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異世界から来た不良召喚術士  作者: 平位太郎
第2章 再出発、冒険者にジョブチェンジ!
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第二十五話 タバコください

 そして弘は重大な問題点に気がついた。


(なんだこりゃ? よく見たら、ステータス画面に武器防具の装備欄がないぞ!?)


 そう、基本能力値は表示されるし、アイテム欄も展開できる。召喚画面も開けるというのに、なぜか武器防具の装備欄がないのである。


(いや、待て……)


 一度、アイテム収納しないと認識されないのではないか?

 そう考えた、弘は店主に背を向けてバスタードソードをアイテム収納してみたが……。


「……駄目じゃねぇか……」


 アイテム欄には、確かにバスタードソードが表示されている。

 だが、攻撃力といった数値が表示されないのだ。


(ひょっとして召喚武具だけが数値表示されるのか?)


 拍子抜けしたと言うかガッカリである。

 この仕様だと、将来的に物凄い性能の武器を手に入れることがあっても、性能数値を見ることができないのだ。


(なにかの嫌がらせかよ? ……こうなったら召喚能力を腰据えて鍛えた方がいいのかなぁ。いや、装備できない制限とかはないみたいだし、この世界の『有りモノ』武具を使うってのは間違っちゃいないぜ!)


 召喚武具はMP消費制だし、使用するにも制限時間がある。

 そこをカバーするためになら、例え数値表示がされなくとも普通の武具は持つべきだ。

 そう納得した弘は店主を振り返る。あと一つだけ、重要なことを聞いておきたかったのである。


「店主さん? 好奇心からの質問なんだけどよ? ここって……タバコはあるのかい?」


 手持ちのタバコは、山賊団で拾われる前に吸い尽くしており、今日まで弘は禁煙状態だったのだ。せっかく人里の、それも物品店に入ったのだし、ここで調達できるならしておきたい。ファンタジーRPGな世界だから、フィルター付きの紙巻きタバコは期待できないだろうが、なぁにパイプと刻みタバコだって吸えればオッケーだ。

 しかし、店主は首を横に振る。


「無いな。タバコってのはアレだろ? 貴族様達が、自分とこの領地で栽培してるって奴。ありゃ趣味でやってる上に、貴族の嗜みだ……とか言って民間に流通させない法律とか作りやがったから、まず入手は無理だ。諦めるんだな」


 更に店主からは「知らんようだから言っておくが、御禁制品って奴だぞ? ヤクザ者が流してる闇タバコってのもあるが……見つかったらコレだ」と、自分の首を絞めるジェスチャー付きで、ありがたいアドバイスを頂戴した。


「タバコ、そんなレアアイテムになってるのか……。しかも、吸うだけで縛り首とかマジかよ。貴族め……許せね~な」


「はうあう。すみません……」


 何やらカレンが謝っているが、何か関係あるのだろうか?

 弘は貴族について文句を言っただけなのだが……。


(貴族? あ、あ~……なるほど)


 シルビアを見ると、苦虫を噛み潰したような顔をしている。それでも美人顔が損なわれていないのだから、シルビアさんマジ美人! であった。

 そういった彼女の反応を見るに、弘は自分の推測が正しいことを確信する。


(こりゃ当たりだな。カレンの家は貴族様だ)


 昨晩、酒の入ったシルビアが「カレンは良家の子女だ」と言ったとき、弘は真っ先に貴族である可能性を考えた。

 なぜか? それは、この世界がファンタジーRPGを彷彿とさせる世界だからだ。

 大商人の娘という線もあったが、弘は単なるゲーム的イメージから『貴族』を連想していたのである。


(だって、ファンタジーRPGで『良家の子女』とか言ったら、普通は貴族だろ?)


