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第11話 vs赤オーガ

月下の弓矢を倒した俺たちは、ただひたすら気配のする方角へと駆けていた。


もしレイヴンさんと交戦してしまえば、魔人候補を失うことになる。

それほどまでに、彼は別格の強者だった。

それだけは避けねばならない。全速力で足を運ぶ。


だが、生かして捕らえたトーマスが邪魔で仕方がない。その場で始末してしまおうか――何度そう考えたことか。

そうして距離を詰めていくと、とてつもない轟音が大地を震わせた。


間違いない。レイヴンさんが戦っている。彼の二つ名は〈轟脚〉。爆発魔法と脚技を組み合わせて戦う轟脚の使い手――この音も、その爆発の音だろう。

「急ぐぞ……」


たどり着いたとき、戦いはまだ終わっていなかった。


レイヴンさんは肩で息をし、額には焦燥の色を浮かべている。少し離れた場所には、紅の騎士のおっちゃんたちが無惨に横たわっていた。


「ヤクモ、エリシア……やはり無事だったか。すまない、あの二人を仲間のもとへ連れていってくれ。」

――なるほど。焦りの理由はあれか。死にかけの仲間たち、か。

それなら、遠慮なく。

「行くぞ、エリシア」

俺はレイヴンの前に一歩進み出て、巨大なオーガへと視線を向ける。

「何をしている。」

「俺たちがこいつを倒します。レイヴンさんは二人を連れて行ってください」

「何を言っているんだ!リーダー命令だ。それに君たちの勝てる相手では――」

「レイヴンさんが行ったほうが早いでしょ。」

レイヴンさんが仲間のもとに行って回復魔法をかけてもらわないと間に合わないのは本当だ。

「それに――俺たちは負けない。」

俺たちは負けないし、このオーガを必ず仲間にする。 

(かっ飛ばせ)

「次はお前たちか。そいつは中々だったぞ。お前らもーー

最後まで言い終わる前に、エリシアはオーガの腹部に戦鎚をめり込ませていた。

(オーライ)


オーガは衝撃を止めきれず、それなりの距離を飛ばされる。

魔人錬成(サタン・サーヴァント)を見られるわけにはいかないし、あまり手の内を晒すのは好きじゃないんでね。できるだけ遠くで済ませたい。


飛ばされていく、オーガに向かって二人は全速力で走り出す。

「ちょ、話はまだ……行っちゃったか」

レイヴンが苦笑まじりに呟く。強いとはいえ、まだEランク。長くは保たないかもしれない。だが、少しでも時間を稼いでくれれば――その間にマルコさんたちを助けられる。

「耐えてくれよ……鐵、マルコさん、コールマンさん」



「いい攻撃だ。お前たちも楽しませてくれそうだ」

赤いオーガは牙を剥き出し、口角を不気味に吊り上げた。

「強者がお望みか? あいにくだが、俺たちはここじゃ本気を出せない。もっと遠くでやらせてもらう」


サタン・サーヴァントのことを考えるとレイヴンさんたちと、もう少し遠くに離れたい。

というわけで、

『付与魔法――軽量化』


まだ状況を飲み込めていないオーガをよそに、俺は触れたものを軽くする付与魔法を足にかけ、体勢を低く落とす。


次の瞬間、キリンやシマウマといった四足歩行の草食動物が捕食者に反撃する時の要領で、足裏からオーガを蹴り飛ばした。

その一撃は、レイヴンたちとは反対の方角へ、オーガの巨体を吹き飛ばした。


――付与魔法。

物や生物に干渉し、性質を一時的に変化させる魔法だ。


現在のレベルはⅣ。

付与できる効果は、

巨大化・微小化・重量化・軽量化・伸長化・短縮化・柔化・硬化。

レベルが上がるごとに、扱える性質が増えていく仕組みになっている。


触れただけで効果が発動するこの魔法は、近接戦を主体とする俺の戦闘スタイルと、相性がいい。


今はまだレベルⅣだが、火魔法よりも取り回しがよく、積極的に育てていきたいスキルのひとつだ。


これで俺は、火魔法と付与魔法――二つの魔法を手にしたことになる。

この調子で、さらにスキルを増やしていくつもりだ。

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