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ナルちゃんと2人きりの旅行

僕がまだ普通の人間の体だった頃。


いじめられていたけど、友達にも事情があるんだろうなあと思っていたし、ナルちゃんがいたから別にへっちゃらだった。


ナルちゃんは毎晩僕の部屋に来て抱きしめてくれた。当然僕だって男だ。


密室に女の人と2人なら、欲情もする。

僕とナルちゃんがそういう中になるのは時間がかからなかった。


あれは、ナルちゃんの誕生日だったかな。

たまたま土曜日で、ナルちゃんと一度だけ旅行をしたんだ。


クラスメイトにバレないように北海道の最東端の根室に泊まった。


ナルちゃんは真っ白なワンピースに麦わら帽子という夏の北海道が似合う格好をしていた。


『見て!鹿島!キツネと鷲がケンカしてるよっ!』


『わあっ!道路には鹿がいるよっ!すごいねえっ!!』



あまりのはしゃぎっぷりに思わず笑ってしまった。



『なんだよ!ボクだってプライベートくらい弾けるよ!?ひどいなあ鹿島は。』


両人差し指をツンツンするナルちゃん。



ナルちゃんの肩に手を置く。


『ヒヤッ!』


突然手を置かれたのか、普段出さない声でリアクションするナルちゃん。


『な、なによお・・・・。』


ナルちゃん、かわいいね。と声をかけた。

ナルちゃんはみるみる顔が赤くなった。


『ぼ、ボクがかわいいのは当たり前だよっ!』


ベーっと舌を出して目元を人差し指で下に伸ばす。



普段は見れないナルちゃんを見れて僕はなんだかいじめられている事実を忘れた。




『はあっ、楽しかった!明日はさ、春国岱行こうよ!!』


根室のホテルのご飯を食べながらそんな話をする。花咲ガニという鮮やかな色のカニを食べる。


『これ、綺麗だね!鹿島!』


カニをむしゃむしゃ食べながら、話すナルちゃん。


『春国岱には熊も出るのかあっ。そしたら鹿島、ボクを守ってね!』


さすがに熊はやばいけど、その時は守るよと答えた。


『うふふっ、鹿島好きっ!』


ナルちゃんは北海道に来てから一目を憚ることなく抱きついたり、好きって言ってみたりしている。


僕はそんなナルちゃんが好きだ。




食事を終え、ホテルの大浴場から出た。

『ゲームコーナー行こうよ!』


ゲームコーナーは対戦ゲームとコインゲームとUFOキャッチャーがあった。


『これ、カニを模したキャラクターかな!かわいいっ!』

UFOキャッチャーに唯一のぬいぐるみを見て嬉々としているナルちゃん。


僕は200円を入れて取ってプレゼントしてあげた。


ナルちゃんはとても喜んでいた。




『このカニ、鹿島みたいな顔だね!鹿島って名付けよっ!』



こうして花咲ガニ改め、鹿島と名付けられたぬいぐるみは僕がナルちゃんにプレゼントした唯一の贈り物になった。

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