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その者、”異端”につき。  作者: 月乃あかり
36/38

先輩との出会い




学校での様々を終え、寮に到着する。

しっかりとした門、重々しい扉…をくぐる前に立ち止まる。

そして上を向いて軽く絶句。



…なんだ、この豪邸みたいなの。



見た目に反してそんなに重みはなかった扉、中に入りエントランスへ入ると左手に管理人室なのだろう事務所のような部屋の前を通り、突き当りの壁に館内の案内を見つけ自分の部屋番を確認する。


教室で渡された書類が入った大きな封筒から部屋番の書かれたプリントを見ると614と書かれている。

案内板で部屋番を見つけるとどうやら一番端の部屋のようだ。しかし6階、辛い。

寮生活をする上で必要な物資の大きなものはあらかじめ自室に届けられているとしても、初日で渡される諸々の荷物を持っての6階への移動は大分きっつい。辛い。段々重くなる足をたたきながらようやく自分の部屋に到着。辛い。


誰が居るのかと少しドキドキしながら、扉に手をかける。

…フランじゃないと良いな、うん。



胸の高鳴りを抑え、扉を開ける。




扉の先、そこには














誰もいなかった。





話を戻そう。



今日はもう授業もなく、各自部屋の片付け&コミュニケーションを。

とかってことで、寮に来たんだが…。



…誰もいないじゃんか。

コミュニケーションもなにもないじゃん?



先が不安だ……



荷物なんてあっという間に終わるだろうし、何処か行きたいな…

溜息をつきながら寮についてのプリントを見たが、どうやら自由に外出出来る時間は限られているらしい。

授業がある日は終業から夕食の時間までの1~2時間程度。

夕食後からは各部屋で勉強の時間。

就寝時間までは書いてないけど、遅すぎると強制的に消灯される、ようなことが書かれている。



「ちぇ、つまんないなぁ…」



ポリポリと頬を掻いて、何かないかと物色。

しかしどれだけ荷物を見てもキールに貰った本ばかり。つまらん。


ため息を付きながら窓へ向かい外を見ると



「…………おや?」



そこから見えたのは、寮のまわりを囲んでいる塀。

に群がる人達。

身を少しのりだして、目を凝らしてみると見えたのはその壁をなんとかして登ろうとする人達。


俺たち一年と少し制服が違う…?先輩だろうか。

学年を表すものが見えない…というか何をやってるんだろう…


観察していると一人の先輩が何か鋭いものがついたロープを回し投げ、上手く塀の上に引っ掛ける。

それには俺も「おぉ…」と声を漏らす。


ひっかけるまでの回数はあれども、その準備やそれを隠したり周りのフォローする様子が手馴れている。

あの人達、常習犯か?


ロープに手をかけ昇ろうとする先輩を見てると、視界の中に入った小さな光。

いや、電光?


すぐに手で丸を作り、遠見の魔法をかけてしっかりと見てみる。


「…………あ…っ!」



つい、俺は声をあげた。



「そこ、上に雷だかの魔法掛かってますよー!!」



そう、塀の上に。


此処からはあまり見えないけど、確かにかかっている。

ロープの先がそこに触れなかったのは良かった。



俺の声が聞こえたらしくロープ下に居た先輩たちが固まる。

そして騒ぎ出す。


「マジで!?」

「くっそアレクの野郎、次の対策に出たか…」

「ぅわどうしよう!デートの待ち合わせ!」


色々理由があったんだな。

まあ、食堂の解放時間までに間に合って帰宅できればいいんだろうけど…ここからの移動時間も考えたりすると長い時間とは言えないもんな…



「………ん?」



ふと、感じた鋭い視線。

視線を感じる先…まあ先輩たちしかいないんだけど、ロープを引っ掛けた先輩がこっちを見ているのはわかる。

でも、それとは別の視線だ。

結構距離あるけど、これはわかる。



おれ、にらまれてますよね?



