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逃避行

『はあっ、はあっ!!』


月は出ているのか。

川面に映る月を見る余裕すらない。


全身の血が急激に活発に流れていく。


『ああっ!痛いっ!』



全力疾走に集中したあまり、

段差に気づかず転倒する。


『うわっ、ああ、、』


顔から突っ込んだからか、鼻血が出ている。

すぐに立ち上がりまた走る。



『はあっ、はあ!』


這う這う形で寮の部屋に駆け込む。

寮長さんの電話番号!



どこだ、どこだ!!


早く、早くっ!!


缶ビールの空き缶を机から落とす。

緑の缶ビールだ。



落ちたそれを見る。

余っていたからか、少し床が湿る。


『ああ!こんなものっ!!』


窓を開けて缶を投げ捨てる。



『電話番号、電話番号、電話番号!!!』



音が聞こえる。

あいつらが近づいてくる。


窓の外を見る。


『そ、そんなっ!!』


寮長さんも混じっている。


お隣さんも他の人も、妻も!

目を血走らせて寮に向かって来ている!




『くそくそくそっ!!!』


嫌だ。

私まで、あんな風になりたくない。

あの感じは。


ああ美咲と似ている。

ああ、あの缶ビールなのか。


だったらあの酒屋が?

あのボクって名乗る女店主。


いったい、どこで。


どこかで!



会っている!

私を、殺す?


誰だあの女は!



寮の施錠した玄関をダンダン叩く音が聞こえる。

破られるのも時間の問題だ。

くそっ!どうすれば・・・・。



『頼りたくないがっ!』


かつての同僚。

私を取り調べた刑事。


電話する。



『はいーーー、ああアンタか、なんだこんな時間に・・・・。』



『助けてくれ、、、うわああああっ!!』


なだれ込んできた。


逃げ場がない。


寮の廊下の端までいく。

窓がある。


下はコンクリート。

4メートルはあるだろう。

しかし。


ダンダンダンダン!!


血走らせた目でこちらに向かってくる。



『ああ!!もうこれしか!!』



窓を開けて飛び降りた。













ゴキっ! 











鈍い音がした。

私の視界は暗転した。

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