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異世界から来た不良召喚術士  作者: 平位太郎
第5章 闘技場の都市へ!
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第七十話 沼地の巨人

「え~と、警棒……いや、ここは日本刀だな」


 弘は警棒を召喚しようとしたが思い直し、日本刀を召喚している。第一の理由としては、ゾンビにスタン効果が通用するか自信がなかったからだ。


(いや、電撃だから効果はあると思うけど、引っかかれただけで呪い判定だろ? リーチの短い武器は及びじゃねーわ)


 リーチを問題にするのなら、アイテム欄に収納している手槍が最長武器だが、ここは日本刀を使ってみたかったのである。

 そうして召喚した日本刀は白鞘に収まっており、やはりヤクザなイメージがあった。

一瞬、へラッと笑った弘は、鞘を抜き捨ててから日本刀を両手で持つ。


「さて……ゾンビ退治と行くか!」 


 間近で見るゾンビは気色悪いことこの上ないが、その動きは鈍い。レクト村で蜘蛛に操られていた村人の方が、まだ動けていたように思える。


「……はあ!」


 掴みかかってきたゾンビの両腕を、弘は一振りで切り飛ばした。

 肘から先の腕が2本とも喪失したが、それでもゾンビは噛みつきをするべく頭部を差し出してくる。ここで弘は斜め前に進み出てゾンビの攻撃をかわすと……同時にアッパースイング気味に日本刀を振るった。


 ドカッ!


 重い音と共に、ゾンビの頭部が宙を舞う。

 少し遅れてゾンビの身体が倒れ込むのを見届け、弘は日本刀の刃を見てみた。刃こぼれしている様子はない。


「日本刀ってのは、何人か斬ったら血脂や骨で刃がボロボロに……って聞いたことがあるけど、取りあえずどうにもなってないな」


 さすが設定上は準業物! と言ったところだろうか?

 それとも1人斬ったぐらいでは、問題としないだけかも知れない。

 周囲に他のモンスターが居ないのを確認した弘は、日本刀を消すとママチャリを再度召喚した。

 そして、サドルに跨るやペダルを漕いで発進。ゾンビの倒れている現場から急遽離脱している。

 漂うゾンビの腐臭に我慢ならなくなっていたし、元がゾンビとはいえ、頭部や腕を切断された死体の近くで居たら野盗か何かと誤認されかねないからだ。 

 もっと腐敗の進んだ死体であるため、これはゾンビであると言い張れるだろうが……。


「しかしなんだな。ゾンビまで出てきたか……」


 ゲームで言うアンデッドモンスターには、グールやワイトと言ったゾンビの上位版が存在する。ゾンビが居る以上、この世界にグール等も存在する可能性が高いと弘は考えていた。


(ひょっとすると、ヴァンパイアだって居るかもな)


 いわゆる吸血鬼であるが、ゲーム等ではかなり上位のアンデッドモンスターだったはずだ。


(TRPGじゃあ、強力すぎてマスターが出してこなかったぐらいだし)


 更に言えば、ヴァンパイアの相手ができるレベルになる前に弘が中学を卒業し、同時期にTRPGをやめてしまったのである。

 街道を高速で自転車走行する弘は、つかの間、思い出にふけった。そして、軽く頭を振って現状に意識を向けると、先ほどのゾンビについてとある可能性を考察する。


(不死呪詛持ちってことは、さっきの奴が最初の1体とは限らねーってことだ)


 ゾンビ映画の例を持ち出すと、他にも大量のゾンビが居るかもしれない。

 例えば……。


「くそ……いらんこと考えてたからフラグでも立ったかな?」


 弘はペダルを漕ぎながら、街道の前方を睨み据えた。

 彼の視線の先には、十数体の人影がある。そしてそれらは、皆がヨタヨタと覚束ない足取りで歩いているのだ。

 一応ながら対象物解析をかけると、すべからくゾンビであるとの結果がでる。移動方向からすると、先ほどのゾンビのお仲間らしい。


 ……キキッ、ざざざっ。


 弘は、舌打ちしつつママチャリを止めた。


(沼のある森は……もう少し先か)


 現在、街道の両側は見晴らしの良い草原で、森らしきものは見えていない。

 ギルドで聞いた話では、森は徒歩2日ほどの距離にあるとのこと。自転車移動なら数時間もあれば到着するだろう。しかし、まだ見えてこない以上は、このまま進むしかない。


(見たところ草原の草は丈が低いぜ。ママチャリの速度に物を言わせて、ゾンビどもを迂回した方がいいかもな……)


 そう思いつつ草原に目をやるが「いや、待て!」と思いとどまった。

 自分は何のためにジュディスパーティーを抜けようとしているのか?

