愛される為に。
『産まれましたよ!元気な男の子です!』
僕の母はシングルマザーだった。
父の顔は知らない。
母は働きづめでほとんど家にいなかった。
『お母さんお帰りなさい。』
『まだ起きてたのね。』
『お腹空いたよ。』
『まだ食べてなかったの?』
日付が変わって2時だ。
『だってお金が・・・・。』
『なんとかできるでしょ。冷凍食品でもなんでも。』
『うん、でも。』
『私はもう寝るから。』
母は赤ら顔だ。酒臭い。
『わかった。じゃあ冷凍食品を食べるね。』
『全く。そのくらいわかるでしょうよ。』
母は仕事を終えると毎日酒を飲みに行っていた。
まだ若い母は、外に金づる的な男を作り体と引き換えに毎晩良いものを食べていたようだ。
僕は毎晩、冷凍食品。しかも母に許可を取らないといけない。
一度、許可を取る前に食べたことがある。
ドスッ!ドスッ!
『お母さん!ごめんなさい!ごめんなさい!』
母は無表情で腹を何度も蹴ってきた。
だから、いつも家に帰るまで飯は食べれない。
『なあ。部屋汚いんだけど。』
しまった。掃除し忘れた。
今日も腹を何度も蹴られるのだろう。
母が気に入らないと暴力が振るわれる。
結局その日は夕飯にありつけなかった。
次の日、幼稚園から帰ったら掃除から始めた。
洗濯もした。たぶん今日も酒を飲んで帰ってくるだろう。だから、お米を炊いてお茶漬けを食べれるようにしておいた。
『ただいま。まだ起きてたの?』
赤ら顔で酒臭い母。
『お米炊いたよ。お茶漬け食べる?』
『あら、気が利くじゃないの。』
頭を撫でてくれて、優しく抱きしめてくれた。
相手に気に入られるように、振る舞うことをすれば愛されるし必要とされるのだ。
僕はそうやって愛され方を学んだ。
だから間違いなかった。
真島はそのパターンで親友になれた。
だけど、1番混乱したのはナルちゃんだった。
ナルちゃんはそのままの僕を愛してくれたような気がする。
とても混乱した。
何もしてないのに。
なんで好いてくれたのだろうか。
意味がわからない。
ナルちゃんが怖かった。
僕の愛され方のセオリーから外れていたからだ。
僕は気に入られることをしなきゃいけないのだ。そうでなきゃ、愛されてはいけない。
だから僕は。
決めた。
僕をありのまま愛してくれる人を困らせないと。
不自由に感じてもらわないと。
『あのね、ナルちゃん。』




