入学前に【ギルド】
王都のギルドはとにかくでかい。
というのもここが本拠点といっても過言ではない。ここでは大陸全土の情報が入ってきているほどだし。
それに建物内にも主に魔法書や指南書類がおいてある図書スペースや、元となる冒険者ギルドのほかに、行商をするために登録しなければならない商人ギルドとか、治癒やお祓いとかを主に各地を巡礼したり修道院をもったりするために登録する導師ギルドも入っている。
基本冒険者と兼業する場合はここにきて登録してからになる。だからかここは一番人の出入りが激しい。
初心者から手練れまで。でもこの時期は区切り的に学校を卒業してから登録に来る人が一番多いはずだから、熟練者はあまりこないかな…。
「演習所の区間って今どこか空いてますか?…あ、時間がどれくらいかかるかまだ未定なので、時間指定のないところだと助かります」
「少々お待ちください。…あっ、ちょうど今終わりの信号がきていてもう少しで空く区画がありますが、お待ちいただけますか?」
「はい、大丈夫ですよ。」
「力場の調整が終わりましたらこの子機のアラームでお伝えしますので、そのまま演習場Eへお向かい下さい。利用後はこちらの終了ボタンを押してくださいね」
「ありがとうございます」
さわやかに受付を通るキール。
受付の後ろで事務作業してたお姉さん数人すごい反応してたぞ…。
キールが去ってから「あの人水癒の魔術師だよ?」って教えられてとても驚いてらっしゃる…。
いやな予感を察知した俺はお手洗いに、とその場を離れた。
少し離れてキールのほうを見るといやな予感は的中していたようで女性職員数名にサインを求められている。
さきにも挙げたが、SSランクの人なんてそうそう来ないからだろう。
しばらくすると子機のアラームが鳴ったようで、女性職員に手を振り演習場への道中で待ってた俺のところへ向かってくる。
「…イケメン冒険者は大変ですね~」
「…見てたなら助けてくれよ…俺ぐいぐい来られるの苦手なの知ってるだろ…」
「イケメンは否定しないんだね」
「自称顔面レベル中の上、もしくは上の下だからな!」
「………詠唱中に暴発しろ」
「ひどくない?!」
妬み嫉みで結構。
俺が名乗ったところで、驚かれるかとても驚かれるか、そしてドン引きされるかだ。あ、自分で言っててかなしい。
演習場に入り、Eと書かれ区切られた区画に足を踏み入れる。
すると子機が反応し地面に描かれた線上に透明な壁が出来上がった。
他の区画ではだいたい魔法や武器の練習をしている中、俺たちはマジックバッグの中から道具を出し始める。
俺の着る予定の制服を身にまとっている小さなマネキンを地面に立てると、キールは店内で書いていた紙を出す。
「一応俺としては、全属性耐性強化、成長補正、魔力強化、身体強化で妥当かと」
「あれ、さっきいろいろ書いてたじゃない。魔力回復量増加とか」
「いや、あのレベルの付与効果で5個ってことは下手に効果高いの付与して発動しなかったらダメだし、4個にしておじさんの言ってた制服自体の魔力に対する強化しとくかと」
「なるほど」
そう言うと、入学祝いにな。とキールはいそいそと準備を始めた。
しかしその間俺はとても暇である。本当に暇である。
それをキールに目で訴えたら、
「そういやセランってここの地下迷宮いったことある?」
「ギルドの?初心者向けって言われてる?」
「そうそう。でも初心者向けなのは10階層までで、それ以降は普通のC級ダンジョンレベルならしいぞ」
「へぇ!…この会話の内容だと、そこに行ってこいって話になりそうだね」
「よくわかったこと」
再び俺はキールに目で訴えたが、もう背中を向けているため訴えても無意味となる。
えっおれ一人で行くの?!
今度は口に出して訴えると、「10階層からどれだけ進めたかで、入学祝いのプレゼント他にプレゼントしてやるよ~」だって。
付与魔法にどれくらい時間かかるのか聞くと、よくわからないとのこと。武器とかだと簡単にできるんだけどね、装備品となると全体的に施さないといけないから、ちょっと時間がかかるのだ。
終わったらこれで知らせる。と通信用の魔道石がついたブレスレットを渡される。
「……行ってきます」
「おう行ってらっしゃい!」
はあ。とため息をつくと俺は演習場をあとにした。
地下迷宮といっても、演習場から歩いてすぐに受付兼入り口がある。
そもそも王都のギルドにくること自体が滅多にない分、先ほどキールと話したようにここに来るのは初めてだ。
10階層までは初心者向け、と言われているだけあって、初心者用であろう受付が設置されているのだが…結構並んでいる…。
受付が一応二つあり、10階層以上に行ける人たちはそのままパスだけ発行して中に入って行っているみたいだが、あれはなんのパスだろう…。
初心者以上の人が通る受付のお姉さんに聞いてみよう。ギルドカード提示するのか。
俺はギルドカードを提示しながら
「このパスってなんなんです?」
「えっ……えっと、このパスカードには一応転送魔法が施されていて、冒険者には一度魔力を流してもらいます。もし地下迷宮に入ってから7日が経過するか、このカードの持ち主の魔力が枯渇したら自動的に作動するようになっているの」
「へえ~!すごい!」
「……一応まだこの地下迷宮を攻略した人がいないからね。少しでも情報をくれたら、情報に見合った報酬もでます」
「まだ攻略されてないんだ…」
一応初心者用、と謳っているだけあってか高ランクの冒険者があまり来ないんだろうな…。
お礼を伝え、パスカードに魔力を流すと「ご武運を、いってらっしゃいませ」と声をかけられた。
いや、ご武運をってほど潜らないから…時間つぶしだから…。
そう背中で語ったつもりだが絶対伝わってないな。と少しうなだれながら、俺は階段を降りていく。
一応この地下迷宮のガイドブック紛いのものが受付横に売られてたけど、大丈夫だよね。
他の迷宮はまだ片手で数えられるほどしか潜ったことはないし、攻略したこともない。俺も仮にも初心者だよ。
階段を降りる足が徐々に重くなるのを感じながら、俺は足を進めた。




