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第16話 フィストとザック

装備屋で、フィストの装備を買った。

俺たちは、距離が離れていてもある程度なら念話ができる。念話で好みを聴きながら、フィストの装備を選んだ。


その後、フィストのもとに向かった。


「よく似合ってるわ。」

「似合ってるじゃないか、フィスト。」

「二人ともありがとう!大切にする」

「さすが、エリシアだな。」

「うふふ、ヤクモの服も今度選んであげるわね。」

「ありがたい」

「今日は何するんだ?」

「ああ、俺たちの今後について話しておきたくてな。エリシアにも聞いてもらいたい。」

エリシアはにこやかに頷き、俺たち三人は落ち着ける場所に移動した。


「今まで通り、俺とエリシアは冒険者を続けて、ランクを上げる。とりあえず、Aランクを目指す。それと同時に魔人を増やす。そして、フィストはここら辺に魔人たちが住める集落を作っていて欲しい。魔物を仲間につけながら、魔人錬成をできる対象がいたら、報告してくれ。」

「ただ強さを求めて突き進んできた俺に、集落のような大勢を率いることができるだろうか。」

「できるさ。共に肩を並べて戦場に立ち、火を囲う。とりあえず、向き合ってみろ。学んで試して、また学ぶんだ。お前ならできる。」

「わかった。全力で頑張る。」

「なんで、集落を作るのかしら?」

「俺とエリシアは魔人だが、人間の街に入り生活できる。人や獣人の外見と同じだからな。だが、フィストが街に入れば、騒ぎになるだろう。これからもそういうやつは増えていくだろう。」

「そうか。俺の作る集落がこれからの仲間たちの拠点になるんだな。」

「そうだ。将来的にはそこでみんなと悠々自適な暮らしをしたい。俺たちも度々帰ってくる。」

「一緒に頑張りましょう」

「やってみるよ」


 コカトリス狩りに向かっていたところ、1匹のコボルトと遭遇した。


「フィスト、テイムのスキルでタイムしてみてはどうです?」

「あのコボルトをか」

「いろんな種類の魔物がいた方が面白いだろ。」

「もう、集落作りは始まっているのですよ。」


 フィストがコボルトを視界に入れる。三人に囲まれていても、コボルトの目は死んでいなかった。


 "金剛"

 

 フィストのユニークスキル"金剛"によって、腕全体が灰色から黒くなり、硬化する。


 コボルトは冒険者から盗んだであろう片手剣を持ち、真っ向から対峙する。


 腕と剣の鍔迫り合い、ステータスから見て、負けるはずのないフィストだが、なかなかコボルトを弾き飛ばせない。フィストは魔法や別のスキルを使えば、決定打を与えられる。だが、それはしない。


 テイムとは、主従関係を結び上下関係を決めること。圧倒的なステータス差があるにも関わらず、鍔迫り合いにも勝てないとなると、舐められる可能性がある。


 それもフィストはわかっている。だから、フィストの象徴たる"金剛"だけで勝つことを決めたのだ。


やはり、集落はお前に任せたい。


 心の中で称賛していると、フィストが雄叫びをあげ、勝負を決めにかかった。


 コボルトの剣が宙に舞う。

 勝負ありだ。


 フィストがコボルトをテイムする。鈍く光り、コボルトの右肩に光が収まり、赤色の刻印が付いていた。


 「名前はザックだ。」

 俺が"魔人錬成"でフィストにやったように、名前をつけた。


 ザックは嬉しそうな表情をしていたが、同時に悔しそうでもあった。負けず嫌いの戦い好き、似たもの同士だな。


「良い相棒ですね。」

「ああ、フィストのこれからの成長が楽しみだ」


俺は成長とは、変化であると思ってる。変化は二つある。状況が変化した時と、自身の変化だ。これらは因果関係にあり、相関関係でもある。その人の環境を変えることで、変化し成長する。


 俺は人の気持ちや変化に敏感だ。だからこそ、他人や自分の成長を見るのが大好きだ。


「期待しているぞ、フィスト」


俺たちはコボルトも連れて、コカトリス討伐に向かった。

段差の多い山間にそいつはいた。


鐵の相手ではない。

フィストに戦ってもらうことにした。

魔人になったフィストの強さを見ておきたい。それにザックにも力を示す良い機会だろう。


 「ザックよく見ていてくれ。今の俺の全力だ。」

  

"金剛"

無属性魔法 肉体超強化ブースト・アジリティ


ザックと戦った時同様、腕全体を硬化させ、無属性魔法で身体能力を強化する。


  

大きな鶏に、尾に蛇を備えたコカトリスへ、フィストは超速で踏み込む。


コカトリスの武器は、鋭い鉤爪と、尾の蛇が吐き出す毒液。

フィストはあえて正面から、鉤爪と向き合った。


速さと手数で翻弄し、振り下ろされる大振りの鉤爪を、“金剛”で強化した腕で弾き返す。

体勢を崩したその瞬間――

鳩尾へと、鋭い一撃を叩き込んだ。


だが、

その拳は分厚い羽毛に阻まれ、致命傷には至らない。


「……意外と、分厚いな」

フィストは小さく息を吐き、続ける。

「なら――」


腕全体に付与していた”金剛”を、今度は右手へと収束させる。


金剛は、面積が広いほど威力が薄れ、狭く絞るほど、破壊力が増す。

その代わり、制御は極端に難しくなる。


フィストの拳に、異様なまでに凝縮された魔力が集まる。

 空気が軋み、拳の周囲だけが歪んで見えた。

 力を一点に押し込めるほど、破壊の力は鋭くなる。

「……行くぞ」

フィストの踏み込みは、地面を砕きながら、フィストの身体が弾丸のように前へと射出された。

 コカトリスが鉤爪を振り上げる。

 だが、その動きが完了するより早く――

 拳が、突き出された。

 “金剛・一点突破”

 衝撃は、爆発ではなかった。

 それは、貫通。

 分厚い羽毛が、抵抗する間もなく穿たれ、

 硬い皮膚が紙のように裂け、

 その下の筋肉と骨が、まとめて砕け散る。

 フィストの拳は、コカトリスの鳩尾を貫き、

 背中側の羽毛を押し広げて、そこに突き出ていた。

「――ギャァァアアアアッ!!」

 悲鳴が、獣のものとは思えぬほど甲高く響く。

 尾の蛇が狂ったように毒液を撒き散らすが、

 フィストはすでに、拳を引き抜きながら後方へ跳んでいた。

 ドンッ、と遅れて衝撃が内部から炸裂する。

 コカトリスの体内で、圧縮された金剛の力が解放され、衝撃となり内臓と骨を内側から破壊し尽くす。

 巨体が、ふらつく。

 脚がもつれ、翼が痙攣し――

 そして、

 膝から崩れ落ちた。

 フィストはゆっくりと構えを解いた。

魔物はスキルを持たない。だが、フィストは魔人だ。魔物の頃には持ち得なかったスキルを所持している。

生まれながらの戦闘センスにフィジカル、魔人になることで強化された。そこに、魔人になることで獲得したスキルが掛け合わさり、まだ低レベルにも関わらず、単独でBランク冒険者並みの力を持っている。


「何かあったら、いつでも念話してくれ」

「頼りにしてる」

「また来ますね」

「ああ」

コカトリスをアイテムボックスにしまって、森を後にした。





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