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その者、”異端”につき。  作者: 月乃あかり
34/38

その者、入学


入学式、当日。



どんっ!



と、漫画などで表現されそうな程の、ドでかい建物。


「ここが、寮か…」


入学式の前に一回寮が見たくて訪れた。

そしてコレだ。校舎だと思ったら、寮だと。

まぁ、実家に比べたらそこまででもないんだろうけど、…旅の如く安宿泊まりだった俺にしてはそう思ってもしょうがない。


流石王都。


「…やっていけるのかなぁ…」


苦笑しながらついこぼれる言葉。

はぁ、とため息を一つついて俺は入学式会場であるアリーナへ向かった。


アリーナに近付くにつれ、段々人が増えていく。流石にもう6年も経ったし、誰とも交流なんてなかったからか…誰一人俺に気付かない。

名前を呼ばれたら、皆どんな顔をするのだろうか…半分嫌だけど、半分くらいは反応が楽しみでもある。

恐らくあの実家の事だ、まず捜索はあっただろう、というかあったんだよね。ギルドの時に色々知ったさ。でも最初の頃は特に今ほど色々できるわけでもなかったし、内緒にしてもらってた。

でも最年少だとか、二つ名の事とかあって、情報を出す他なくなってしまったのだ。ギルドとか、国家関連は情報を偽ることはできないらしくてね。


多分各地方の貴族連中に通達も行っていたはず。魔石もちなのも含めて。

きっとまず隣の子に凄く驚いた顔と嫌な顔されるんだろうなぁ…


しかしそんな反応にはすっかり慣れてしまっている。

まぁ、二つ名の段階でもう似たような反応されるからね…流石に慣れざるを得なかったよ。



「あ、キール!お待たせ!」

「おーやっと来たな」



人混みの中にキールを見つけて駆け寄っていく。

俺は寮に向かうよ、って時に知り合いを見つけたらしく別れたから、アリーナに入る前には合流しなきゃと思ってたところだし、丁度良かった。

そして、それはまだ進行形ならしく、キールの傍には青年が。



「ぁ、どうも初めまし…―」



ペコリとお辞儀をして、顔を上げた。


時だ。




「…………マーク…先、生…?」




キールの隣で笑っていた青年。は、マーク先生だった。

あまりのことに固まる俺。小さくその名が口からこぼれる。

マーク先生はまだ俺に気付いてないみたいで笑顔で続ける。


「初めまして、私はマークと言います」

「ホラ、聞いたことあるだろ?双剣の風使い」

「え!…あの?」


"双剣の風使い"


双剣と風を合わせた攻撃を使用し、風の守護聖霊により素早さにも長けている。

双剣を扱う者なら誰もが憧れる存在。


それが…マーク先生?


