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異世界から来た不良召喚術士  作者: 平位太郎
第3章 パーティーメンバー、俺だけ!
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第二十六話 単独行動の良し悪し

 ギルド前の通りでカレン達を見送った弘は、さっそく依頼者の元へ……行かなかった。

 では何処へ行ったのかと言うと、今は亡きゴメス山賊団の洞窟である。

 依頼主のサバ村はクロニウスとは川を挟んだ南側、山地の中にあり、その近くに山賊団の洞窟があるのだ。

 そして目的地とした理由であるが……実はゴメス達の墓参りである。

 カレンから聞いた話では、討伐戦があった近辺……つまりは洞窟の近くにまとめて埋められてるそうだが……。


(線香とかはないけど、手ぇぐらいは合わせておきたいもんなぁ……)


 さらにカレン達と別れた後、冒険者ギルド・クロニウス支部の酒場で酒を調達した。所持金の関係上、安酒ではあるが、皆の眠る場所にお供えしたかったのだ。

 徒歩だとサバ村まで2日ほどの距離らしいが、洞窟に到達するには3~4日といったところか。保存食や水筒、その他必要物は購入済みなので、移動するだけなら問題はないはずだ。

 依頼のオーク退治は……まあ、墓参りの後でもかまわないだろう。


「さて……行くとしますか」


 こうして弘は、意気揚々と昼前のクロニウスを出発する。

 この世界に来た当初は、ゴブリンに追われて山中を逃げ惑ったものだが、装備を調えた上で行動していると安心感が段違いだ。


「だっはっはっ♪ あれだな、小学校の時の遠足みてーだな♪」


 昔の遠足と違うのは、今の弘が1人で行動していること。

 そして、都市外に出るとモンスターの類との遭遇率が上昇することだった。

 なので、浮かれ気分の弘が最初にモンスターの襲撃を受けたのは、クロニウスを出てから半時間ほど経過した頃である。

 周囲に立木が増え、離れた位置には森が見えだしたところでモンスターが登場したのだ。

 それは全高50センチほどのアブ数匹と、それらに付きまとわれていたらしい牛のようなモンスターだった。

 最初に見たとき、アブと牛は動物バラエティー番組で見られる……羽虫がまとわりつき、それを牛が尻尾で追い払うような間柄に見えた。しかし、視界に弘が入るや双方クルリと向きを変えて、襲いかかってきたのである。


「アブはともかく牛もかよ!? こっちの世界の牛って肉食なのか!?」


 それとも単なるとばっちりなのか? 

 だが重要なことは、自分が数種類複数のモンスターに襲われているという事実だ。

 背負い袋に手を伸ばして盾を掴み、無理矢理取り付けた感があるグリップを握り締めると、腰に吊っていたバスタードソードの鞘を払う。

 嫌だなと思ったのは相手の数が多いこと。

 クロニウスに向かう途中で遭遇した野盗の方が多かったが、あのときはカレンとシルビアが居た。

 今は、弘1人だけである。


(まずはアブ4匹か! カレン達が居ないだけで、数の差の圧力が半端ねーな!)


 森までは遠い。

 以前、ゴブリンと戦ったように、立木等地形を利用して戦う手は使えなかった。

 ここで戦うしかないのだ。

 飛んでいる分、牛よりも早いアブが迫り来る中で、弘は念じるように自分に言い聞かせている。


(数にビビんなよ? よそのチームの奴がたむろってるところへ、1人で殴り込んだことがあったけど、アレと同じだ! 同じなんだ!)


 バスタードソードを振り上げ、突進してきたアブに対して振り下ろす。

 これをアブにかわされたが、弘は強引に追従して剣を振った。

 正しく刃は当たらなかったものの、頭部右側を強打されてアブがバランスを崩す。


「よっしゃあ!」


 突く……と言うよりも、あてがった切っ先を押し込むようにすると、剣はアブの頭部と胴体の隙間に潜り込んだ。


「ギイイイイ!」


 金属片を擦り合わせるような悲鳴をあげてアブが落下する。

 やった! そう思うまもなく、別のアブが襲いかかってきた。今度は2匹同時だ。


「うお、うわあああ!」


 半ばパニック状態で盾を突きだし、最初の1匹を食い止める(正確には取り付かせる)と、弘は右側方から突っ込んできたアブに向けて剣を振りつける。

 表現として『斬りつける』でないのは、この時も刃を向けられず、剣身の腹で殴る形になったからだ。これは外れたが、そのアブが距離を取るように離れたので、弘は盾に取り付いたアブを何とかすることにした。