 普通かどうかはさておき、ある種の偏見に基づいてカレンの秘密に迫った弘であったが、それを特に話題にしようとは思わなかった。カレン達が『なるべく秘密』にしようとしているし、他人の身の上話で得意げな顔をする趣味もなかったからだ。


「しかしタバコが……。無念だぜ……異世界、来るんじゃなかったな」


(来たくて来たわけじゃね~けどさぁ……)


 肩を落とした弘は、カレン達に買物の終了を告げるのだった。

 ちなみに所持金は銀貨8枚、銅貨40枚にまで減っている。



 ブルターク商店を出る際、店主が弘を呼び止めて小袋を放り投げてくれた。中を見ると、薬草や粉末を練って作った……ような球体が3つ入っている。なぜ薬草と思ったかと言うと……。


(アレだ、正○丸みてーな臭いがするんだよな……)


「あのう? これは?」


「傷薬だ。初見の冒険者で見込みのありそうな奴には、何かやることにしている。使う時は水でふやかして塗ればいい」


 中々に、いいサービスである。しかし、言い放ってからプイと横を向く仕草が何となく可愛い。

 今後も何かと覗きに来るか……と思いつつ、弘は店主に礼を言った。

 そうして店を後にした弘は、次なるレクチャーをカレンから受けている。


「一度、ギルドに戻りましょう。ギルドの利用方法とか、お話ししますね?」


 ギルドは各町や村に概ね一箇所存在し、その規模は町村の規模に比例する。ちなみに小規模すぎる村や集落には無いことが多いらしい。このクロニウス支部に関して言えば、そこそこ立派なレベルだとのことだ。

 たいがいは村長の自宅や敷地、町役場の一室を間借りしているが、大きな町だと単独の建屋として存在する。この場合、酒場と宿の機能を兼ね備えることが多く、酒場掲示板には依頼が貼り出されるのだ。


「この中から、これだと思う依頼のメモを取って、ギルドの受付に持って行くんです。で、受け付けたギルドは簡易な精霊通信で受注情報を流し、重複受注の減少に努める……と」


 カレンがクロニウス支部の掲示板前で説明してくれるのを聞き、弘は下顎に手をやった。


「なるほど。……ゲームと似た感じで安心したぜ……」


「はい? ゲーム?」


 カレンが小首を傾げるので「いやあ、何でもないぜ」と弘が誤魔化し、そのまま説明が続行される。 


「え、え~と……重要なことは、自分の能力的に完遂できそうな依頼か、そうでないかを見極めることです。あと、依頼の中には期限付きのものがあります。履行期限を超過すると、違約金を支払うことになりますから気をつけてください」


「履行期限が過ぎて、違約金を支払わない場合は?」


 無論、可能な限り依頼完遂するつもりだが、どうしても無理なことはあるだろう。

 その上で違約金支払いを滞らせたらどうなるのか?

 元の世界で駐車違反の反則金を支払わないでいたら、自宅に警察関係者がなだれ込んできて、そのまま逮捕されたという話を聞いたことがある。

 こっちの世界は元の世界よりも『厳しいこと』が多いが、果たしてどうなるか……。


「その場合は、ギルドから依頼を受けた冒険者が追いかけてきて捕縛。冒険者登録を取り消された上で、違約金に罰金を上乗せした分、強制労働を課せられるそうですが……」


 詳しくはギルドの受付で聞いて欲しいとカレンは言うが、そんなもの今ここで聞いただけで充分である。

 付け加えると、単に依頼失敗の場合でも違約金が発生するそうだ。ただし、本人死亡の状態で失敗したら、違約金はギルドが立て替えてくれるとのこと。


「そうなるとギルドの信用は低下しますから。ギルドの登録冒険者達から『あの愚図が、迷惑な死に方しやがって』と死後に罵られることが多いようですね」


 最後のはシルビアによる補足説明だが、これを聞いて弘は「死んだ後でも文句言われるのか……」と呟いている。


(命を大事に、受けた依頼は失敗しない……だな)


 弘は依頼掲示板に目を向ける。確かに様々な依頼があった。


(農作業の手伝いに……おお~、ドラゴン討伐とかあるぜ。マジかよ?)


