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異世界から来た不良召喚術士  作者: 平位太郎
第5章 闘技場の都市へ!
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第六十九話 資金稼ぎ開始

 ディオスクのギルド支部は、見た目も中身もクロニウス支部と変わりがなかった。強いて言えば、1階酒場の客層がムサい男ばかりである。


(やっぱクロニウスみたいに、女の冒険者が多いのは珍しいのか?)


 先客達から視線を向けられつつ歩く弘は、目当ての依頼掲示板の前に立った。

 さて、ここで沢渡弘のディオスクにおける行動目標をまとめてみよう。

 まず第一に、ジュディス達に何か贈るための資金稼ぎだ。まあ、そこそこの品では難癖をつけられる恐れがあるので、ここは一つ頑張るべきだろう。そうして金が貯まった後だが、何を買うかも考えなければならない。 


(現金を袋に詰めて『おらよ。取っとけ』とかしたら、怒られるんだろうなぁ……)


 それにしても、パーティー離脱をするのに何か買って品物を渡すって変だよな……と今更ながらに弘は思う。なんでこんなことになったのだろうと思い起こせば……。


(……言い出したのは俺だっけ。勢い任せだったが、まあその、アレだ……言ってしまったものは仕方ないって奴だな)


 第二に、先の贈り物をしてジュディスパーティーから円満離脱を果たしたら、今度は経験値稼ぎをする。今がレベル21なので、せめて倍……いや先を睨んで3倍はレベルアップしておきたいところだ。


(マジに命掛かってるんだから、気合い入れないとなぁ。そうなると目標レベルは60か……)


 そこまでレベルアップできたら、さぞかし身体能力が上昇することだろう。現状でも、大蜘蛛を相手に力比べができるくらいなので、その3倍となると……。


(その辺の大型モンスターなんか、殴って倒せそうだぜ)


 実際はレベルアップごとに、次のレベルアップまでの必要経験値が増えるようなので、そうそう上手くはいかないだろう。3倍はいわゆる努力目標としておくべきだと、弘は結論づけた。


(資金稼ぎの間でも、そこそこレベルが上がってくれるといいんだがな……)


 ともあれ、ギルドで依頼受注しなければならない。

 報酬額だけ見ながら依頼掲示板をチェックしてみたところ、『東の沼地で出没する、正体不明の巨人を討伐して欲しい 銀貨30枚 ディオスク国事務所 総務課』という依頼に目がとまった。


「依頼主は国かぁ? 報酬が銀貨30枚……ねえ」


 前に単独受注したのがオーク討伐で、報酬は銀貨10枚だったから実に3倍である。美味しい依頼だが、それだけに危険な依頼なのだろう。

 しばし考えた後、弘は依頼メモを引きはがした。


「ともかくやってみるさ」


 メモには『依頼受付場所はギルド支部』と書いてあるため、そのまま2階の受付へと向かう。時間としては遅い方なので、受付時間終了の可能性を考えたが、普通に受付嬢が居たのでカウンター越しに話しかけてみるのだった。



◇◇◇◇



 その晩の弘はギルド泊をし、翌日の午前中に色々と買い出しをしている。

 買い込んだ物は、着替えの追加に食料。そして水だ。

 ここまでの旅で何となく体感できたのだが、アイテム欄に収納している間、ナマモノは腐らないし、傷みもしないらしい。


(どういう理屈かは知らんけどな)


 ともかく、持ち歩く食料が保存食でなくとも良いし、大量の水を持ち歩いても傷んだりしないのだ。

 そこで購入したのが普通は日持ちのしない白パンや生肉、野菜。水などは樽を三つばかり購入して、真水を詰めておいた。

 これなら保存食よりは美味しく腹を膨らませるし、水に困ることもない。

 さて、目的地は東の沼地だったが、それは街道を外れた森の中にあるとのことだ。

 まずは街道をテクテク東進し、町外れにまで来たところで弘はママチャリを召喚している。


「それにしても受付嬢の姉ちゃんに、あそこまで心配されるとはなぁ」


 聞けば、これまでに二組の冒険者が依頼を受けて失敗しているらしい。両パーティーとも全滅したそうだ。それを聞いた後で国事務所にも顔を出したが、大まかな目撃情報以外、大した情報を得られなかった。

 そんなにヤバい依頼なのか? と思わず依頼メモを見返したが、書かれた報酬額は実に魅力的だったので、そのまま依頼受注したのである。

 ちなみに、今回の依頼は国から出たものなので、仕事を終えたらディオスクへ戻り、役場の人間を連れて現地検査をする。そうして派遣証に検査サインを貰えたら、そこでようやく報酬が貰えるようになるのだ。

