子ども時代 1
目の前が真っ暗だ・・・・。死後の世界ってこんなに暗いのか・・・。
見える限りすべてが、墨をぶちまけたみたいに真っ黒。
なんだか、身体も重い気がする・・・・。まるで、水の中みたいだ・・・・。
死後の世界って水の中なのか?空の上なんじゃないのか?
息苦しい気もしてきた。え、ほんとになんで?死後の世界はこんなにきついの?死んだあとなのに、また死にそうになんないといけないの?
と、とりあえず空気を!空気をください!俺、死んじゃいます!(もう死んでるけど)
空気を得るためにがむしゃらに暴れてみる。でも、なにかに身体をおさえられていて水中から出ることが出来ない。
やばい、視界がチカチカしてきた。これ、本当にやばいぞ・・・っ!!
残る力を振り絞って、おさえているなにかをどかすために暴れる。
だが、少し緩んだだけでどくことはない。
あ、もう無理かも・・・・。肺が、肺が苦しい・・・・っ!
そのとき、ふいに騒がしい音がした。なにかを喋っているように聞こえる、気がする。
誰でも何でもいい、助けてくれ・・・!!
その思いが届いたのか、急に押さえつけていた力がなくなった。同時に、ものすごい力で上に引っ張られた。
そのままの勢いで、地面に転がされる。
「え゛ほ、え゛ほっ・・・・!!っはあ、はあっ、はあっ!!」
必死に空気をむさぼる。いきなり肺に大量の空気が入ったからか、胸が苦しい。
「ーーーっ!ーーーー!!」
「ーーーー。ーー。」
「ーー!ーー・・・っ!」
誰かが言い争っている声がする。俺はそちらに耳をすます。
「酔った勢いとはいえ、なんてことをするんだ・・・。」
「私が悪いのですか!?私は、これを、消そうと・・・!」
どうやら、女の人と男の人が言い争っているようだ。話の内容から、俺を沈めていたのは女の人らしい。
重い身体をなんとか動かし、2人の方を向く。
女の人は、黒っぽい髪を腰まで伸ばした、きれいな人だった。今はキレていて般若みたいだけど。
男の人は緑がかった銀髪のイケメンだった。こちらは表情がないが、そのぶん女の人より怖い。たぶんこの男の人が助けてくれたんだろう。
2人を観察していると、ありえないことが飛び出してきた。
「お前、成人前の子供を殺すのは法で禁止されているのを忘れたのか?」
「い、いえ・・・。でも、これは無能ですよ!!」
「いくら無能でも、成人前の子供には変わらない。子供を殺せば、最悪の場合爵位はく奪になるんだぞ。わかってるのか?」
「う、うまくやれば、ばれずに殺せますよ!?」
「何を言っている?貴族の子供が死んだ場合、神殿から神官が派遣されるんだぞ?うまくやったとしても、過去を見れる奴らには無意味だ。」
こいつらは、何を言っている?「子供を殺すと自分たちの外面が悪くなるからやめろ」って言っているのか?頭おかしいんじゃないか?
しかも、こいつらの言う「子供」とか「これ」は俺なわけで。状況も自分自身のことも全くわかってないけど、こいつらがヤバいってことだけは確実にわかった。
「わかったな?妻のお前であっても、私の邪魔をするなら容赦はしない。」
「そんなつもりじゃっ!」
「そうじゃないなら、これを殺そうだなんて考えるな。死んだら今以上に面倒だ。ただでさえ我が侯爵家の恥だというのに・・・。」
「はい・・・。」
「殺したいことを我慢できないなら、せめて殴るだけにしておけよ。」
いや、おいお前。殴るのを許可してどうする!?なんで妥協案みたいな感じで暴力ありにしてんの!?ほんとクズだろこいつ!!
「わかりました・・・。」
おまえも了解すんなよ!!
「では、私はもう寝る。お前も早く戻れ。」
「あ、あの。これはどうしますか?」
そういって、クズ女が俺を指さしてきた。ちっ、人を指さすんじゃねーよクズが。
「先ほどここに向かう前に使用人を呼んできた。回収して部屋にでも入れておくだろう。」
「なるほど、わかりました。」
「だろう」ってなんだよ!そこは確実にしておけよ!
しかし、2人はそれ以上何も喋らないまま、どこかに歩き去ってしまった。
うう、寒い・・・。暗いから、きっと今は夜なんだろう。静かで真っ暗で、「ゆ」のつく方々がでてきそうだ。
今更だけど、ここってどこなんだ?体感もあるし、見えるし耳も聞こえる。少なくとも、死後の世界ではなさそうだ。
ってことは・・・・・
最近はやりの、『異世界転生』ってやつでは!!?
クズどもは日本人って髪色じゃなかったし、その説はかなり有効だな。地球に未練は特にないから、別にいいんだけど・・・・。
もう少しいい転生先なかったもんですかね神様よぉ・・・・。
ものすごいハードモードな気がするんですが、気のせいでしょうか?気のせいではないですよねくそが!!
そのとき、ふと人の気配を感じた。
十中八九、さっき言っていた使用人だろう。
そこまで考えたとき、俺はやっと休めると安心したのか、ガクンと意識を手放した。
なんか、ここまでの話全部「気絶」で終わってる気がする・・・・・。
何故だろうか・・・・・・。
この謎を、君は解けるかな?




