第13話 二人目の魔人
俺たちはオーガを倒した後、気絶から覚めるのを待っていた。
「起きたか」
「殺さないのか。俺は多くの同胞を殺し、この集落の長になった」
「お前がどう生きてきたのかなんて、そんなのは知らん」
「しかし、、」
「敗者は勝者に従う、生殺与奪はあなたの勝手でしょう。あなたはこれまで、勝者となり、敗者を殺してきた。殺したのはあなたがそうしただけ。あなたをどうするか決めるのは、私たち勝者の特権よ」
「俺はお前を殺さん。仲間にするために、倒したわけだしな」
「俺を仲間に?俺はオーガだ。お前たちは人族だ。同族のゴブリンすらも仲間と呼べる関係ではなかった。ましてや、違う種族と仲間になれるはずがない。」
「意外と理屈っぽいんだな。戦闘中は本能のままにって感じだったのに。俺は人間じゃねーぞ。エリシアもな」
「人間じゃない?」
「そうだ。俺らは魔人っていう種族なんだ。んー、身体的な特徴がないから、説明できないな。」
「その深淵が如く、深い青の目は特徴じゃないのか?」
「目?いや、これはナチュラルだ。同族になればいんだろ。」
「そういう問題ではーー」
「ごちゃごちゃうるさい。俺はお前と戦場で肩を並べたい」
オーガは、ずっと弱肉強食の中で生きてきた。
戦場で隣に立つ鬼などおらず、いつも一人だった。
それでも嬉しかった。強き者たちと幾度も拳を交えられたことが。
この喜びが永遠に続けばいいとさえ思った。
戦いの最中、オーガは孤独ではなかった。
常に向き合える好敵手がいる、一人ではない。
そのことが、幸福だったのだ。
だからこそ、戦う相手を探すことが、自らの幸福を求める行動だと信じていた。
だが、ヤクモが手を差し伸べたとき、ようやく悟った。
孤独を紛らわすのに、戦いは要らない。
ただ、肩を並べてくれる仲間がいる――
それだけで、孤独は消え、心は温かく満たされていく。
幸福とは、強者を打ち倒すことではなく、共に戦う者がいることだ。
「……頼む」
「よし……」
ヤクモはニヒッと笑い、一歩踏み出す。
『魔人錬成』
「お前の名前は――フィストだ」
その瞬間、赤いオーガの体が鈍く光りはじめ、やがてその輝きは全身へと広がっていった。
一瞬、森全体を白く塗り潰すほどの閃光が迸り、
次の瞬間、それは抑え込まれるように一点へと収束する。
光が消えたとき――
そこにいたのは、赤いオーガではなかった。
特徴的だった赤い肌は、燃え尽きた炭のような灰色へと変わり、
その色はまるで凝縮されたかのように瞳へ集まり、深紅の輝きを宿している。
髪は桃色に染まり、短く、硬質なショートヘア。
身体は一回り小さくなり、引き締まっていた。
象徴である二本の角も体躯に合わせてやや小さくなっているが、
その存在感はむしろ研ぎ澄まされ、圧倒的な威圧を放っている。
そこに立っていたのは――
野蛮な怪物ではなく、戦場に立つために生まれた“武人”であった。
てか、このパーティーバランス悪すぎない?近接三人!?やば!?
フィストを連れていけば怪しまれるだろうと思い、後日また来るとだけ言い残して、レイヴンさんたちのもとへ向かった。
もっとも、俺とフィストは念話で通じ合っているから、連絡自体はいつでも取れるのだが。
フィストを魔人錬成する前に採取しておいた角を討伐証明としてレイヴンたちに見せ、依頼完了を報告する。
討伐の際、加減ができず、エリシアが力の限り振るった戦鎚で木っ端微塵になってしまった、そう説明した。
レイヴンさんはどこか腑に落ちない様子だったが、なんとか押し切ることができ、依頼は無事完了となった。




