表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

9/15

第8話 月下の弓矢

 〔紅の騎士〕が赤いオーガと対峙していた頃、俺たちはゴブリンやホブゴブリンをあらかた倒し終え、新たな戦場へ向かおうとしていた。


  ーーーだが、やつらは俺たちの前に唐突に現れた。

「おうおう、Eランクでもホブゴブリンくらいは倒せるようだな。」

「殺りがいがあるじゃねぇか。」

「あるじゃねぇか、殺りがいが。」


 〔月下の弓矢〕だ。

  ステータスを見る限り、他のCランクよりも強い。レイヴンさんには到底及ばないが、〔英傑の集い〕のパーティーメンバーと同じくらいの実力がある。


「どうかされましたか、月下の弓矢の皆さん?」

「ちょっと野暮用でな。そこの女を奴隷商にでも売ろうかと思ってよ。まあ、売る前に、少し楽しませてもらうけどよ!レイヴンのやつらがいたから、今までは手が出せなかったが……ようやく、俺らにも月が回ってきたってわけだ。」


 下卑た笑みを浮かべながら、リーダーのトーマスがこちらへ歩み寄ってくる。

「半殺しにしてギルドに突き出すか……それとも、依頼中に死んだことにするか……。レイヴンさんの顔に泥を塗るような真似はしたくないんだがな。」

「お引き取りにならないようね、やってしまうしかないようね。」

 エリシアの顔は、笑っているようで──まったく笑っていなかった。


  ……やばい。こいつら、本当に死ぬぞ。

 俺は心の中でご冥福を祈りつつ、トーマスへと意識を戻す。


「女のほうは生かしておくんだぞ、ギギ……ググッ……!」

  「女ぁッ!死ぬなよ!」

  「死ぬなよ、女ぁッ!」


『火魔法――烈火の長槍・創成(ブレイズランス)

『再現リバイバルーー水星の小剣(すいせいのしょうけん)水星の小剣』


 火魔法で長槍を生成し、右手に構える。左手には小型の短剣を逆手で持ち、相手の攻撃に備えた。


 エリシアも、身の丈を超える戦鎚を両手で構え、臨戦態勢に入る。

「来いよ、クソ野郎ども」

  「死に急ぎがぁ!」

 トーマスの大剣と、俺の長槍と短剣がぶつかり合い、戦いが始まった。


 トーマスは、さすが、Bランクに近い実力を持つCランク冒険者と言ったところだ。

 これまで戦ってきた魔物とは、まるで別次元の強さだった。

 大剣の一撃、その隙を補うように繰り出される足技、さらには魔法まで駆使してくる。

  ――戦闘経験が違う。そう感じさせられる相手だった。


 トーマスの大振りの一撃を、俺は短剣でなんとか受け流し、その隙を突こうと右手の長槍を突き出す──が、大剣を軸に身体をひねり、あっさりとかわされる。

 それどころか、すぐさま魔法による反撃が飛んできた。


『土魔法ーー土塊の槍(アースランス)

 地面から勢いよく土の槍が伸び上がり、俺の足元を狙って突き上げてくる。


 動きを封じるための一撃。

 そのうえ、位置取りがいやらしい。

 隙を見て仕掛けようとするたび、必ず大剣を彼我の間に差し込まれる。


 攻めようにも、その大剣が邪魔で手を出せない。

 正直、これまでの戦いでは、俺のスキルを持て余していた。 Eランクの依頼では、俺を本気にさせるような相手とは、出会えない。


 だが、トーマスは違う。

 有り余るステータス、過剰なスキル、それらを全力でぶつけられる相手だ。

 もっと速く動ける。


 今までは、戦いを楽しむために無意識に相手の速度に合わせ、力をセーブしていた。


 今その枷を外す。

 意識を切り替え、身体を高速で動かす。

 アースランスを跳ぶように回避すると、間髪入れず、トーマスは再び詠唱。


『土魔法ーー土塊の槍(アースランス)

 立て続けに土の槍が足元を突き上げる。

 足場を奪い、動きを封じようという作戦か。

 しかし、俺はすべてを見切り、すべてを避けた。

 そして――トーマスも、俺の動きを見て覚悟を決めたのか、大剣を構え直し、致命の一撃を狙って踏み込んでくる。


 俺は低い姿勢をとり、その場で身体を回転させる。

 今度は短剣ではなく、踵で大剣を弾いた。

 想定外だったのだろう。

 トーマスは驚愕の表情を浮かべながら、ギリギリとこちらを睨みつける。


 土魔法を使われる前に、そして回避の余地すら与えぬよう、短剣が届く距離まで一気に詰め寄った。

 逆手に握っていた短剣を順手に切り替え、狙うは首。


 寸でのところでトーマスはバックステップ。

 切っ先が喉元をかすめるにとどまる。


 その反動を利用し、大剣を持ち直す。

 構えを正眼に戻す――その寸前。 

 俺は右手の長槍を突き出し、トーマスの右肩を正確に狙って打ち込んだ。


『土魔法ーー大地(アース・)爆発(エクスプロージョン)

 トーマスが焦りを見せた一瞬、自らを中心に大地を爆発させ、俺を強引に吹き飛ばす。

 ――轟音と土煙が戦場を包んだ。

「……あぶねえ。この魔法を使わされるとはな。レイヴンが言ってた通りだ。やりやがる。お前、本当にEランクかよ?」

「顔、引き攣ってるぞ、先輩。……手ェ出す相手、間違えたな。」

「クソが、本気で相手してやるよ。」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