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その者、”異端”につき。  作者: 月乃あかり
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小さな不穏

休憩をしばらく取った後、俺たちは下層を目指して足を進めた。

しかし森林ゾーンは地面の土が先ほどまでの洞窟の足場より柔らかかったりするのも含め、足場がなかなか悪い。

足場が悪いとどうも体の疲れの蓄積も早いのと、先に行った他の冒険者のおかげかあまり魔物と遭遇しないのもあり、細々と休憩をはさみながらも俺たちは順調に下層へ降りて行った。


…というか、前回俺が行ったダンジョンが魔物が沸いて出るようなタイプだったのか、このダンジョンの魔物が少ないのか、とても順調だ、順調すぎて怖いくらい。

索敵魔法にかかっていた敵もいたのだが、こちらが他のものに気を取られていたり、他の魔物と遭遇しているうちにいなくなっていることが多いのだ。

恐らく森林ゾーンに俺たちのほかに冒険者のグループが居る、と考えるのが妥当なのだろうが、俺の索敵魔法に人間の気配がかからない、からの俺の不安だ。


確か森林は20階層までだっただろうか。というか今何階層だろう…索敵魔法と周りに気を使い過ぎて忘れてしまった。


「きっと次の階層への通路だ!」


そう言い放つヴァイトさんの声がしたかと思うと、指さす先には横穴が見えた。しかし今までの通路と比べるととても小さい。

索敵魔法はかけているが、穴が空いているような感覚はなかった。俺は一度ヴァイトさんに駆け寄り、何かの罠かもしれないと告げる。

実はガイドブックには森林ゾーンを抜けた次は岩窟のゾーン、敵の種類が数種類の記載はあるのだが、到達者が少ないのか今までの階層までの情報量と比べると格段と少ない。

岩窟ゾーンが何階層までと書いていないあたり、誰もそこから先には行けていないということ。

ここから先に出現する何かの魔物に、阻まれているのだ。


視界に確認してからは横穴部分の先は人一人分ほどの大きさ。穴の先の状態は…ぼやけているように感じてよくわからない。


「ヴァイトさん、この先索敵魔法の感じが少し妙です。なのでこの先に行くのはおすすめしません…」

「何言ってんだお前、こんな風にある横穴には大体お宝的な奴があるんだろうよ!」


俺の言葉を遮る様に声を上げるのはウィル。

まあ、そう考えるのも一理ある。迷宮にはつきものの宝があるところには何かしら工夫がしてあるところが多い。

しかしそれにしても…あの穴の先には胸がざわつくものがある。

ただでさえ情報が少なくなってきているのだ、慎重に行きたいのが本音。というか宝とかレアアイテム云々より自分の命のほうが大事だもの。


ヴァイトさんの言葉も振り切り横穴へ近づくウィル。慎重にいきたいカイルさんは兄弟を心配して戻る様に駆け寄っていく。


「どうしたの兄さん、さっきもこの先は慎重にって話してたばかりじゃないか。危険だったら」

「お前もあんなティナよりも小さいガキのいうこと聞くのかよ!」

「何言ってるの兄さん!いいから一度戻って…」


恐らくその場にいる、離れているはずの俺たちも背中のあたりがゾワッとするのを感じたと思う。


殺気とか、そういうものとも違う、なんだこれ。


ヴァイトさんも二人の足を止めようと駆け寄ろうとした、その時だ。

穴の先、俺たちから見るとほぼ暗闇になっているそこから無数の手のようなものが伸びてきたのだ。


それはほぼ目の前にいたウィルとカイルさんを容易く巻き取り、穴の中へ引きずり込んでいく。

ヴァイトさんは二人の名前を呼び穴のほうへ走っていくが、二人の姿はもう見えなくなってしまったようだ。


「お兄ちゃん危ないよ!!…えっ…二人は…どう、なっちゃったの…」

「わからない…でも二人を助けるには、あの穴のほうに行かなきゃ…兄さん…」


ティナさんはシーダさんに隠れるようにくっつき、穴の先を見つめるヴァイトさんを見つめる。フィーは言葉を失いその隣で立ち尽くしていた。

ヴァイトさんは静かに俺たちのほうへ戻ってくると、青くなった顔で話し始める。


「少し、穴のほうを見たんだが…もう何も、見えない…」


声が微かにだが震えている。

一言ずつ、ゆっくりと話すヴァイトさん。普通の通路なら暗い中にも壁が見えるはずなのにそれが見えない。

あの手のようなものも、よく見えなかったが吸い込まれるように二人は消えてしまった、という。


「そんな……じゃあ、あの二人は…」

「……助けには…いかないの?助けに…行かなきゃ…」

「無理だ…そんな、危険なところにお前たちを連れていくことはできない…いや、したくない…」

「でも…!」


消えてしまった二人にその場にいる皆が困惑している。当然俺もだ。

あの手のようなもの…魔物であれば、なんなのだろう…その少し前に感じた嫌な感じはその魔物なのか。


ウィルが俺にいい気持ちは持っていないのはとても分かった。いろいろ突っかかってきていたからね。だから俺もただ当たり障りのない対応をして流していた、だけど。

流石に俺だって鬼ではない。流石に二人がいなくなったことにとても動揺している。

こんな時、キールだったら


「あの…俺、が…――!!?」


この状況で、皆を見て動揺していて油断していた。

俺が、話そうと皆のほうをみると、先ほどの手のようなものが残りの四人まで伸びていた。


あの穴から結構距離あるぞ?!


集まる四人のところへ駆け寄ろうとした、途端視界が変わるのと体に走る痛み。

恐らく気が紛れ索敵魔法が切れていたのだろうか、気づかなかったがそれは俺のほうにも伸びていたのだ。

視界の端に同じように捕まる四人とその声が聞こえる。

自分を拘束しているものを確認する。つる…?手に見えたあれは、恐らくこの植物のつるのようなもの。

それが何本も重なって腕くらいの太さになっているようだ。


がっつり脚をまとめられ、穴のほうに引っ張られる。

このままいけば二人のもとへ行けるのだろうか。しかし四人も捉えられたとなると…、


「……行くしかないか…」


俺は意を決して引きずられるように穴の中へ連れ込まれた。

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