の真相がわかるさ。


視界が揺れる。

最近めまいが酷い。

クラクラとするたびにボクはカニのぬいぐるみ、、、


ぬいぐるみじゃねえ!

鹿島だ!

鹿島を見る。


『ナルちゃん、あと少しだよ。』


『ああ鹿島。わかってるさ。』




少し休もう。

あとはあの女(美咲)が証拠を押さえてくれるさ。

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