2-3 イケメンがパティーにくわわった
~前話までのあらすじ~
ある日、女子高生『飛鳥和深智』の部屋のドアが異世界につながった。
お腹を空かせながらミチはRPGの世界を歩き、ゴブリンに襲われる。
ピンチを颯爽と助けてくれたのは、イケメン主人公剣士だった。
見れば見るほど、目の保養のようなイケメンである。
ニヤける口角を抑えながら青年を見ていると、青年が僕のほうに向けて剣を上げた。
「まだモンスターが……。見たこと無い姿、レアモンスターか!?」
青年の剣の先を目線で追い、僕は後ろを振り返る。
モンスターらしいものは見当たらない。どういうこと?
青年の方へ向き直したら、青年が剣を振りかぶって僕に切りかかってきた。
もしかして、レアモンスターってのは僕の事か!
「疾風斬!」
青年の剣が、僕の体を斜めに斬った。
——最初の仲間が現れたと思ったら、まさかモンスターと間違われて殺されるだなんて……。
……と思ったが、切れていない。
たしかに斬られたと思ったのに、僕の体にはまったくダメージが無かった。
「切れないだって? もしかして、モンスターじゃなくて人間なのか?」
「そうだよ人間だよ! なに勝手にモンスターと勘違いしてんの」
「人間……? 人間を見るなんて、初めてだ……」
青年はあり得ない物を見たかのような顔で、僕の全身をまじまじと見つめてきた。
なんなんだこの青年は?
いま『人間を見るのは初めて』って言った。今まで人間に会ったことが無いってこと?
どういう世界なんだ?
このゲーム世界に来てから初めて出会ったという意味なのか……、それともこのダンジョンで一人で生まれ育ったとか?
ゲームの世界なら、この青年は実はNPCという可能性もある。
いろいろな可能性を考えながら僕も青年をじろじろ見ていると、青年がなにかに気づいたように話しかけてきた。
「キミ、武器を持っていないようだね。余ってる武器をあげよう。キミのクラスを教えてくれないか?」
「クラス? に、2年1組……ってそういうことじゃないよね?」
僕がそう言うと、青年は意味不明そうに首をかしげた。
彼が聞きたかったのは「剣士」とか「賢者」みたいなRPG的なクラスか。
言ってからそのことに気付き、僕は恥ずかしさで顔を赤くした。
「よく分からないが、ひとまずパーティーを組もうか。私がパーティーを募集するから、参加申請をしてくれたまえ」
そう言って青年は手をかざし「オープン」と唱えた。すると青年の手元にステータス画面が現れた。
――ステータス画面も有るのか、完全にゲームの世界だ。
青年が画面をタッチして操作すると、僕の目の前にも似たものが出現した。
『大地[魔剣士]がパーティーを募集しています。参加しますか?』と書かれている。
ダイチってのはこの青年の名前だろう。
なんだかファンタジーさのカケラも無い、普通な名前で一瞬笑いそうになった。
笑いをこらえながら、僕は迷わず『いいえ』を選んだ。
僕はゲームではまず『いいえ』を選びたくなるタイプの人なのだ。
「参加者ゼロ、おかしいな……。キミ、もしかして『いいえ』を押したのかな? もう一回申請するから『はい』を押してくれたまえ」
ダイチはそう言って、またステータス画面を操作した。僕の目の前に選択画面が現れる。
「これの『はい』を押せばいいんだね?」
僕はそう言いながら、再度『いいえ』を選んだ。
もし彼がNPCなら、何度も『いいえ』を選ぶと同じセリフを吐くと思ったからだ。
すると、ダイチは本気で困ってるかのような顔をした。
「あれ、おかしい……。本当に『はい』を押しているのかい? 文字が読めないのかな。上のボタンを選ぶんだ」
「押してるよ」
ダイチは不思議そうな顔をしながらまたパネルを操作し、僕の目の前にまた選択肢が現れる。
僕は三度目の『いいえ』を押した。
「キミ、いま『いいえ』を押したんじゃないかい? フザけないでくれたまえ。『はい』を押すんだ」
「えぇ? 間違いなく『はい』を押したよ?」
「おかしいな……」
ダイチは前髪をいじくりながら、またパネルを操作し、パーティを申請する。
