解放
私はやはり用務員を解雇された。
真島の坊ちゃんはとっくに亡くなられていたが、お父様から逆恨みのような形で手を回されて職を失ってしまった。
とにかくお金を得なくてはならないので、
日雇いの仕事を行う事にした。
ただ、気持ちは晴れ晴れしている。
真島の坊ちゃんが犯した罪を胸の内に隠しておく方が辛かった。
警察に拘束されることもないし、追われることもない。とりあえず仕事が終わればゆっくりできる。
『酒でも買って帰るか。』
仕事を終えたので、
ささやかながらの贅沢をする。
いつもの酒屋から買う。
笑顔の素敵な女店員さんがいる。
『うわ、高そうなワイン・・・・。』
高級店にも卸をしているというお店だが、
私くらいの薄給でも購入できる酒も売っている。
『ああこんにちは。お仕事終わりですか?』
『ああ、こんにちは。今日もよく働いたよ。店員さんも大変だよね。ほぼ毎日いないかい??』
『ボクですか?いやあ。ここの経営をしているので、特にお休みというのは設けてないんですよ。』
感じのいい店主だ。
『こんな若いのに経営されてるなんてすごいですね。』
『まあ、いろいろありましてね。』
『そうですか。私なんかより。いや、年寄りの昔話なんてしても仕方ないですね。はい、ワンカップちょうだいな。』
ワンカップとお金を渡す。
『ありがとうございましたー。』
桜の季節だ。
公園で夜桜を楽しみながら、刹那の贅沢を楽しむことにする。
『はあ、うまい。』
ワンカップに、コンビニで買ったメンチカツを頬張る。
ジューシーな肉汁とアルコールが口内でいい感じで混じり合う。
桜の季節はこうやって過ごすことが多い。
しかし、あの店主、どこかで見たことがあるような気がする。
いや、今はいい。
瞬く間に散りゆく桜を楽しみながらほろ酔いになりなる。
『明日も早いからなあ。』
日雇いの仕事は大変だ。
明日も朝から手配師に仕事をもらえるよう、早起きせねばならない。
ほろ酔いになったところで帰ることにする。
私の今の生活の場は、用務員時代に比べると侘しいものだが、心は豊かだ。
『もう何にも縛られないからな。』
そう、真島の坊ちゃんに監視され彼の悪事に目を逸らし続けた日々からは解放されたのだから。




