2-2 ダンジョンに飯を求めて
~前話までのあらすじ~
ある日、女子高生『飛鳥和深智』の部屋のドアが異世界につながった。
部屋のドアが異世界につながるということは、『部屋から出て晩ごはんを食べる』が出来ないということ。
お腹を空かせながら、ミチは次の世界へ行くためにまた異世界へのドアを開いた。
ドアの向こうは真っ暗で、ひやっとした空気が流れ込んでくる。
僕の部屋から差し込む光でうっすらと見える地面は、ざらっとした石造りの床のようだ。
僕はクローゼットの中から非常用の懐中電灯を取り出し、ドアの向こうをじっくりと見る。
どうやらファンタジー世界の城の中のような、石造りの大広間のようだ。
大きな石の柱。高い天井。ボロボロのカーペット。
火のついていない燭台が壁にいくつも並んでいる。
そして、広間の端には廊下に繋がってそうな道がいくつかあるようだ。
——これは、城が魔物に乗っ取られた系のダンジョンだな
僕は直感的に思った。
そして、セーラー服のままダンジョン探索へと足を踏み出した。
◇
懐中電灯の光を照らしながら、僕はダンジョンを進む。
あたりは静寂そのもので、僕の足音や衣擦れの音以外は何も聞こえない。
広間を出て、廊下を歩く。
廊下の幅は4mくらい。分かれ道は無く、同じような光景がどこまでも続く。
壁には甲冑やボロボロの絵画が飾られていたりして、ファンタジー的な雰囲気を醸し出している。
「今度こそ、王道ファンタジー系RPGって感じだ!」
僕の遊ぶゲームはアクションゲームがメインでRPGにはそんなに詳しくないが、なんとなくそう思った。
実際のRPGなら仲間が何人もいたりするのだろうか?
メタ視点で考えたらそろそろ仲間が増えるイベントが来る頃だろうし、この世界で仲間が増えたりなんてことも有るかも……?
そんなことを考えながら歩いていると、左右に分かれた通路が目の前に現れた。
「さて、どっちへ行こう?」
左右の道を交互に見る。
右の道の奥のほうで、何かが歩いているのが見えた。
懐中電灯の明かりをチラッと向けると、それはRPGのゴブリンのような姿のモンスターだった。
――この世界、本当にモンスターが居るのか!
あわてて懐中電灯をそらしてから、もう一度ゴブリンの方を見る。
暗くてよく見えないが、ゴブリンがこちらに来る気配は無い。
僕に気づいてはなさそうだ。
――ダンジョンに、モンスター。ここは『ゲームが具現化した世界』とかだったりして?
右の道はやめておこう。
僕は足音を立てないように左へ曲がって進む。
すると、ポヨン、となにか柔らかいものにぶつかった。
何かと思って懐中電灯を当てると、目の前にやけに柔らかい壁があった。
――なんでこの壁はこんなに柔らかいんだ……?
そう思いつつ壁の周囲をじっくり見ていると、柔らかい壁の上の方に頭のようなものが付いていた。
頭……?
そうか、これは壁じゃなくて、デブくてデカいゴブリンのお腹だったのか。
「やばばばばばば、やばいやばい、やばいいぃぃぃ」
思わず変な声が出た。
ゴブリンを見ながら全速力でバック走して逃げる。
ブギャギャァァァ
雄叫びをあげながら、デブゴブリンが追いかけてきた。
やばいやばい。武器とか無いし、魔法とか使えないし、そもそも僕の戦闘力でゴブリンとか倒せるわけないし!
バックじゃ走りにくいから、まっすぐ走るために振り向く。
そしてすぐさまダッシュ!
ドンッ
ダッシュしてすぐに、僕は何かにぶつかった。
ぶつかった衝撃で僕は後ろに倒れたうえに、手に持った懐中電灯をポイッとどこかに投げてしまった。
急いで起き上がりながら何にぶつかったのかを確認する。
さっき歩いてたゴブリンだ。
ゴブリンに囲まれてしまった! 逃げられない!
「コレ詰んだじゃん!!」
僕は立ち上がると同時に、思いきってゴブリンにパンチ!
効果は無いようだ。
それどころか逆に怒らせてしまい、ギニャァと声を出してゴブリンが僕を威嚇してきた。
ゴブリンの鋭い爪が、落とした懐中電灯のライトを浴びて闇の中に光る。
僕はあの爪で切り裂かれて死んでしまうのか……。
ジ・エンド・イン・異世界。16年の僕の人生はここで終わる。
願わくばチート持ちで転生できますように……。
「疾風斬!」
僕が死を覚悟していると、どこからか男の声が聞こえた。
ドヒュウ、と風が吹いたかと思うと、ゴブリンがバタッと倒れ、黒い炭のようになった後サラサラと砂になって消えた。
デブゴブリンが雄叫びをあげる。
うっすらと光る青年が僕の横を走り抜け、デブゴブリンに向かって一閃。
「烈火斬!」
ボウッと炎があがり、暗い通路が一瞬明るくなった。
それと同時にデブゴブリンは立ったまま真っ黒になり、サラサラと消えた。
ペペペッペペー パパラパパーン
ゴブリンの死体が消えた途端、謎のファンファーレが鳴った。
そして空中に『58281の経験値を手に入れた』『深智のレベルが6にあがった』『深智のレベルが7にあがった』という文字が次々とあらわれた。
最終的に僕のレベルは15になった。
まるでRPGのようだ。
やっぱりここは『ゲームが具現化した世界』なのだろう。僕は確信した。
ゴブリンを討伐した青年が振り向き、僕の方を見た。
青年は18か19歳くらいだろうか、僕より少し年上に見える。
色の濃い青髪で、中世ヨーロッパの剣士のような服。
いかにもファンタジーなシルエットだ。
全身がうっすらと光っていて、おかげで真っ暗な通路も青年のまわりはほんのり明るい。
そして、顔はいい感じにイケメンだった。
店頭にこんな二次元キャラのグッズがあったらひとまず一つ買ってしまうくらい、僕の好みだ。
――この青年が最初の仲間というわけか。
僕の中のメタ視点がささやく。悪くない。




