第6話 序章
Bランクのステータスも気になったので、レイヴンにバレないように『鑑定』した。
▼ ステータス
【名前】:レイヴン
【年齢】:24
【種族】:人族
【称号】:
【レベル】:43
【HP】:232 / 232
【MP】:241 / 241
【筋力】:358
【耐久】:175
【俊敏】:421
【魔力】:222
▼ ユニークスキル
▼ スキル
・爆発魔法(レベルⅤ)
・風魔法(レベルⅡ)
・蹴術(レベルⅦ)
・鑑定(レベルⅤ)
・自動HP回復(レベルⅥ)
・交渉(レベルⅢ)
・鼓舞(レベルⅤ)
▼ 装備
・爆孔の蹴具
なんだその装備、てっきり爆◯かと、、、てへっ
怪しい名前に装備に目がいってしまった。
『轟脚』。
その二つ名の通り、爆発魔法と蹴術を組み合わせた戦闘スタイルだ。
蹴り技だけでも十分に強力。
だがそこに爆発魔法を重ねることで、威力は一段階――いや、それ以上に跳ね上がる。
さらに、あの装備には特殊な孔が設けられており、爆発魔法の出力を増幅する構造になっている。
単体で見れば、Bランク冒険者の魔法ランクⅤは決して突出しているわけではない。
だが、装備、風魔法、蹴術。
それらが掛け合わさることで、本来の限界を超え、Aランクに届きうる火力を引き出している。
これが、“組み合わせ”の強さだ。
本来、人はパーティーを組み、役割に応じて能力を特化させていく。
レイヴンも例外ではなく、HPや耐久は低いが、筋力と俊敏に優れた高速アタッカーだ。
対して、俺たち魔人はどうか。
全てのステータスが、バランスよく高い。一芸特化ではないが、明確な弱点も少ない。
単体で完結した戦闘能力。それが、魔人の強みだ。
もっとも事例が、まだ二人しかいない以上、断定はできないが。
それでも、俺とエリシアはこの1か月でかなり成長した。
▼ ステータス
【名前】:ヤクモ
【年齢】:18
【種族】:魔人
【称号】:魔人の真祖
【レベル】:24
【HP】:297 / 297 (+230)
【MP】:253 / 253 (+207)
【筋力】:354 (+276)
【耐久】:269 (+207)
【俊敏】:325 (+253)
【魔力】:261 (+207)
▼ ユニークスキル
・魔人錬成
▼ スキル
・火魔法(レベルⅦ)LEVLUP
・付与魔法(レベルⅥ)NEW
・武術(レベルⅦ)LEVLUP
・秘匿(レベルⅦ)LEVLUP
・鑑定(レベルⅦ)LEVLUP
・自動HP回復(レベルⅥ)NEW
・交渉(レベルⅥ)NEW
▼ SP:40
▼ ステータス
【名前】:エリシア
【年齢】:4
【種族】:魔人
【称号】:第二の魔人
【レベル】:22
【HP】:322 / 322
【MP】:192 / 192 (+147)
【筋力】:345 (+273)
【耐久】:289 (+231)
【俊敏】:269 (+189)
【魔力】:215 (+168)
▼ ユニークスキル
・雲魔法
▼ スキル
・雷魔法(レベルⅥ)LEVLUP
・槌術(レベルⅥ)LEVLUP
・秘匿(レベルⅦ)LEVLUP
・嗅覚(レベルⅤ)LEVLUP
・千里眼(レベルⅣ)NEW
・危険察知(レベルⅢ)NEW
・直感(レベルⅢ)NEW
俺たちは、称号と種族の恩恵もあって、ステータスもスキルポイントも桁外れ。同じレベル帯の冒険者と比べても、一線を画していた。
さらに、レベルの上がりも異様に早い。実際、Bランク冒険者のレイヴンさんとステータスを比べても、遜色ないほどだった。
レイヴンさんが先頭で「止まれ」と合図を出す。
どうやら魔物の巣を発見したらしい。
事前の情報によれば、その巣は人間でいう“村”規模にまで発展しており、ゴブリン、ホブゴブリン、そしてオーガといった鬼系の魔物で構成されているらしい。特にオーガは、冒険者ランクBに匹敵する強敵。その討伐は〔英傑の集い〕の担当となっていた。
魔物の巣に到着した俺たちは、各自持ち場に散っていった。
配置はこうだ。
南側――レイヴン率いる〔英傑の集い〕。
北側――先ほどの怪しい三人組、〔月下の弓矢〕。
