学校へ行こう
心労もあり疲れた体でようやく宿屋に到着。
ギルドとあまり離れてはいないはずなのに、とても長く感じた。
「ただいまー」
「ぉ、おかえり!もう昼も過ぎたぞ~どこ行ってたんだよ」
「ちょっとね…」
荷物をすぐおろし、俺はソファに座った。
背もたれに体を預け、大きく一息ついていると、キールが俺の顔を覗き込んでくる。
なんだよ、と声をかけると苦笑を浮かべて
「いやもう大分ここに居たし、ちょうど明日明日で前回延長し日なんだよね。だからいい機会だしそろそろ街を出ようと思ってたんだけど、セラン疲れてるかなぁって」
「平気だよ。ってか俺の身バレしたから行けるなら早く行きたいかも」
「ぇ、マジで。何かした?」
「…………ぁ、あはははは」
…言えない。
…よく思えば馬鹿らしい
俺的に言いづらい理由に、笑ってごまかしてみる。
しかしキールのことだし、ギルドの依頼のとき何かあったのだろうと察してる感じはある。
乾いた笑いが室内に響く妙な雰囲気の中、キールは何か思い出したように口を開いた。
「ぁ、そういや締め切りそろそろだよなぁ」
「なにが?」
「んーセランの学校の手続き」
間。
「……………はぁ?」
……学校?
…………学校!?
その単語に俺は耳を疑った。
ソファに沈んでいた筈の体も、一瞬で飛び起きるほど。
だって、今の今まで一言もそんなこと言わなかったから。
てか…ガッコー…
「ん、待って。ちなみに、どこの?」
「王都にあるミストニア魔法学園」
「魔法学校?!魔法使うところだよ?!」
「なんだよ、使えるだろ」
「いや…使えるけど…」
王都……
魔法……
きっと、多分……いや絶対。
だらだらと、冷や汗が俺の身体を伝う。
俺の家はレンジェーナ家、フランがいる以上きっと貴族なのは変わりないはず。
学園は勿論、校名に王都とついてるだけあって、とてもしっかりしており、そりゃ貴族も多い。
しかも王都といえば、俺の故郷といっていいのか、産まれたラルバンシェと同じ地方にある。
そして、おそらく自分の年齢を考えると、俺は一年遅れて入ることになる
そしてそれは…フランと、かぶる可能性がある。
「ちょ、待て。まって。」
「ん?」
「本気で行ってる?俺に学校に通えって?」
「当たり前でしょ、一応国民の義務なんだから」
…国民には教育の義務があり、10歳から12歳の間に学校に入学をしなければならない。
でも俺、キールと一緒になってから、家に連絡もしていなければ、ラルバンシェに足を踏み入れてもいない。
もう家を出ているも同然だし、一応名前は名乗っているけれど、もう良いのかと思った。
……しかも、王都……
「キール、思ったんだけど王都って結構いいトコのが集まるんだよ」
「お前一応いいトコのもんじゃん」
「……でもお金だって」
「大丈夫!俺ら二つ名だし、直ぐ貯まるさ!!」
「……。それにしても、俺に学校に通わせるつもりだったらぎりぎりの12歳じゃなくて、10歳のときに言っててくれてもいいんじゃない?」
そう、急すぎる。
せめて一言、学校はどうするのかとか聞いててくれれば俺のほうで考えたさ。
それを学校の「が」の字も言わずこんなぎりぎりまで…。
「ん、いやあ半分くらい忘れていたのもあるんだけどさ。セラン2年前は今より荒れてた性格だったし、俺の居ないところへ単身行かせるのは少し心苦しくて」
「まあ…そんな時期もありましたね…てかさらっと言ったけど忘れてたのかよ」
「実は毎年ちらっと脳裏には浮かんでいたんだけどね。いやあほかの事考えるとついどこかに飛んで行っちゃうんだよね~」
………この師匠。
しかし何を言っても、これは決定のようで。
いそいそと書類をテーブルの上に広げられ、俺は書類に目を通す。
…と言うことで。
当面の目的は、決定。
今でも十分とお金は貯めているつもりだけど、王都での学校だ。入学金や毎年の学費やら、しかもこの学校寮制ならしくそのため毎日の雑費やら…まあいろいろと出費があるようで。
ある程度は余裕をもっていきたいと。資金集め。
しかしその前に、王都の魔法学校ということで、入学する前に試験があるようだ。
流石王都、そこそこの腕が無ければだめなのだろう。
試験のある日時まで、キールに基本をしっかり教わらなければいけない。はず。
…気が重い日々が始まる。