「クソが! 買ったばかりの盾ぇ囓ってんじゃねー!」


 正しくは囓るのではなく、口吻を突き刺してきているのだ。そんな豆知識を考える余裕もなく、弘は左手に持った盾をアブごと地面に叩きつけた。


「ピギュアアアア!」


 金切り声を発するアブに、剣の切っ先を押し込む。

 倒しきったか確認することなどできない。残る2匹のアブ(最後の1匹と、先程追い払った1匹)が、またもや2匹同時に飛びかかってきたのだ。


「しつけーんだよ! 寄るなクソアブ!」


 とっさに盾を捨てると、なぎ払うように剣を振り抜く。

 今度は命中した。しかも2匹同時だ。

 相手側がかなり接近したタイミングであったからか、双方共に頭部を横割りにされる形で剣が通り、そのまま落下する。 


「ハアハアッハア! 牛、牛はっ!?」


「グモオオオオオオオオオ!」


「うひょわああああああ!」


 息切れした弘に、遅れて到着した牛が突進してきた。これを横っ飛びにかわした弘であったが、捨て置いた盾から離れてしまう。  


「ああ、クソ! 盾が! 剣だけでやるしかねーのか! ……ん?」


「モオ、ウモオオオオ! ……モオ……」


 鳴き声が沈静化したかと思うと、牛は向きを変えて去っていった。そして、そのまま森に入って行ったのを確認した弘は、大きく息を吐いてへたり込む。


「終わった? 助かった……のか?」


 遭遇したモンスターのうち、アブ4匹撃破。牛は途中離脱。

 弘自身は無傷。

 これが冒険者・沢渡 弘、初実戦の結果であった。




 戦闘後。

 回収した盾を見ると、外周部に幾つもの傷が付いていた。

 外面などはアブの口吻による突き込み傷があり、円錐状に似た形で陥没している。


「オマケになんか表面が溶けてるし。あ~あ、おニューの盾がよぉ~……」


 見回すとアブの死骸が4匹分転がっていた。しかし、何かのゲームのように部位回収する気は起こらない。とにかく疲れ果てていたし、アブから何を取ったら売れるかといったことを考える心境ではなかったのである。

 どっかと腰を下ろした弘は暫くボウッとしていたが、ふとレベルアップについて思い当たった。


「そうだ、今の戦闘でレベルアップしてたよな?」


 死にものぐるいで戦っていたのだが、微かにファンファーレが聞こえていた気がする。


名前:沢渡 弘

レベル:9→10

職業 :不良冒険者

力:38→40

知力:14→16

賢明度:29→31

素早さ:33→36

耐久力:39→43

魅力:20→21

MP:42→46

  

・鉄トゲのメリケンサック 攻撃力+6 消費MP6

・鉄の警棒    攻撃力+5 消費MP6

・ヒノキの木刀 攻撃力+5 消費MP5

・自転車のフレーム 攻撃力+0 消費MP2


 自転車シリーズにフレームが加わっており、召喚欄に木刀が出現していた。

 職業表示が不良冒険者になっているあたりが気になったものの、召喚欄に追加された木刀を見た瞬間、弘は右手でグッとガッツポーズをした。

 木刀。それはヤンキーにとっては定番の喧嘩アイテムなのだ。

 暴走族時代、弘が最も愛用していたのも木刀だったのである。


「攻撃力が鉄の警棒と同じなのに、MP消費は1低いのか。やっぱリーチが物言ってんだな」


 あと、気になるというかガッカリしたのが自転車のフレーム。

 どう見てもママチャリのフレームなのだ。

 弘は暴走族時代の特攻服を着ながら、ママチャリに跨がる自分を想像してゲッソリする。


「ないない、ありえんわ~……んお?」


 プァンプァンプァン! 

 突然、ラッパのような警報音が聞こえてきた。どうやらステータス画面が音を発しているようなのだが……。


「おおっ!?」


 画面外、いやステータス画面の右側から、画面フレームを無視してメッセージが流れてくる。

 ……特別告知……。

 ポップ系の大きなフォントは、見るからに通常表示とは違う雰囲気を醸し出していた。


(おおお……何だかわからんが、これはいかにも特別っぽいな)


 その文字は何度か流れてきていたが、やがて警報音が停止すると同時に出現しなくなり、見たことのない別ウィンドウが開く。


 <能力開放>

 『対象物解析1』

・対象物の名称を知ることができ、ある程度の解説を閲覧できます。

・戦闘中に解説閲覧はできません。


「こいつはイイぜ! 見たままから適当な名前で呼ばなくていいし、物知りな誰かが居なくても解説を読めばいいってことか」


 戦闘前に相手情報を知るには先に発見する必要があるのだが、なぁに小さな問題だぜ……と弘は思っている。

 気になる点は、能力名に数値表示されていること。

 これは能力のレベル表示だろうか? 

 だとしたら、能力自体パワーアップしていくものなのだろう。


「さすがは異世界転移だぜ。こういう都合のいい能力を、俺は待ってたんだ!」


 こっちの世界に転移してからと言うもの、苦労も多かったが、こういう事があると何だか救われたような気になる。

 試しに倒したアブを見てみると、専用ウィンドウが開いて解説文が表示された。


<巨大なウシアブ>

・肉食性。昼夜行性。

・攻撃技能(体当たり、口吻による刺突、口吻による消化液噴射)

・売却可能部位(羽根)

 

「日本名? 英語だとヒュージなんたらって奴か? それよか消化液噴射とかマジかよ? さっき盾に取り付かれたとき、実は危なかったのか……」


 今更ながら冷や汗が出てくる。

 盾の表面が溶けていたのだから、やはり一発は消化液噴射をくらったのだろう。 

(ありがとよ~、盾~。スゲェ助かったぜ)


 値段以上の性能を見せてくれた盾に感謝する弘であった。

 あとはモンスター狩りゲームのように、ウシアブの死体から部位回収できるようだが……。


「そういう気分じゃねーんだが、せっかくだ。一応は回収しておくか……」


 どっこらせと立ち上がり、作業用に購入した短刀で羽根を切り取っていく。

 巨大なウシアブの羽根を手に入れた!

 あまり嬉しくないが、取りあえずアイテム欄に収納しておく。

 その後、しばらく休憩してから弘は移動を再開した。

 目指すは当初の目的地、サバ村である。


「たりめーだけど、やっぱ遠足じゃねーよな~。こんなんで何体いるかわからねーオークと戦うのか……誰か酒場で誘うんだったかなぁ」


 ブチブチ言いながら、それでも弘は1人で歩き続けるのだった。


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