流石に6年は長いものだ。きっと自分の小さい頃の面影は大分薄くなっているのだろう。

衣類も貴族の物ではない。髪型も、昔のように常に整っているわけではない。立ち振る舞い方だって、所作だって。

昔とは、違う。長い付き合いかと思っていた、彼が気づかないほどに。


6年振りにみる彼もすっかり大人になっていた。

相変わらずの優しい笑顔に落ち着く声音。流石に声は大分低くなっているが。でも一目見ればわかる。


外見を除けばあの時のまま…。じんわりと目の奥が熱くなる。



「此処にさ、俺の教え子が入学するから、保護者代わりに来たんだ」



よろしくな、と微笑むマークに俺は苦笑で答える。教え子とはフランの事だろう。

瞬間的に頭に浮かんだ人物。


やっぱり、来たんだ…。

キールは俺の反応を見てか、後に俺へ会話を振ることもなく、間もなくしてマークと別れた。

アリーナに向かう俺とキール。

一歩、一歩と近付く度にどくん、どくんと胸も高鳴る。


フランに会う…会いたくない…


…違う、これから学校に通うんだ、大丈夫…大丈夫…

自分にそう言い聞かせて、一息。


そこにキールが口を開く。


「…さっきの、マークと知り合いか?」

「え…ぁー…まぁ」

「……。言いたくないなら、良いけどさ」

「…うん…」


つい俯く。すると下を向いた俺の頭に手を置かれる。

大体察したのだろう。一言「ごめんな?」とつぶやく。


何に対して謝っているのだろうか、俺は、そう、大丈夫なんだから。






そして、入学式が始まった。


最初は保護者席の方に居て、呼ばれたら壇上前の席。


教頭の長たらしい話。

来賓の中の代表の長たらしい話。

まぁ、うん長たらしい話。


…眠い。

さっきまでの気持ちはどこへやら。嘘のようにダルいし眠い。


その所為で俺はキールの隣でうとうととしている。まぁキールも少しうとうとしてるし。

そこに、


『 新入生名簿 』


聞こえた途端、ついビクッと身体が跳ねる。もちろん隣にいるキールも俺につられてびっくりしていた。

覚醒し周りを見渡すと、会場の空気がピンと張り詰めていた。親子共々、緊張の瞬間なのだろう。


1人、1人と順に名前を呼ばれていく。

1人呼ばれる毎に少しのざわつき、呼ばれた生徒は初々しく前へ出ていき、席に座る。

少しずつ、席が埋まっていく。


名前的に、そろそろ……



『フラン=レンジェーナ』


きた。


「――はい」


毎回少しのざわつきだったのが、今度は大きい。

それほど、その家名が各地方・貴族の間で知れ渡っていること。それは様々な理由であれど、凄い事。

このざわつきからそれを教えられる。


久しぶり…いや、何年か振りに聞いたフランの声。

それは記憶に残る幼い声ではなく、まだ声変わりはなくとも少し低くなった感じの落ち着いた声。


―ドクン…


懐かしい、あの時に似た胸の締め付け。

そして、フランの名前が呼ばれたということは…だ。



『セラン=レンジェーナ』



一際大きくざわついたアリーナ内。

保護者だけではなく、その中生徒達の声も入り混じっている。


―マーク先生、気付いたかな…


先生の事を少し気にして。

俺は想像以上な反応につい身体を強ばらせる。


俺が軽く固まっていると、マイクを通した声は続く。



『セラン=レンジェーナ、居ませんか?』


「…………セラン」

「……………」


キールが俺の名を呼ぶ。


横に下がったままの俺の手を、きゅ、と握って。再び名を呼ぶ。


それに少し心が落ち着いて、大きく深呼吸。

そして



「……―はい」



俺の周りの人たちが、一斉に俺を見る。

正直居心地は悪い。寧ろ最悪。キールに後押しされ、俺は足を進める。


保護者、そして生徒達の掻き分けて群れを歩く。

どういう経路で俺の事を知っているのだろう、掻き分けて行く中、自ら退ける人も居る。

その度にちくりと胸が痛んで、足が止まりそうになるけれど、


…止まってなんかいられない


せっかく、キールが押してくれたんだ。

 

