好きな依頼は
依頼には基本【狩猟・討伐】【捕獲】【採取】【運搬】【護衛】
の五種類がある。
基本ギルドが置かれているその町の住人からの依頼、国や施設などからギルド全体に回されている定期的なものが取り扱われている。
その中で割と早めに終わらせて欲しいもの、期限があるものは掲示板に。あと高報酬なのも掲示板と壁に貼ってある。
あと常にお願いしていたいもの‥‥例えば薬草の納品とか、魔物の繁殖期に合わせた定期的なやつとかな。
その中で俺が一番好きな依頼
それは狩猟・討伐依頼。
どこか体の一部を持ちかえるか、何かしら証拠品を持ち帰れば良いから、大分好き放題暴れられる。
俺が苦手なのはこないだみたいな捕獲モノ。生け捕りだと更に苦手。
まだ力がコントロールできなくて、好んで受けることはまずない。
護衛モノは、必ず来るならまだイケる。
荷馬車の護衛とか、暇なヤツは苦手。
ん、我が儘だって?
今更だ。
「町から出るならキールにメモ置いていった方がいいよね‥‥流石にもう起きてるかな」
一応起きて俺がどこにも居ないとなると心配すると悪いので書き置きをしに宿屋へ戻ることに。
そんなに時間もかからず、部屋に戻る頃にはちょうど朝食が出来ている頃合だと思ったのだが‥‥
「‥‥ちょっとキールまだ寝てるの」
「あと2時間て言ったじゃん‥‥」
「‥‥俺今ギルド行って依頼取ってきたから行ってくるね‥‥」
「はいよー」
ため息混じりに言って部屋を出ようと踵を返す。
キールから「今日魔法使う時できるだけ詠唱破棄で頑張ってね〜」なんて声が聞こえたが、そんなお使いを頼むようなニュアンスで言うものではないと思うよ、うん。
食堂によってちょっと軽食を食べたあと、つい先日くぐったばかりの門を目の前に、地図の確認。
これ基本だからね、初心忘れずべからず!
本来ギルドの主人に聞くべき筈の分布域なんだけれども、先程の件もあったので依頼書に依頼人として明記されていた加工屋に直接聞きに行き記したマークを確認する。
ここベルラントはそもそも採掘場が近くにあるという位山に面しているのだが、その山脈沿いであり先日のファンゴの巣との中間程にあるらしい。
なので先日よりきっと道は悪いが飛んでいけばすぐだろうしと、町の割に作りのいい塀沿いに歩いていく。
町の地図と照らし合わせ、直進で分布域にピンポイントの所を確認。
「ここから、この方向にまっすぐ‥‥よし」
高く飛び上がり、塀を蹴るのと同時に風を起こした。
塀自体はそんなに高くない。平屋の屋根くらい。
なので塀の終わりギリギリの場所をやや上空の方を目指し足に力を入れて。
「いよっと!」
勢いで飛び、そのまま軌道にあわせ風にのる。
一蹴りで大分いけるようになったものだ。
最初の頃は力のコントロールができなくて蹴る対象のものをよく破壊していた。
今では一蹴りですでに町が小さく見える。
風を起こすのも、一定量の風を起こし自分に害のない程度に飛ばし、加えて自然の風の状態にあわせ微調整をしたりと、実は結構大変なんだよな。
さっき軽く(カウンターで)発散したからか、放出に関しても調子がいい。
予想で長めに1時間くらいとかんがえていたが、半刻程で予定の場所へと到着。
「この辺って言ってたな‥‥熊なだけに洞窟とかあるとそこなんだけど‥‥」
索敵魔法では自分の魔力を一定に膜を張るように伸ばして、魔力を発する障害(生物)にあてて場所を探るような感じの感知魔法なんだけど、流石に地形まで探るものは空間把握的なものもあって少し難しい。
そして俺のレベルではそこまで深く感知できない。
「索敵魔法かけながら探索かな‥‥」
ちょっとめんどくさそうにため息を1つ。
ギルドの出て行き方的に1日かけるのはちょっとプライド的に無理。
キールとかなら見つけるまで時間かかったんだな‥‥って分かってくれるだろうけど、他の人はそう思わないだう。
1日かけて倒してきたのか。
そう思う、絶対そう。
さっきの男の顔が脳裏に浮かぶ。
すると自然に早足になり山の方に向かう。
「ん‥‥確かキールにブラックベア単体なら大木の幹の所に穴掘って巣を作ってるって話あったな」
確かにこの森は大木が多くみえる。
そう考えれば山に面したところに分布域がないのも頷ける。
確かに‥‥
「ここの印の場所、大木に囲まれてる‥‥」
足をとめ、周りを見渡す。
そういえば、索敵‥‥
と、考えた途端、足元がぐらつく。
地面な筈の下から突如感じる野生の殺気。
咄嗟に宙へ逃げると、自分の居た場所の真下から毛に覆われた腕が2本、抱き潰すように宙を切った。
腕の次に現れたのは、流石熊といえる家の扉より大きい。
以前みた違う種類のよりは小さく見えるけど、身長俺の倍あるよ。
「んー‥‥風の刃」
鋭い風が当たるも切断まではいかず、深めの傷がつく位。
シロクマさんよりは皮が厚いのね、把握した。
地面を掘るようにしながら威嚇している。
少し離れて前方に大きな岩があり、そこに降りる。
よく、本の煽りで【その爪は岩をも砕く!】っていうけどどうなのかな。
「試してみようか。‥‥具現化魔法」
岩に手を付け、唱えながら岩から垂直に離す。
手にくっつくように細長く伸びる岩。そしてそれはレイピア程の片手剣程の長さ、そしてそっくりな見た目になった。
くるくると振り回せば風を切る音。
「風斬!」
石でできたそれに風を力を注ぎ振り回すと、風の刃が数個、ブラックベアに向かって飛んでいく。
少しひるんだのを確認し、姿勢を低く大きく1歩、すぐ目の前に迫り、左腕の付け根を狙い剣を振り上げる。
その表面にはうっすらと風をまとっている。
「グッ」と低い呻き声と共に、ブラックベアの左腕は巨体の後方に飛んでいく。
「おっと思ったよりやわかった。ごめんね痛かったね」
「グルル‥‥」
振り下ろされる右手をよけ、まだ上に上げたままだった自分の腕を勢いをつけて斜めに振り下ろした。
呻き声と言うより空気が抜けるような音がすると、続いてブラックベアの頭が落ちる音が森に響いた。
「シロクマさんは風斬でコマ切れだったけど君もそんな固くなかったね。やっぱこんな見た目でも獣だね」
頭をひろうと耳のあたりを撫でながら呟く。
動物は嫌いじゃない。
家畜やペット、従魔が居るくらいだから、もしかしたら、と考える位だ。
だから、出来ることなら苦しまないよう、一瞬で楽にさせてあげたいと思う。
だから好き勝手に、加減することなく即死で、終わらせてあげたいと思う。
「‥‥よし」
周りを見ると、今倒したブラックベアの血の匂いにつられてやってきたのであろう、他のブラックベアの姿。
さっと見て10匹以上いる。運が良いのはその中で突飛して大きい体躯をした奴が居ないことか。
流石にこれで全部という訳ではなさそう。なら良かった。
先日の他から流れてきたダイアウルフと違って、ブラックベアはここが分布域。
「ここにいるの、全部狩っても問題ないよね」
忘れちゃいけない。
そもそもの今日の俺は朝からチビちび言われて気が立っている。
「よしよし。‥‥じゃ、やりますか!」
最大の、ストレス発散。