今度は僕がどちらを押すかジロジロと見てきた。
僕は人差し指で『はい』を押すフリをしながら、中指でこっそり『いいえ』を押した。
「……どういうことだ。私の操作が間違っているのか? これではパーティーを組めない……」
「パーティーが組めなかったらどうなるの?」
「パーティー組まないと武器を渡せない。キミに武器を渡すためには絶対に必要なんだ。キミも、武器が無いと困るだろう?」
「それは、困るかもしれないけど……」
ぐ~、と僕のお腹が鳴った。そういえば晩ごはんをまだ食べていない。
「それよりご飯が欲しい、かな」
「お腹が空いているんだね。私の拠点まで来ると良い。あそこなら食物には困ることは無いさ。では、もう一回募集をかける。今度こそ『はい』を押してくれたまえ」
僕の目の前に、また『はい』『いいえ』の選択肢が現れた。
さすがにそろそろ『はい』を押してやろうと思って、僕は『はい』の所に指を伸ばした。
……が、押す直前に僕はあることに気づき、ギリギリのところで指を止めた。
「あっ、危なっ。なんだこれ!」
よく見たらパネルに『大地[魔剣士]から求婚がありました。受諾しますか?』と書かれている。
ダイチのほうをにらみつけると、なぜかカッコつけたようなポーズをしながら前髪をいじっていた。
「あぁ、気づいたか……」
「いや、『気づいたか……』じゃなくて。何コレ?」
「パーティー申請が上手くできなかったから、求婚申請を試してみたんだよ。べ、別にキミに好意があるとかそういう意味ではない! まぁ、申請を受け入れても私は困らないが……」
何を言っているんだコイツ。
正直ちょっとキモいと思った。
無意識のうちに、僕の顔に嫌悪の感情が浮かび上がる。
「おいおい、そんな顔しないでくれ。あぁ、お腹すいてるんだったね、そのせいかな? でもパーティーを組まないと武器を渡せないしマップの共有もできないから、拠点まで連れて行くこともできないんだ」
「……じゃあ僕がパーティーを募集するよ」
「あぁ。そうしてもらえると助かる」
ダイチの言動に何だか気持ち悪さを感じるからパーティーを組みたくないけれど、背に腹は変えられない。
——顔は良いのに……。
手を前にのばし「オープン」と唱えると、僕の前にもステータス画面が現れた。
一番上に『深智[アーチャー]』とあり、その下にはいくつものステータスが表示されている。
アーチャーなのは、僕が弓道部だからだろうか。
画面の端に『パーティー作成』と書いてあったので、そこをタッチし募集をかけると、すぐに『あなたのパーティーに大地[魔剣士]が参加しました』と表示された。
「よし、これで武器が渡せるようになった。キミはアーチャーだから、弓を渡そう。共有インベントリに入れたから装備してみてくれたまえ」
ダイチがパパパっと画面を操作しながら言った。
僕も画面を操作し弓を選んだあと『装備する』を選択した。
すると、チャチで安っぽい洋弓が僕の左手に現れた。
いつもの和弓と違うから、なんだか変な感じだ。
「装備出来たね。じゃあ、マップにマーカー付けたから、そこを目指して進んでくれ」
「え? 僕が先頭なの?」
「当然さ。キミがパーティーリーダーだからね」
ダイチは澄ました顔で、さも当たり前のように答えた。
――こいつ、求婚しておきながらエスコートもしてくれないのかよ。
さっきの求婚で『はい』を押さなくてホント良かった。
~あとがき(ネタバレ微含)~
読者のみなさんも、RPGで「はい」「いいえ」が出たら「いいえ」をまず選ぶと思います。
え、選ばない?
MOTHER2のブンブーンの話を2回きいたうえ、2回目は連打しすぎて3回聞くことになったりしませんでした?
新しく登場したダイチにNPC疑惑がかかってますが、これだけ反応が豊富だしさすがにNPCではないです。安心してください。
ところでNPCって言葉が聞き慣れないって人、たぶん居ますよね?
ゲーム用語を出すたびに「どこまで解説しようか」と毎回悩むので、「分かるよ!」「分かんないよ!」と感想とかにでも書いてもらえるとありがたいです。