「あっ」



「お前らまたかー!!?何度やったら気が済むんだー!」

「「「 げっ 」」」



その主は端の部屋である俺の部屋とは逆の方から走ってきた。

俺の声のせいだ、誰か…見た目的に先生みたいな人が来た。

先輩たちは他にもあったらしい道具をジャラジャラと集めて逃げ出した。



あぁ、それで睨まれたのか…

うーーーーーん俺のせい、だよなぁ



さっきからちくちくと、ロープの先輩の他にも視線が刺さる。



「……しょうがない」



ちょっと、やるか。

ばれないように、と俺は制服の上着を脱いで荷物の中から違う上着を羽織る。


よし、と一声。そして



「よいしょ、っと!」



窓から、飛び降りた。




俺を睨んでいた先輩達は大口を開けていたり驚いた顔。中には声を上げている人もいる。


先輩に俺は今度はあまり大きくない声量で



に げ て



と。

そして俺は



「"兎跳(ラビットウィング)"!!」



後ろの壁を蹴って、そのまま足に集中させ、更に先生から見えないように空間屈折の魔法をかけその場にとどまる。

急ぐならそれこそ魔法を使えばいいのにそのまま走ってくる先生、おかげで結構余裕はあるがいつ先生も魔法で飛んでくるかわからないので早めにしないと



「どうしたもんかなぁ…ぁ、そっか」



単純に追い掛けられないようにすればいいのか。

あっちの対応を考えて…いや念のため4枚分。


人差し指をピッと立て、大体の場所を確定。そしてその場所に向けて指をさすように四回指を振る。

塀から建物までの距離も指で示すように横に振り、



「"シールド"」



狙いを付けた場所…先生と逃げていく先輩達の間に、透明な壁が出来る。


その壁に先生は勢い良く激突した後、派手に後ろへ転がる。

それを見た俺は一人でガッツポーズ。



「よっし!場所も距離もバッチリ!」



先生の姿を後ろ目に先輩達は俺の部屋の下…角を曲がるのを確認すると、無事全員逃げれたみたい。

まあ良かった…。


と、胸を撫で下ろしたが、少し気になった俺は逃げた方向に向かって飛んでいくことに。

後方からなんとか壁を一枚破壊した音が聞こえた。でも残念それがあと三回あるんだよね。

ちょっと鼻で笑ってしまった。失礼失礼。



「飛ぶの久々~」



ちょっと行くと、寮の正面側にある木や茂みがあるんだけどそこに散り散りになって隠れている先輩たちを発見。

上から見るとなんて不思議な光景だろう。

体格のいい先輩たちが多いからか、半分くらい色んなところが色んなところからはみ出ている。


周りを見ても人はいない。俺はゆっくり地面に降りていく。




「すみませんでした!大丈夫でしたか?」


「その声さっきの…!まぁ良いよ逃げれたし」

「俺は全然よくねーよ!お前のおかげでデート遅刻だぞ!」



捕まったことを考えると許してくれる人が多数いる中、待ち合わせしていた類の先輩たちからは非難をもらう。まあ仕方ないよね。申し訳ない。



「どうしてくれんだよ!折角デート出来るようにまでこぎ着けたのに!」



…………えぇ……?



その中、やけに一人俺に迫って来るガタイの良い先輩。

ガタイが良いのに加えてやけに濃い顔で、更に嫌だ。ちょっと顔近づけないでほしい…。



「い、いや、あの…本当すみませんでした…」

「制服を着てないようだけど、身長的にもお前一年だな!!?」

「も、もうしわけな…」



「そろそろ止めとけよ、タニー」



迫りに迫られて壁側まで追い込まれた俺に、救いの声が掛かった。

どうやら迫ってくるこの先輩はタニーと言うらしく、意外にもその一言で大人しく離れて行く。



「おい、一年」



話し出した途端に、口々に何か言っていた先輩たちが静まる。

皆の視線が俺から先輩に集まった。


声の主は、俺が声をかけた後からずっと睨んでいた人。


ざわついていた集まりから少し離れたところにいた先輩は俺にゆっくり近づいてきた。

俺の前までくると、タニー先輩を退かして俺を見下ろす。



「あのまま登ってても、結局駄目だったんだろ?」

「は…ハイ…。塀の上一帯に…あの、電気系の魔法が…」

「……はぁ…だとよ。じゃあ俺らにはもう無理だな…」



タニー先輩ほどでなくても怒られるのかと思ったが、諦めの溜息をついて他の先輩たちの方へ振り返ると諭すように話す。

俺の目の前に来たから良く見えるんだけど、



………この人………

……めっちゃカッコイイ……



どこの地方から来たのか、真っ黒い綺麗な髪。

男にしては少し長めで、黒髪の前髪から覗く茶色がかった瞳。


男なのに、思わず見惚れた。


「…ちッ、どうするか…」


舌打ちの後、溜め息交じりに髪を掻き上げる。

やだカッコイイ………!

