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その者、”異端”につき。  作者: 月乃あかり
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その者、実技試験


運動場に行くと、数人の試験管が大きいパネルを持って立っていた。

なかなか広い運動場で、そのなかで数個のグループに分かれての試験のようだ。

たしかに、この人数だ捌いていくのは難しいだろう。


「162番…あ、あそこか。150~200番」


そう数字のかかれたパネルを持つ男の試験管の元へ足を進める。

男の人の後ろ側に見たことのない機械が見える…測定器かな。

ギルド登録の時に使ったものと似ている。けどあれから随分経っているからか大分機械自体がこじんまりとしている。

文明の進化を感じる…。


「あら、あなたまた同じですの?」

「ん?」


ついさっきも聞いた声。

声の主を探すと、隣の席にいたあの貴族のお嬢様だ。

隣の席に居たのだ、居てもおかしくはないけれど。


「実技試験ですけれど、貴方大丈夫なんですの?」

「はあ…大丈夫ですけれど」

「この人数の中、その、緊張したりとか…先ほどの筆記のときも余裕そうな顔でしたし」

「余裕そうな顔でしたか」

「え、えぇ」


ついオウム返しのように答えてしまった。

俺そんなに余裕に見えたのだろうか。結構緊張はしてたはずなのだが。


といういかむしろお嬢様のほうが緊張しているようだ。

声を張っているが、語尾が少し震えている。あと鞄を持つ手も。

たしかにこの人数の中、試験とはいえ恐らく自分の力を他の受験者の前で見せなければならないのだ、緊張しないわけがない。もちろん俺も緊張している。


「…緊張するときは、手に聖印を書いて飲み込むといいですよ」

「へっ…?」

「失礼ですが、守護聖霊は?」

「え…えぇと、風の、シルフィー…」

「ですと、こう、ですか」


指に光を灯し、空に風の聖霊・シルフィーの聖印を描いてみせる。

さすがにないと思うが、それすら間違えたら縁起が悪い。宙に残るように描き出し、お嬢様が俺を真似て手を出したところに、すっと降ろして見せる。

つい聖印を乗せるときに手が触れてしまう。その手はとても冷たかった。

俺の手が触れたことにピクリを反応をみせたが、その手は振り払われることはなく。


お嬢様の顔を見ると、目があう。

その瞳は揺れていた。

緊張と。不安と。さまざまな感情が混ざった。

つい、俺は触れたその手を両手で包んでいた。


「っえ」

「大丈夫。がんばれ」

「……う、うん」


揺れていたその目が、俺を映す。

俺がニッと笑うと、お嬢様も少し力が抜けたようで、微笑み返してきた。


「まだ、名乗っていませんでしたね。私はリリーナ・ハーディスト。お互い頑張りましょう」

「ああ。俺はセラン…頑張ろうぜ」

「…よ、よかったらリリーって呼んで頂戴。貴方は、セランね。家名は…」


リリーナが言い終わる前に、パネルを持った試験管の声が各場所から聞こえてきた。

どうやら、試験が始まるようだ。

受験番号ごとに並ぶよう指示され、俺とリリーナはお互いに手を振り自分の番号のあたりであろう場所へ足を速めた。


俺の番号は162番。自分の前に11人ほど居るからどんな感じか見てみる。

他の受験者もどんな内容か気になるようで列の真横で行われるものに食い入るようにみている。

まずは魔力値の測定からなようだ。


機械に簡単な入力作業、そして感知版のところに手を当て、魔力をこめる。

すると、機械より伸びるように立つ数値版に魔力値が表示された。ちなみに150番の男の子の受験者は122ポイントと出ている。

ギルド加入時は個室で一人ずつの対応だったため、当時は他の人の数値…同世代の数値は特に知らなかった。

まあ年齢平均値はあるけれど、全国だからね。それにここにいるのはミストニア学園の受験者。ちょっと楽しみ。


ちなみに学校入学時の10~12歳時の平均はキリよく100ポイント。

なので今測定した人の122ポイントは結構高いほう。


測定が終わると、少し離れたところに移動して今度は魔力開放。


魔力開放は一応魔法を使うための基本となる。

もし風の聖霊なら自分の周りに風が巻き起こる。小さい台風みたいなとか。

それを基本魔法の風の刃(ウィンドカッター)なら小さく鋭くして飛ばしたりとか、変化させて使うからね。

開放して、それを暴走しない程度まで最大限までコントロールできれば。


「おっと」


ちょうど150番の受験者がやってみると、その体を中心に風が発生し小さい竜巻のような形状に。

運動場は砂があるものだから順番待ちの俺たちのほうに砂埃が舞ってくる。

目に入ったらたまったものじゃない。うすくバリアをはって対処。

結構勢いのある風だ。見た目10歳くらいなのにすごいな…。


「そういえばさっきの…リリーナは…」


俺より番号が遅いようだったけどどのへんに居るのだろう、と列の後方に目をやる。と、

男の子の叫びとともにざわめくまわり。

どうしたのかと受験者の方を見ると、体の周りに発生していた風が散乱し、強い風がいろんなところへ向かっていく。

砂をまとって列のほうへ向かってきたかと思うと、列に届く前にそれは消える。

どうやら試験管が他受験者へ被害が行く前に掻き消したようだ。

それじゃあもっと早くやってくれよ前に並ぶ女の子目の中に砂入ったみたいで凄い目こすってるぞ…。


魔力の開放に、数値が高ければ高いほどその聖霊に関する力が発生するが、うまくコントロールできていないと今のように暴走しかけたりする。

開放は開放だけど、全力でやったら駄目ね。何事も程ほどに。

でも今の受験者はしっかり学べば抑えられる、ということみたいで試験管の持っている書類には丸をつけられている。

実技試験とは言っていたが、試験というより測定に近いみたいだ。

しかも終わった人から帰っていいみたいなんだけど、後の人はペンの動きで前の人の合否わかっちゃうけど、受けた人はわかんないから今の人凄い落ち込んでるよ。


四人目が終わったあたりで、試験管の元にもう一人大人の人がやってきて、魔力開放する場所の周りに魔方陣を描いている。

どうやら先ほどのように属性によっては他受験者に被害があったらと、結界魔法を張ることになったようだ。

さっきどこかのグループで爆発があったようだしそのせいかと。


リリーナを探そうと思ったけど、よく考えたら俺どの属性開放すればいいんだ?


目の前にはあと3人。やばい。

ちょっと背中に汗かいてきた。


一瞬保護者達はどこにいるのだろうと運動場を見渡すと、運動場の周りにいるものの大分遠くて見えない。

キールに助けを求めようと思ったが無理だ。

とりあえず、結界魔法のレベルを調べようと魔法陣を眺める。

さっきの爆発くらいなら防げるレベルなのはわかる。しかし中級ほどの威力をだしたらどうだろう、そこまでしっかりとした魔方陣ではないようだ。

よく見たら魔法陣を描いた人はもう試験管の隣には居ない。簡易的な結界魔法だ。


「(俺の、一番威力がない、魔法…)」


威力がないというのは語弊があるな、しっかりコントロールできるやつだ。

ただでさえ威力抑えるのが苦手なんだ…暴走に見られないようにしなければ…。


試験管が張った結界魔法を簡単に見ているわけではない。

キールの弟子についてそこそこすぐのときに、キールが張った簡易結界を見事破壊し、その時風属性の魔力開放をしていたんだけど結界周辺の木々が一掃されたくらいだ。


ど、どうしよう…。



「次、162番!測定器の前へ!」


ついに、俺の番、きた。

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