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異世界から来た不良召喚術士  作者: 平位太郎
第3章 パーティーメンバー、俺だけ!
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第三十三話 オークの洞窟(4)

 ザウッ!

 ダイアウルフが飛びかかってくる。

 しかし、この動きは弘自身が驚くほど、完全に読み取れていた。スローモーションに見える……とまでいかないが妙に遅く、その攻撃軌道が線を引いたように認知できていたのだ。


(木の上でダイアウルフと戦ったときは、こんな風に見えてなかったぞ!?)


 これがレベルアップをすると言うことなのか?

 たかが1レベル違うだけで大した違いであるが、これはレベルアップの前と後……それも短い間隔で同じモンスターと戦う機会があったからこそ、認識できた差なのだろう。

 ともかく、この飛びかかってきたダイアウルフを、弘は一振りで切り伏せた。


「ギャン!」


 横飛びにステップしつつ、首筋から脇腹にいたるラインで斬りつけたのだが、これが致命傷となったらしい。途中、骨に剣が当たった気がしたが難なく切り裂けた。


(よし!)


 自分は強くなっている! このままオークメイ……。

 ……ドスッ!……。


「い、いってええええええっ!?」 


 左の肩口に何かが突き刺さり弘は絶叫した。

 短いが矢のような発光体が突き刺さっており、それが激痛の源となっている。

 振り返ると、オークメイジがドクロのはまった杖を振りかざし、何か唱えているところだった。


(魔法で攻撃されたっ!?)


 ブアッと全身に汗が噴き出す。

 これまでの戦闘行動で大量に汗をかいていたのだが、これは全く別種の汗だ。


「やべぇ!」


 見ればオークメイジの脇に居たオオトッケイヤモリが、ドスドスと移動を開始している。

 おおかたオークメイジの命令を受けての行動だろうが、このままでは開けた場所で大動物と戦うことに……。


「ちっ!」


 弘は踵を返すと、元来たコースを逆走しだした。

 目指すは自分が潜んでいた藪。しかし背後では、ヤモリの重い足音が聞こえており、その足音の間隔は途轍もなく短い。いや、削岩機の音のようにすら聞こえた。


「ざけんな! 狼の時と同じ展開じゃねーか!」


 まったく同じというわけではない。今回は木に登る余裕がないのだ。つまりは、ダイアウルフと戦ったときよりも追い込まれているのである。


「うおおおお!」


 藪まで到達した弘は飛び込んで藪を突っ切り、ごろりと転がってから立ち上がった。

 肩を確認すると矢のような発光体は消えていたが、それなりに出血している。痛い……が、戦えない程の痛みではない。

 その魔法攻撃の追撃がなかったのは、呪文詠唱が終わる前に藪に飛び込んだおかげのようだ。どうやら標的を視認できないと、命中が期待できない類の呪文らしい。


(ヤモリは?)


 ずばあああ!

 オオトッケイヤモリが藪を突き破って姿を現す。

 どうやって位置を知ったものか、真っ直ぐに弘目がけて噛みつき攻撃をしてきた。


「うひいいい!?」 


 死に物狂いで飛び退き尻餅をつくと、先程まで弘が居た場所でバクン! という音がする。空振りしたヤモリは数歩分を進んでから動きを止め、獲物……弘を探しているようだ。


(こ、怖ぇえ! 怖ぇえよ、こいつ!)


 あまりの怪物ぶりに歯が鳴ってとまらない。

 一瞬、逃げることを考えた弘であったが、その想いを噛み潰すように奥歯を噛みしめた。


(……いや、ビビるな! チャンスだ!)


 バスタードソードを杖代わりに立ち上がるや、弘は駆け出す。

 オオトッケイヤモリの頭部は今、向こう側だ。つまり弘に対して背を向けているのだ。このまま右の脇腹位置まで移動すれば、柔らかい部分を攻撃できる。


(こうなったら、こいつを先に倒して……ぬっ!?)


 弘は大きく跳躍した。元の世界に居た頃より、ずっと高く跳べている。

 そして、そのすぐ下を物凄い風切り音と共にヤモリの尾が通過していった。オオトッケイヤモリの尾振り攻撃を、弘が跳んでかわしたのだ。

 この手の攻撃があることは想定していたが、だからと言って、普通は今のタイミングでかわせるものではない。


(今、何か感じて……だああ、それより攻撃だ!)


 右脇腹部に到達した弘は、バスタードソードを腰だめに構えると身体ごとぶつかった。何とも言えない肉を裂く音が聞こえ、剣は思ったより簡単に埋め込まれていく。

 しかし、それでもヤモリが死んでくれない。


「キャアアアアアア! シャアアアアアアア!」


 地震でも発生したかと思うような地響きを立てながら、ヤモリは暴れ狂った。

 右脇腹へ突き込んだ剣にしがみつく弘は、必死で耐えるほかない。手を離せば勢いをつけて放り出されるからだ。

 その最中……事前に考えていたこと、そしてすっかり忘れていたことを弘は思い出す。

 それは……。


「め、メリケン!」


 叫ぶと同時に鉄メリケンサックが拳に装着される。

 これにより剣が握りづらくなったので、危うく振り落とされそうになったが、すぐさま弘は叫んでいた。


「中から焼けやがれ! トカゲ野郎!」


 バチィ! バリバリバリバリ!