 召喚武具を駆使して、1人気ままに経験値稼ぎをするためではなかったか?

 ゾンビというのは動きが鈍い。そして十数体というのは、今の弘にとっては手頃な数と言える。

 運悪くモンスターに出くわしたのではない。

 運良く経験値稼ぎの機会に遭遇したのだ。


(なんと言ってもすでに死んでるし! こう言っちゃあなんだが、対人戦闘の訓練に……いいかも、だがなぁ)


 どうにも歯切れが悪い。

 解析上はゾンビであって、なんら遠慮する必要はないのだが、やはり人間の死体を斬るというのは気分が悪いものなのだ。


「けどよぉ! いつまでも、そんなこと言ってられねーぜ!」


 自分を奮い立たせるべく叫ぶと、その叫び声に反応したのか、はたまた生命エネルギーを感知したのかゾンビの数体が弘の方を向く。

 そのまま接近するように歩き出したのを見ると、弘は猛然とママチャリを発進させた。そして日本刀を召喚!


「来やがれ! 片っ端から叩っ斬ってやらぁ!」


 左手でハンドル操作、右手に白木拵えの日本刀。

 さながら騎兵突撃のように、弘はゾンビの中へ飛び込んでいくのだった。



◇◇◇◇



 翌日の朝。

 弘は、問題の沼へ到着している。

 いつものように現地到着が午前中となったが、これは例によって前日の夜を樹上泊で過ごすことで時間を合わせたのである。

 ただし、今回は単に時間調整のためだけでなく、体力回復も考慮しての樹上泊だった。

 なにしろ先日のゾンビ集団の戦いでは、そこかしこに傷を負っている。本命たる沼地の巨人に対しては万全の体調で挑みたかったのである。


「ふはぁ~……んん。もう朝か。それにしても森の中、それも木の上で吸うタバコは最高だったなぁ」


 枝に腰掛けた弘は、大きく伸びをしながらそんなことを言う。

 特殊召喚品目であるタバコは、MP50を消費する代わりに心身をリラックスさせ、体力回復や傷治療の効果があるのだ。

 昨晩は、これを使用して体力を回復させ、さらには睡眠を取ることでMPをも回復させたのである。

 弘は身体の各所をマッサージして痛むところがないかチェックすると、ツタなどに掴まりながら地面に降りた。


「さ~て……沼ってのは何処だろ~なぁ?」


 アイテム欄から鉈を取り出し、藪を切り開きながら進んでいく。所々に獣道があるので、都合良く進行ルートに活用させて貰った。


 ざっしゅ、バキ、どか!


 草木を鉈で払いながら更に先へ進んだところ、ぽっかりと広い空き地に出た。

 目の前には直径数十メートル程度の沼があり、よどんだ水面には、これまた汚い泡がいくつも浮いている。


「うっわ、クセぇ! どぶ川みてーな臭いだな、おい」


 ただし、その汚臭に混じって何処かで嗅いだような腐臭も漂っていることに弘は気づいた。


「おいおいおいおい。よしてくれよ。まだゾンビとか居るのか?」


 鉈をアイテム収納し、代わって日本刀を召喚する。

 両手で刀を持ち、油断なく周囲を見回していると……。


 ごぽ、ごぼぼぼぼぼぼっ!


 沼の水面で大量の気泡が発生し、ゾンビが十数体出現したのである。

 なんだ、街道で戦ったのと同じパターンじゃないか……などと思うなかれ。

 弘にとって大きな問題があったのだ。

 それは街道で遭遇したゾンビと比べた場合、目の前にいる連中がひたすら汚いということ。元々の沼が腐葉土か何かのせいでドブ同然だったのに加え、腐敗した死体に色々付着しているのだから臭さ倍増である。

 加えて言うなら鎧装着のゾンビが多いのだが、途轍もない悪臭の前では些細な問題だ。少なくとも、弘は悪臭の方を問題視している。


「ぐわわわ。くっせええええ! 畜生、くせえ! こんなことならジュディスを連れてくるんだった!」


 想像を絶する悪臭地獄に、とんでもないセリフを口走ってしまうが、ともかくゾンビを排除しないと巨人とやらを探すことができない。

 腹をくくった弘は、ズルだかヌチョだか聞きたくもない水音を立てて迫るゾンビを迎え撃とうとした。


 ……ごば! ぼごごごばごばばば……。


 そして発生する新たな気泡音。

 もはや嫌な予感しかしないが、返却答案用紙を見るかのようにチラ見した弘は……沼の中央に、討伐対象らしき巨人を発見していた。


第1話を大幅に書き直しました

連載に関しては今のところ隔日ペースです

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