2人のケイ
『やあ、久しぶり。』
『嬉しいよ、こうやって真島と飯来れるなんて。』
ボクの新薬の試験相手だ。
一度やったからといって、またやれると思ったのだろうか。
『しかし、こんなおしゃれなところどこで知ったん?』
『まあ、仕事柄、こんなところによく来るからね。』
ボクはもう教師ではない。
『それよりさ、ワイン飲もうぜ。このメニューのこれがいいなあ。年代物は美味いからなあ。』
『真島は舌が肥えているね。さすが、有名弁護士の御子息。』
『よせやい、めんどくさいだよな。親父の後継がないといけないし、いろいろ難儀してんのよ。』
『そうか。真島、勉強はよくできたもんなあ。』
『勉強は、って。なんか他はポンコツみてえじゃねえかw』
『ああ、ごめん。ごめん。勉強だけじゃなくて、かっこよくなったよね。ほら、スーツの上からわかる筋肉の張りとか。すごいボク好みだな。』
ボクという名称は、鹿島の前でしか出さないようにしていたがこいつは今日で死ぬのだ。
それ以上に胸板をなぞられて激っているのだろう。
『おっと、まだ早かったね。食事を今は楽しもうか。』
『ああ、だな。ここは、肉が美味いんだってな。』
『そうだね。だから赤ワインをよく取り揃えているんだ。ほら。』
給仕が運ばれてきたワインを注ぐ。
『ほら、肉に混ざり合うような血のように赤いワインだよ。』
『真っ赤なワインだな。ああ確かに肉にあいそうだ。とりあえず肉の盛り合わせを頂こうか。』
肉の盛り合わせはすぐ来た。
『いただきまーーーー』
『真島様。』
給仕に金わ握らせておいた。
『ん?なんだ?』
『真島様宛にお電話が入ってます。』
『なんだ?ここに来ることは、誰にも伝えてないんだが。。』
『行ってきたら?これを楽しむのはそのあとでもいいだろうよ。』
『んーーーまあ、そうだな。』
真島は席を立ち上がり、店のレジ横の電話に向かう。
しばらく時間が経つ。
真島が戻ってきた。
『ワリィなんか、いたずら電話だったっぽい。』
『そうかい。』
『じゃあ、飲むか。今宵のこの時間に乾杯!』
『ああ・・・・乾杯。』
妖艶な笑みを浮かべて真島を見た。ゾクゾクするだろう?早く組み敷きたいだろう?便器のように扱いたいだろう?
ワインに口をつける。
そのワインは私が仕込んだ。
真島はこれで終わりだ。
タクシーを呼ぶ。
真島を抱えて、ホテルへと向かった。
『あらあ、男の方が潰れてしまったのかねえ。』
ここのラブホの受付はお節介だ。
何度もこの日をシュミレーションしたので顔馴染みになった。この受付、ちょっと厄介だな。
『はい、いつもお疲れ様です。』
『あらあ、差し入れかい?』
受付は緑の缶ビールを受け取った。
ここのラブホは監視カメラがない。
こうやって口封じしてしまえばなんとかなるだろう。
真島を部屋まで運ぶ。
緑の缶ビールを飲ませた。
『誰かが、一緒に犠牲になるかもしれないけどそんなのは、、、鹿島を失ったこの痛みに比べれば、、、』
この次の日だ。
文字通りの血の海だった。
真島は錯乱状態になりながら、自分の腹を掻っ捌いていた。
私は居酒屋にお酒を卸にいっていた。
警察や救急隊が現場へ入っていく。
見届けた。
あの緑の缶ビールであれば、クラスを皆殺しにできる。
仕事終わり。
行きつけの渋谷のバーに立ち寄った。
『マスター。ウィスキー2つ。』
『ナルちゃんやっとだね。』
『ああ、鹿島。キミのことを助けてくれなかったあのクラスをめちゃくちゃにできるよ。』
2人分のウィスキー。
店内は静かだ。
ボク達の他には、マスターと客が1人。
『美味しいなあ。あ、マスター。チェイサー2人分。』
『は、はい。かしこまりました。』
今日は神経が昂って眠れなさそうだ。
深酒はせずに、さっさと飲んで帰ろう。
明日は葬式があるだろうから。
『お会計ね。ごちそうさま。』
店を出た。
『マスター、いいかしら?』
見たことのある顔だった。
たぶんあれは、ケイちゃんだ。
しかし、声が掛けづらかった。
鹿島が死んで以来、ケイちゃんは人が変わってしまったようだった。
卒業後は教師を辞めていたと聞いていたけど、
なんだろうか。あんなに人が変わるとわね。
『何でしょう。』
『さっきのお客様含めてこの店に何人いたか教えてくれるかしら?』
私は唾を飲み込む。
私が酔っていただけなのだろうか。
『ああ、美咲さん。私と美咲さんとあのお客様お一人にございます。』
2人分のグラスと誰かと話をしているような演技。いや、あれはなんだか、、、
『ふふ、面白いかもね。はじめてみたわ。臨床に使えるかも。また来るわ。マスター。』
私も早く家に帰ろう。
明日はドクターのバイトが朝早くからあるからね。