…行くんだ、フランの、隣に


群れから出ても、視線が刺さるのを感じる。


そして



「…生きてたんだ」


フランの、隣に立つ。 


「……まぁ、な」


ドクン、ドクン、と胸が波打つ。


俺、凄い緊張してる。

実の弟相手に、情けないとも思うけど。でも、震えるものは仕方ない。


こんな緊張、初めてかも知れない。


しかし、俺の緊張なんて知ったことか。の如く、フランは俺から視線を離して


「ふぅん…」


それだけ言うと、ふいっと前を向く。

隣に腰を落としても、反応も無し。


…あぁ、そうか…


何か、わかった気がして、ふっと肩が楽になる。

ただ一つ、胸には大きな鉛。


もぅ…興味すら、ないのか。

そう感じると、あんなに悩んでいた自分が、とても馬鹿のように感じて。


涙は無い。でも、悲しい、と。

その気持ちだけは、やけにハッキリと感じて。

ふと気付けば、大分時間が過ぎていた。


視線を上げると、再び教頭が保護者たちへの言葉を述べている。

隣をちらっと見る、フランは俺のことなど全然気にしておらず、まっすぐ教頭を見つめてしっかりと話を聞いているようだった。

視線だけキョロキョロと巡らせて、何かないかと探すが特に何もなく。


つまんないな…寝るか…


そう思うと寝やすいように、下を向く。

すると、自分の視界に感じる違和感。


「…………ん?」


足元に何かうっすらと見える、まるで魔方陣のような模様が、各椅子を一つ一つ囲んでいる。

俺は小首を傾げてそれを見た。

体勢を変えずに目線だけを動かし、じっと見てみるが、本当にうっすらでよく見えない。

でも魔方陣なのは確かだと。しかしよく見えないせいで何の系統化もわからず。


そんなことをしていると教頭の話が終わったようで、司会の教員が数回咳払いをした。


「えー…次は理事長のお話しです…」


えぇまだあるのかよ…

俺の周りもフラン除きいい加減飽きたのか欠伸をしているのもちらほら視界の端に見える。


そんな中舞台上に現れた一人の青年。今理事長と言った筈。それなのに現れたのは若い男。

これまた予想外な人物で、皆様驚きの様子。

そりゃそうだ、スラリと伸びた身体。窓から差し込む光に反射している金髪。


「若すぎだろ…」


誰もがそう思ったであろう。

だって俺なんて口に出して言っちゃった。


さっきまでの眠たい雰囲気はどこへやら。しかし俺はまだ眠いのだ。


若い。

若いけど、うん。

知るか。


こうなりゃ意地でも寝てやる…。と半ば無理矢理、頭をシャットダウンしようとしている俺。

少しのノイズの後、アリーナに響く声。


起動(ビギニート)


途端、足元に走る衝撃。

それは俺達生徒のみに起こっているようで、生徒達の若い声だけがアリーナ内を占領する。

それに反応して、母親をはじめ騒ぎ出す大人達。


―…これは…


下の魔方陣が、光り出す。

流石のフランも慌てて、椅子の上に小さくなって座っている。


「――っり、拒絶(リフレクション)!」

「「ぅわあぁぁあぁっ!!!」」


俺と周りの生徒がほぼ同時に、叫ぶ。

途端魔方陣の模様がさっきより一層、浮かび上がるように光り出した。

各椅子の周り、魔方陣の発動。


凄い揺れかと思ったがそりゃあ一斉に何百人の場所に魔力注げばこの揺れは起こるわ。 

そして生徒一人一人を包むように現れた、バリア。


俺は咄嗟にバリアの効果を消してしまったが、当然にも近く周りは驚くのが先。できるわけもなく。

自由の身ではあるが、ある意味不自由なことになってしまった。


流石にフランでも対応しきれなかったようで、バリアに包まれている。

バリアにより包まれ生徒達の喚きように心配して叫ぶ保護者席の人々。


そこにキィ…ンとマイクのノイズが騒ぎの中小さく聞こえる。理事長はマイクを手に取り、静かに口の端を上げた。



「今のご時世だ。町の外に出ないかぎり無事だとか、子供だから、学校だからと気を抜かないことだ。

これから学ぶことだが、君達は自分を守る術、他人を守る術を手に入れるが、その逆もありうるのだ。魔物が活性化しつつある時代だ、どこであろうと気を抜かないように」


そこまで言い終わると、指をパチンと鳴らす。

と、俺の周りにできていた壁が消えていく。


「在学中に学ぶことは魔法だけじゃない。そういうこともしっかり学んで、ここを無事卒業してほしい」


理事長はマイクを戻し、一礼、そして壇上を降りてくる。


………なんかわかんないけど、凄い気迫というか、オーラを感じた。


『では、入学式を終わります』


そして、一応入学式は無事終わった。

今日から俺はここの生徒になる。


セラン=レンジェーナとして。





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