東側――ベテラン冒険者マルコさんの率いるCランクパーティー〔紅の騎士〕。
そして西側を任されたのが、俺たち〔鐵〕だ。
静寂を破るように、南から轟く魔法の爆音が響き渡る。
開戦の合図となった。
西側は比較的敵が少なく、ゴブリン数十体にホブゴブリンが数匹。それでも一度に全てを相手取るのは危険だ。狙うはオークの各個撃破。
「魔法で一気にゴブリンを片付ける。その後、右のボブゴブリンは俺が、左のはエリシアが仕留めろ。」
「了解。杞憂でしょうが、怪我にはご注意を。」
「ああ、行くぞ!」
『雷魔法ーー雷槍!』
『火魔法ーー豪炎の矢!』
ゴブリンたちが悲鳴を上げる間もなく消し飛ぶ。
戦場が一瞬で拓けたその隙を突き、俺とエリシアはそれぞれのホブゴブリンへと駆け込んだ。
ホブゴブリンは、それほど知能が高いわけではない。ホブゴブリンの上位種であるオーガともなれば、人語を解する程度の知能を持つが、目の前のホブゴブリンは「グギャギャャ」と喚くだけの、ただの童に過ぎない。
ホブゴブリンの背丈は俺と同じくらいで、やや痩せ型だ。筋力的にも知能的にも、こちらの方が優れている。負けるはずがない。
ホブゴブリンが得物の棍棒を大きく振り下ろす。
その攻撃は遅すぎて、当たるはずもなかった。
俺は素早くかわし、そのまま懐に潜り込む。
『火魔法――烈火の長槍・創成』
懐に潜り込みながら、俺は素早く長槍を火魔法で生成する。
心臓を狙い、人差し指を指し示すようにして、火でできた長槍を深く刺し込んだ。
視線を横にやると、エリシアが血に濡れた戦鎚を軽く振って、返り血を払っているところだった。
その頬には、わずかな紅潮――そして、ほんのりとした笑み。
(……また、楽しんでたな)
彼女の冷たい瞳が、静まり返った戦場を一瞥する。
淡々と確認を終えたその表情は、戦闘中のそれとはまるで違う。
まるで何事もなかったかのように、すっと落ち着きを取り戻している。
不意にこちらへと振り返り、いつもの柔らかな口調で告げた。
「こちらも、終わったわ。」
「……ああ。今の俺たちなら……ホブゴブリン程度、問題なさそうだな。」
「ふふふ」
彼女は口元に手を添え、いつもの大人びた微笑を浮かべた。
けれどその瞳の奥には、戦いを終えたばかりだというのに、まだ火が灯っている。
「もう少し数がいても、私はその方が嬉しかったかもしれません」
「……やっぱり、お前ちょっと危ないぞ」
「ええ、自覚はあります。でも……楽しいと思うのは、悪いことですか?」
軽やかな声。
けれどその中には、戦場でしか顔を出さない“彼女自身”が、確かに潜んでいた。
普段のエリシアは、まさに理想の“大人のお姉さん”だ。
礼儀正しく、落ち着いていて、誰に対しても冷静で、距離感も絶妙。
人前ではめったに感情を崩さず、完璧な優等生といった印象を持たれるだろう。
……けれど、二人きりになると話は別だ。
ふとした瞬間に俺をいじってきたり、子どもみたいな無邪気な笑顔を見せたり。
そのギャップに、こっちの調子まで狂わされそうになることもしばしばある。
だが――
戦闘中の彼女は、さらに別人だ。
血の匂いが立ち込める中、獣のように駆け、狂気じみた笑みを浮かべながら敵を殴り潰していく。
その表情には、抑えきれない高揚と、心の底から戦いを楽しんでいる輝きがある。
まあ……
もともと“野生児”だったからな。
しょうがないっちゃ、しょうがないんだが。
「……まだ、あっちにホブゴブリンが残ってるな。それに──」
視線を向ける。
その先に漂う、異質な気配。
ただのホブゴブリンやゴブリンとは明らかに異なる、重く、濃密な魔力の圧。
「ーーーあっちには、“いる”な。あれは俺らの”獲物”だ」
俺の言葉に、エリシアが一瞬だけ目を見開き、すぐに口元を綻ばせた。
「そうね。……私と似たようなのがいるわね」
その声は、まるでこれから舞踏会でも始まるかのように弾んでいた。
気を引き締める。
ホブゴブリンやゴブリンの掃討はあくまで前座。
本番は──これからだ。
「こっちは早く片付けてしまおうか」
「では、張り切っていきましょうか♪」
軽く武器を構え直し、俺たちは再び、戦場の奥へと駆け出した。




