Who is this?
あれは、ボクの誕生日だったかな。
たまたま土曜日で、鹿島と一度だけ旅行をしたんだ。
生徒にバレないように北海道の最東端の根室に泊まった。
ボクなは真っ白なワンピースに麦わら帽子という格好をしていた。
『見て!鹿島!キツネと鷲がケンカしてるよっ!』
『わあっ!道路には鹿がいるよっ!すごいねえ』
ボクがはしゃぐのを鹿島は車の中から見守ってるはずだ。
『なんだよ!ボクだってプライベートくらい弾けるよ!?ひどいなあ鹿島は。』
両人差し指をツンツンするナルちゃん。
車の方をみる。
『・・・・。』
鹿島の手をボクの肩においた。普段出さない声でリアクションする。
『う、うう鹿島ああっ・・・・。』
ナルちゃん、かわいいね。と声をかけて欲しかった。
ボクはみるみる顔が赤くなった。
鹿島にそんなことを言われたら死んでも悔いはない。
『ぼ、ボクがかわいいのは当たり前だよっ!』
ベーっと舌を出して目元を人差し指で下に伸ばす。
普段は見せないナルちゃんを見れて鹿島はどう思ったのか。
なんだかあの事実を忘れた。
『はあっ、楽しかった!明日はさ、春国岱行こうよ!!』
根室のスーパーで買ったご飯をホテルの部屋で食べながらそんな話をする。花咲ガニという鮮やかな色のカニを食べる。
『これ、綺麗だね!鹿島!』
カニをむしゃむしゃ食べながら、話すボク。
『春国岱には熊も出るのかあっ。そしたら鹿島、ボクを守ってね!』
さすがに熊はやばいけど、その時は守るよと答えて欲しかった。
『うふふっ、鹿島好きっ!』
北海道に来てから一目を憚ることなく抱きついたり、好きって言ってみたりしている。
ボクは鹿島がどんな状態でも好きだ。
食事を終え、ホテルの大浴場から出た。
『ゲームコーナー行こうよ!』
『・・・。』
『さすがに人前にこの荷物はまずいかあ。』
ゲームコーナーは対戦ゲームとコインゲームとUFOキャッチャーがあった。
『これ、カニを模したキャラクターかな!かわいいっ!』
UFOキャッチャーに唯一のぬいぐるみを見て嬉々とする。
ボクは200円を入れて取った。
『このカニ、鹿島みたいな顔だね!鹿島って名付けよっ!』
こうして花咲ガニ改め、鹿島と名付けられたぬいぐるみはこの日から鹿島として扱うことにした。
部屋にある、大きめのキャリーケースを開ける。
しっかりと処理はしてあるから臭いはしない。
飛び出ていた目も舌も綺麗におさめてある。
『鹿島あ、いつまで寝てるんだ??』
鹿島の肌は冷たく、すこし乾いていた。
まだ受け入れることができない。
こうしてはじめての鹿島との旅行がこんな形になるなんて。
この根室の地で共に海に飛び込むべきか。
鹿島の亡骸を抱きながら涙を流す。
そんな時であった。
『ナルちゃん、こっちこっち。』
頭の中に聞き慣れた声がこだまする。
『はは、幻聴かな?』
『ナルちゃん、幻聴じゃないよ。ボクはここにいるよ。』
部屋を見渡す。
隅に置かれた花咲ガニのぬいぐるみ。
『そうそう、ボクだよ!鹿島だよ!ナルちゃん、肉体は死んだけど魂がこっちに宿ったみたい!』
信じられない。
鹿島が、、、、
生きてる?
『ナルちゃん、ボクはこんな体になっちゃったけど、、ナルちゃんのそばにいるよ。愛してる!』
ぬいぐるみを抱き抱える。
『ああ、ナルちゃん、暖かいな。』
ボクは震えていた。
鹿島は生きている。器を変えながら、魂は生きていたのだ!!
『鹿島っ!!ああ、鹿島!ごめんよ、守ってあげられなくて、、、悪かったよ、、、』
『ナルちゃん、ナルちゃん!!』
その日はぬいぐるみを抱き抱えながら眠りについた。
翌朝。
『鹿島、おはよう。』
『やあ、ナルちゃんおはよう。』
『今日は、どこに行こうか。』
『うん、その前に話があるんだ。』
『話?』
鹿島を机に座らせる。
『うん、ボクはね、まだやらなくてはならないことがあるんだ。』
『何だい?』
『ボクはさ、あのクラスでいじめられ、肉体は死んだ。でも、まだ生きている。クラスの奴らはさ、ナルちゃんと違って守ってくれなかった。だからさ、同じ目に合わせたい。』
『つまり、、』
『復讐さ。奴らにも肉体としての死を味わってもらいたいからね。』
『ああ、そうだな!鹿島が望むなら!』
『良かった。ナルちゃんごめんね、これまで。レイプ魔なんて呼んでさ。本当はね、ナルちゃんに抱かれてボクは幸せだったんだ。素直になればこんな風にならなかったのかもしれない。』
『いいんだ、鹿島。』
『ボクはこれからナルちゃんと生きるよ。まずは復讐を果たす。でも、ナルちゃんが捕まっては大変だからさ。ちょっと試したいことがあるんだ。』
『ああ。なんでも言ってくれよ。』
『うん。その、、あいつでまず実験したいんだよね。でも、いますぐは無理だ。この計画には準備が必要だよ。アシがつかないようにしなきゃね。』
ボクは鹿島と相談した。
綿密な復讐を果たすために。
その日は観光もせず、トランクケースと鹿島を抱いて東京へと車を走らせることにした。