是非アニキって呼びたい……!


ってキモイな。と自分で自分に突っ込み。

そこでふと我に返り



「あの、つかぬ事をお聞きしますが、学年は…」


「ん、俺は4年。あっちは5年だけど」

「そうなんですね、…ぇと、魔法…」

「まだ解明と基本は全部教わってる。けど流石にここを逃げられるような内容は教えねーんだわ。独学でできるやつもいるけどな…。卒業年だと教えるみたいなんだけど」

「へぇ…」



5年生、と指差された人達は魔法はあまり上手くないらしい。


魔法学校だし、結構な種類を教えるもんだと思っていたけど…そんなに教えないみたい。

あの理事長先生の割に、意外だなぁ…まあ逃走されても困るか。


後ろの先輩達は諦めず他の方法を探してるみたいだが、なかなか浮かばずのようで



「寮の入口からこっそりは無理なんですか?」

「普通に行けるわけないだろ。そもそも外出するときに渡される魔法具でこっちの場所わかるし、時間の経過ででっけえアラーム鳴るししまいには強制転送されるのが嫌だから、こういうとこから出てこうとしてんのよ」

「アーデスヨネ」


「門自体食堂と同時に閉まるし、それに門には特定条件の魔法掛かってるみたいでさ、時間外で学校と反対方向へ向かうとすると色んな方法で体動かせなくされたり」



俺の時のあれは痛かった…と、まるで体験したかのような喋り方。

いや、経験者か。



「あの…じゃあ俺も、お手伝いしましょうか?」


「………あ゛?」



…こっわ!!!!

ちょ、ちょっと一斉にこっち向かないでほしい。めちゃくちゃビビる。


カッコイイ黒髪の…イケメン先輩が俺を見る。




「…どうやって?」

「えっと…んー…あっちとこっちを繋ぐ扉をつくれば良いんですよね?」

「出来るわけねーじゃん!」

「この壁すっげー固いし、魔法でも何しても全っ然、傷も付かないんだぞ?」

「こないだ部屋から椅子持ってきて打ち付けたけど本当に傷つかなかった!」



見るからに力押しな先輩が二人突っ込んでくる。

のを、イケメン先輩がぐいっと離し、「続けて」と



「あの、魔法陣を作って、こっちとあっちのどこかに転送できるようにすればいいんですよね。それの発動もスペル発動にして…」



ふと周りを見渡すと

先輩達の目が、何言ってんだコイツと言わんばかりでかなり怖かった。

奥の方でも、出来る訳無い…と肩を落とし次の方法を考えてる人も居る。


イケメン先輩は一息吐いて



「俺らに、そんな高度なの出来ると思うか?」

「ぇ、でも転送魔法自体は中級…」



言いかけて、さっき言われた逃走に使えるような魔法は習わないと言う言葉を思い出す。



「あぁ、教科書にある魔法なんてたかが知れてるし。魔法書も図書室じゃなく先生の管理する部屋に厳重に保管されてる、なにより解明も何も俺ら…先輩は魔法苦手だからさ」



ちら、と先輩達を見てイケメン先輩は言う。

先輩達を見渡すと皆諦めモードに入っていた。

俺のせいでなくても、これは…



「あーぁ、本当どうすっかなぁ…」

「あ、あの………」

「まずあっちにどうやって行くんだよ…」

「あのー…」

「明日の自由時間まで待つとか勘弁してほしい…」


「先輩っ…!」



俺の声に気づいた先輩が次々こっちを向く。

イケメン先輩もこっちを向いて聞いてくる。



「何?」

「お、俺…やりましょうか?」





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