十二話 旅立ちと出会い⑤
「やっぱりばれてたか。久しいな、セツナ?」
「お前は・・・ルートか」
「そうだ、覚えてくれて嬉しいよ。君は魔王と戦うのだろう?」
「誰から聞いたんだ?」
「ケイさんだ。彼女は元騎士団のリーダーだった人だよ」
通りで・・・何でも見透かされていたのは、ケイ叔母さんがそれだけ熟練の騎士だったからか。
「少し違う。魔王を倒す・・・だ。」
「そうだったな。私も連れて行ってくれ、役に立つさ」
「断る、足手まといを連れていきたくは」
「試してみればいい。足手まといか、そうでないかを。」
ルートは剣を取り出し、セツナに向ける。
やれやれ・・・ため息1つついて。先へ進もうとするが、ルートが立ちはだかった。
「私も行く。」
「いい加減にした方がいい。魔王はお前のような」
「だから試せば良いだろ!」
そう言い放つとそのまま、セツナに斬りかかる。
セツナは零を盾に変え、それを受け止める。
「ほう、それは盾にもなるのか。凄いな!」
「・・・・・・はぁ!」
セツナはルートを押し返し、蹴りを入れる。
すぐに距離を取ったルート、そして、剣を抜いたセツナは戦闘態勢に入った。ルートは光属性の技を得意とするみたいだった。
「君の技はとても早く・・・そして、力強い!」
「褒めても連れて行く気は無い。」
「しかし、私はその速さに着いていける!」
「っ!」
さすがに驚いた。瞬身を使うとは・・・。
俺も瞬身を使い、距離を取る。
「光の魔法は得意だ。『アキシオン』を使った時に私はその場に居た。素晴らしい動きだった。瞬時に足に光を纏わせて光速移動・・・尋常ではない修行の賜物であろう。あれを見た時、私もその動きをマスターするために、騎士団を抜け、修行した。君と肩を並べられるようにな。」
「・・・何が言いたい?」
「カイラが襲われた日、私の父が死んだ。だから、君が仇を討ってくれて嬉しかった。まぁ本当は自分の手で討ちたかったがな。だが、あの時の君の目は、あのオーガの先の敵を捕らえていた。つまり。あのオーガは手下・・・もしくは囮という事だ。」
(こいつ・・・一瞬でそこまで推測したのか。大した洞察力だな。)
「そして、ケイさんから事情を聞いた。魔王の事もだ。だから、私は君と共に魔王を討ちたい」
「いいだろう・・・但し、お前の力を見てからだ。」
「構わない!行くぞ!」
二人の刀が交差する。それは光速の戦いだった。
1枚の葉が風に乗って地面に向かって落ちるが・・・落ちる事はなかった。
―――――――抜刀・風牙
―――――――剣術・風刃
風と風が斬り合う。そんな不思議な光景・・・。
音が無いが、その場所では風の刃が舞っていた。
そこの空間に入ってしまった葉が切り刻まれ塵になる。
「やるな・・・」
「それは、っく、ありがとう!」
少しセツナが押している。そんな様子だった。
「俺のスピードに着いてくるのか?零・・・君はどう思う?」
『人の子にしてはやる。それに奴はお主の瞬身を一目見て、それを会得している。それは人の子が簡単にできるものではないさ。』
「ふむ・・・」
「はあああああああああ!」
尚も攻め続けるルートだった。
(よし、鞘に刀が納まっていない・・・これはチャンスだ!)
―――――――剣術・風刃
―――――――剣術・風刃
「な!そ、そんな・・・!」
「抜刀だけが、この剣の使い方ではないさ。一応剣術も俺は使える」
―――――――剣術・地割
剣を地面に突き刺し、ルートの足場を崩す。
「っち!」
「遅い!」
そう言うと、俺は瞬身でルートまで跳び、蹴り飛ばした。
「ぐはっ」
「・・・勝負ありだ」
「取り乱してしまったのが敗因か・・・。」
「着いてくるなら勝手にすればいい。」
「え?」
「え?じゃないさ、好きにしてくれ。確かにお前は俺に負けたが、別に弱くはない。実力を見ずに足手まといと言って悪かった。」
「あ、いや、良いさ。セツナから見れば私はまだまだ弱いさ。全然修行が足りない・・・。」
「なら強くなればいい。少しなら助言はできる。」
「ああ、頼む!蒼き閃光の助言を聞けるとは嬉しいものだ。」
「・・・?蒼き閃光?」
「知らないのか?セツナはあの戦いから、その容姿とスピードから蒼き閃光のようだって呼ばれてるんだぞ?王城まで広まっていたぞ?」
「そうなのか、知らなかった。」
「改めて自己紹介だ。ルートだ。ルート・フェルトだ。」
「俺はセツナ・カミタツだ。よろしく頼む。」
突如大きな爆音がフィルンから聞こえた。
「な!?」
「フィルンからか、急ぐぞ!ルート!」
「分かった!」
ようやく、セツナSideになりました。
多分ずっとセツナ視点、たまにユウナ視点
希望があればカレンや、ルートの視点の物語を作っていきます。
そういえば、ユウナとカレンのフルネームを書いてない気がする。
ちゃんと設定しておかないといけないですね・・・。