 手始めに農作業依頼を考えたが、3日働いて報酬が銅貨35枚というのは少ないように思う。

 程度の低い食堂にて一番安い料理を頼み、それで1食あたり銅貨1~2枚。冒険者の当座の生活資金としては悪くないのだが……。


(でもギリギリの生活だろ? 宿代とか考えたら、そんなに割の良い報酬でもないな……)


 弘の感覚としては1回仕事をしたら半月以上、できれば一ヶ月ぐらいは持たせたいのだ。そのためには、やはり報酬は幾ら幾らぐらいが良くて……と高望みが始まってしまう。さらには、もう少し報酬があってもいいな……など。

 ついさっき、銅貨換算で数百枚分もの買い物をしたばかりなので、ちょっとばかり色気が出てしまうのであった。

 シルビアあたりが聞いたら「依頼1回で一ヶ月? なんですか! その世の中を舐めた考えは!」と激昂されること間違いなしだが、日本人・沢渡弘はバイト感覚で依頼を選別していく。

 これ駄目、あれ駄目、それも報酬が安い……と切り捨てていくうちに、弘はとある依頼メモを凝視した。


「『オーク討伐……近くの森でオークが何体か徘徊しており、ときおり家畜が襲われます。報酬は銀貨10枚を考えていますので退治してください 依頼人:サバ村村長』ねぇ……」


 オークというのは、RPGでよく見かける序盤の雑魚モンスター。ブタの頭を持った人型モンスターだろうか?

 カレンに聞いたところ、RPG関連の話には首を傾げていたものの、それで正解らしい。

 目撃される際の武装程度は、よくて今の弘程度……という説明には傷つくものがあったが、問題は相手が何体いるかだ。

 一方、報酬の銀貨10枚は片手長剣を買える程度の額である。そして、暫く食べていくだけの生活資金としては上々だった。


(銅貨換算で1000枚か。これを依頼達成できたら、宿代や食費には暫く困らないな。けど、王都で何か買うときには、もう少し余裕が欲しいところだぜ。何より……)


 ここでなるべくレベル上げをしてから、王都に向かいたい。

 より強くなるという狙いもあったが、召喚武具を更に向上させたかったのである。

 今のところ、興味深いのは自転車のパーツシリーズだ。

 おそらく、これを合体させて自転車にできると思うのだが……。


(まずは強くならなくちゃな。そのためにも、手始めにオーク退治だ!)


 弘は掲示板から依頼メモをはぎ取った。


「よし、これにしよう」


「では、私はコレを……」


 カレンも何かの依頼を一枚取る。

参考までに見せて貰ったところ、『毒オオトカゲの群れを退治してください。(詳細は事務所にて) 報酬:銀貨25枚 依頼人:クロニウス国事務所』というものだった。

 報酬は凄いが、退治対象も危険そうである。

 弘が連想した毒オオトカゲの姿は、元の世界で知られるコモドオオトカゲだったが、ここでいうトカゲがコモドオオトカゲより大型の種である可能性は高い。


(なにしろ異世界のモンスターだもんな。それと、やっぱりカレンは別依頼か……)


 昨晩聞いたとおり、弘の依頼には同行しないらしい。だが、弘は不満を感じなかった。

 元々別れるつもりだったし、いつまでも頼る気はないからだ。


(この手の展開だと『このあと酒場で仲間を雇う』って感じだろうが、ある程度強くなってないと舐められるからな)


 そこまで考えた弘は、カレンに話しかけた。


「じゃあ、ここでお別れだな。そっちは、そっちで事情があるって奴なんだっけな?」


 シルビアが邪魔するせいで詳しい話は聞けなかったが、どうやらカレンは他の者を同行させた上での冒険者依頼ができないらしい。

 山賊討伐の時は駐屯兵と一緒だったが、今は違う……ということなのだろう。


(てきとーに理由をつけて、俺を放り出したって可能性もあるが。まあカレンの性格からして、それは無いだろうな)


 シルビアはともかく、カレンはそういう事はしないっぽい。


「ええ、申し訳ありません。あとはサワタリさんが……あ、そうだ。酒場で誰かを仲間に誘うのもいいですよ!」


 さっき弘が考えたことを、カレンがアドバイスしてくれたが、それはしないつもりでいる。

 曖昧に返事をした弘は、カレンと共に二階受付で依頼受理の登録をすると、それぞれギルドの派遣証を貰って別れるのだった。


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