 つまり、弘は最低でも現地とディオスクを二往復しなければならない。

 実に面倒くさいが、その分も報酬に含まれると言われては納得するしかなかった。


「まあ、やるしかないか……報酬、銀貨30枚だもんな」


 まだ貰ってもいない報酬額にニヤニヤしながら、弘はペダルをこぎ出した。今のところ街道を移動してるし、急な上り坂もないので自転車移動はかなり快適と言って良い。

 また、他に仲間もいないので、背負い袋の他、盾や剣はすべてアイテム欄に収納していた。こうすると動きやすいし身軽だしで、それがまた大変よろしい。

 そうやって鼻歌交じり(ただし、路面の凹凸は多いので、ガクガク揺れている)に自転車を走らせていると、前方に人影が見えてきた。


(んだよ。気分よく走ってるってのに……)


 しかたなく降車してママチャリを消すと、弘はバスタードソードだけ出して腰に吊っている。丸腰で街道をうろついていたら、怪しまれると思ったからだ。


(早く森とかに入りたいねぇ。この1人修行中は、召喚武具をガンガン使っていきたいからな)


 そう、特に日本刀の切れ味は早く試してみたい。以前に模造刀で試し切りをしたが、印象としては『刃渡りの長い細身の鉈』でしかなかった。なにしろ薪を立てて斬りつけても、ガツ! という音と共に薪に食い込み、そこで刃が止まるのだ。


(いや、レベルアップして『力』が上がってるから、強引に断ち割れたけどさぁ。)

 

 それは何と言うか、弘の思い描く日本刀のイメージではないのだ。もっとも、達人でもないくせに刀で薪割りしようという考えがおかしいのだが。

 ともかく召喚品『模造刀』は、そこそこのリーチはあれど、バスタードソードより切れ味で劣って、鉈よりも威力がない。


(日本刀にランクアップするまでの過渡期的召喚品……って感じだったな)


 そんなわけで、元暴走族構成員としては模造刀に思い入れがあるのだが、こと実用性となると敢えて召喚して使おうとは思わないのである。 

 と、そんなことを考えているうちに、前方の相手はかなり近くまで来ていた。酒でも入っているのか、かなりヨタヨタしている。


(男……だよな? あんなよろけてて大丈夫かよ? それに朝っぱらから街道を1人で出歩くとか。命知らずにも程があるぜ。って、俺が言うな~ってか?)


 自分にツッコミを入れつつ、再度相手の様子を見た弘は、思わず目を剥いた。

 相手の見た目が尋常ではないのだ。

 ばさばさの頭髪に、土気色を通り越して緑がかった肌。衣服はボロボロで、露出している体表のそこかしこが損傷している。

 最大の問題点は顔だ。鼻が取れて無くなっており、二つの鼻腔が見え……グロ表現で恐縮だが、白濁した両眼にいたっては変な液体が涙のように流出している。

 ついでに言うと、今更ながら弘は腐臭を感じていた。 


「うげ、気色わるっ。ゾンビって奴か?」


 そう、漫画や映画で見かけるゾンビにそっくりなのだ。 

 見た感じ動きは鈍そうで、普通に歩いているだけでも引き離せそうだが……。


「あ、こっち見やがった……」


 変に傾いでいたゾンビの頭部が、ぐりんと弘の方を向く。

 あの様子では視力は喪失しているだろうから、音か臭いで弘を認識しているのだろう。


(耳や鼻だって機能してるか怪しいもんだが……。アレだ、俺の生命エネルギーを感知してるって奴だ。なんかの漫画で見た気がするわ。もう、それでいいや)


 実際は、もっと違った理由があって弘を認識しているのかも知れない。だが、重要なことは、目も耳も鼻も満足に機能しているように見えないのに、弘を見た……という事実である。

 さて、ここで対象物解析のことを思い出したので、さっそく弘は解析してみた。



<ゾンビ>

・不死(アンデッド)系モンスター

・噛みつきや引っ掻きで、生物に不死呪詛を及ぼします。

・生命を『ニオイ』として感知します。

・不死呪詛を受けた者は、抵抗に失敗すると数日でアンデッド化します。

・弱点は火。



 典型的な、映画ないしゲーム設定のゾンビである。

 注目すべき点は、不死呪詛のあたり。どうやらゾンビ映画のように、噛まれた者が次々にゾンビとなって数を増やしていくタイプらしい。


(見た感じ1体しか居ないが……他にも居ると思った方が良さそうだな。仲間を呼ぶ能力は無いみたいだけど、映画なんかだとワラワラ群れてたっけなぁ)


 ともあれ、この1体は倒しておいた方が良いだろう。歩いて引き離せるとは言っても、後々に追いついてこられても困るからだ。


(どうやって追いつくのか知らんけど、映画なんかだと不思議とついてくるんだよな~)


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