 火花……いや、蒼い閃光が昼なお暗い森の中を染めていく。


「ピギャアアアアアアアアアアア!」


 鼓膜を振るわす大絶叫。

 オオトッケイヤモリは天に向かって大きく伸び上がり、地響きと共に倒れ伏した。

 その衝撃で弘は引きはがされ、放り出されている。これによる追加ダメージは無かったため、すぐに躰を起こし……いや、立つことができず地面へ尻を落としていた。


「ぜえはあ! し、死ぬかと思った……マジで死ぬかと……」


 単なる感想ではない。ヤモリが倒れる際、放り出される位置が違ってたら下敷きにされるところだったのである。運良くそうはならなかったが、刺さったままのバスタードソードが下敷きになってしまった。


「うあ、このバカ……やりやがったな……」


 買って何日もたってないというのに、お高い剣がパアである。


「銀貨で何枚だったっけ? 10枚くらいだったかな? あ~……くそ、引き抜けねーかな?」


 横たわるオオトッケイヤモリの腹。それと地面の間から柄だけが見えている。

 駄目元で手を伸ばして掴み、力一杯引くと……意外やアッサリ引き抜けた。


「って、柄だけかよ!?」


 厳密には鍔の部分も残っているが、剣身部分は完全に失われていた。

 どうやら下敷きになった際、根元から折れてしまったらしい。


「ああ、もったいねぇ……この損失はメイジ野郎を殺って取り返すしかないな。何か金目のモノを持ってるといいんだけどなぁ」


 予備武器として購入していた鉈をアイテム欄から取り出し、弘はオークの洞窟へ戻っていくのだった。




 次なる目標となったオークメイジは、割とアッサリ倒せている。

 元々背後から矢を受けて弱っており、洞窟前でヤモリの帰還を待っているうちに体力が尽きたのだろう。

 山肌に肩寄せる状態で座り込んでいるところを、弘は鉈で殴りつけたのである。

 こうして戦闘が終了したのだが、オークメイジが持っていた金目のモノは、良くてドクロの付いた杖ぐらいだった。


「しけてんなぁ……。うっ……肩が痛てぇ」


 ガッカリした途端、肩の痛みを思い出した広は顔をしかめる。

 なにやら光る矢らしきものが刺さったはずだが……攻撃を受けて暫くした頃には消えていた。


「魔法の矢……マジックミサイルってやつか?」


 弘のゲーム知識では、いったん発動すると絶対に命中する『魔法の矢』だったような……。


(え~と何だっけ? 完全な視認困難じゃない限りは命中するんだったか? 対応策は耐えるしかなくて、そうだ! 特定部位を狙い撃ちにできないとかなんとか……ええい忘れた!)


 テーブルトークRPGの知識だったが、中学生の頃にはまっていただけなので、今となっては記憶が曖昧なのだ。

 肝心の傷口はと言うと、そこそこ深い刺し傷のようながあったが、これはブルターク商店で貰った傷薬を塗ることで回復させた。 

 薬剤師の丸薬(何種類かの薬草を粉末にし、練って固めたもの。水でふやけさせ塗薬として使う)に、僧侶の治療法術を簡易付与したもので、見る間に傷が治っていく様は何と言うか気持ちが悪い。


「おう、すげぇ効き目だ。店主さんに感謝だな。多少痛い感覚があるけど……まあ、大丈夫か」


 ちなみに傷治療用の丸薬は、本来なら3個一組で銀貨1枚。けっこうお高いのだ。

 さて、今のオークメイジを倒したことで、弘はレベルが15に上昇している。



名前:沢渡 弘

レベル:14→15

職業 :不良冒険者

力:53→57

知力:18→21

賢明度:41→44

素早さ:48→51

耐久力:56→58

魅力:24→25

MP:60→64

  

・模造刀

攻撃力+13 

消費MP9

※追加項目のみ表示しています。



「おっしゃあ! ついに来た! にほ……ん刀……へ?」


 念願の日本刀が召喚武具として登場! と思いきや、表示されているのは模造刀である。

 唖然としたまま、アイテム解説を開くと次のように記載されていた。



<模造刀>


 鋼板にグラインダー研磨して刃を付けたもの。

 鍔は無く、柄にテープを巻いて握りやすくしている。 

 切れ味はそこそこ。



「……模造刀とか、昔の不良マンガかよ? なんかガッカリだ……」


 とはいえ、今のようにメイン武器……バスタードソードが壊れたときには役立つだろう。 

 試しに召喚してみると、確かに金属板を日本刀っぽく研磨しており、柄にはテープが巻き付けてあった。


「でもま、日本刀っぽくていいよな……」


 例え模造刀であってもニヤけてしまう。

 日本男子なら、やはり日本刀を持つと嬉しくなるものなのだ。ちなみに木刀は刀系統ということで、模造刀の下位としてコマンド収納されたらしい。

 そして、ここでプァンプァンプァン! という、レベル10になった時にも聞いた音が聞こえてきた。


「こいつは……特別告知か!」


 一定レベルに達すると、このように警報音が鳴って何かしらの能力が開放されるのだ。

 前回は、対象物解析であったが、今回はいったい何の能力が開放されるのか?

 ステータス画面上を流れるポップ体の『特別告知』が消えると、別ウィンドウが開いて解説文が表示された。


 <能力開放>

 『召喚品合成』

・関連性のある召喚道具一式を合成できます。

・先に能力発動してから、合成品目を決定してください。

・一度合成した後は、合成状態での召喚が可能となります。

・合成召喚時は、消費MPが上昇する場合があるので注意すること。

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