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1-4 僕の名は

   ~前話までのあらすじ~

 ある日、女子高生『飛鳥和(あすかわ)深智(みち)』の部屋のドアが異世界の村につながった。

 魔法のある世界の村で、ミチは村の長老と会うが、長老はミチの眼の前で寿命を迎える。

 村人のヴァルフは「ミチのせいで死んだ」と言いがかりをつけ、炎魔法でミチを殺すと言い出した。

 手の中に炎の塊を揺らしながら、ヴァルフが一歩ずつ僕に近づいてくる。

 それにあわせて、僕も後退りする。

 ドンッと背中が壁にあたる。

 もうこれ以上後ろには逃げられない。


——どうしたら良い? どうすれば……


 この村に来てから何があったか。RPGとかなら何かヒントとかあるだろ!

 この村の違和感……。

 石器時代っぽい村で、魔法があり、そして()()()()()()()()()()()()()……?

 これだ!


「ぼ、僕は長老の知り合いじゃ。僕は長寿族で、既に300年を生きている。君たちは知らんじゃろうが、幼少期の長老とよく遊んだものじゃ」


 自分でびっくりするくらいペラペラと嘘が出てくる。

 長老は僕のことを知っていた。

 たぶん『この世界の僕のそっくりさん』みたいなのが居て、その人と長老の間に過去に何かがあったんだ。

 だが村人は僕の顔を見ても知っている様子はない。

 つまり、長老が若かった頃に長老は僕と出会った。

 そこから逆算される答えは『この世界の僕のそっくりさんは、長寿族』。これなら納得できる!

 語尾が『のじゃ』なのは、長寿族っぽさを演出するためだ。


 だが、ヴァルフは信じていないようだ。

 炎の塊を手に持ちながら、怒りのこもった口調でじりじり寄ってくる。


「だから何だ? キサマが長寿族だろうと、長老の知り合いだろうと、殺さない理由にならない。キサマは長老を殺したァ!」


「殺してないし、殺す理由もないよ! 落ち着いて考え直すのじゃ。長老は、僕という昔からの友人を失うのは望んでいないよ」


 すると突然、村人の集団の中から一人の小柄な女がぴょんと飛び出してきた。

 そして女が僕を指さす。


「長老の言葉を勝手に代弁しないで! あなたの言っていることはウソだらけです!」


「う、ウソじゃないよ」


「いいえ、嘘です! 私には読心術があります。長寿族なんてウソだし、幼少期に遊んだのもウソ、全部ウソです!」


 読心術!

 魔法のある村なんだから、読心術くらいあってもおかしくない。

 僕の適当に並べたウソは、この場を切り抜けるどころか墓穴を掘る行為だったのだ。

 ヴァルフがニヤニヤしながらこっちを見ている。ヤバい。キモい。あぁ、もう!


「殺す理由が無いってのもウソかぁ? 長老殺人罪に今の詐欺罪で、あわせて死刑確定だな」


 そんな雑な判決があるか! 弁護士を呼んでこい!

 とか言っても弁護士が来るわけない。

 でも、この場を切り抜けられそうなアイデアは思いつかない。適当な嘘だとバレてしまう。

 嘘をついてもバレるなら、もう正攻法で正直に正面からぶつかるしかない。当たって砕けろだ。

 長老が僕の名前を知っていたんだ。名前を出したらどうにかなるだろ!


「僕の名前は、ミチだ。飛鳥和(あすかわ)深智(みち)


 勢いで言う。

 すると、ヴァルフがびくっと止まった。

 そしてわなわなと震えだした。

 何故か知らないが、僕の名前を出したことが効いているようだ。


  ——やったか!?


 僕は心の中で腕を左右に広げてセーフのポーズをする。

 ヴァルフは勢いよく読心術の女の方を見た。

 女は首を横に振って、恐る恐る喋る。


「それは……、嘘じゃない。本気で言ってる。その子はミチよ……」


「そんなワケあるかぁ!!!」


 ヴァルフは手の中にある炎の玉を、読心術の女に向けて放つ。

 女の服が燃え「きゃあああ」と叫ぶ。

 水を出す能力の村人がすぐさま水を出したから大怪我にはならなかった。


「ヴァルフ! お前!」


 長髪の男ラセロフがヴァルフに向かって吠える。

 だがヴァルフは意に介さず、ずかずかと僕の眼の前までやってきて、僕のセーラー服の胸元を掴んだ。

 不意をつかれたせいで、僕は動けずにいた。

 そのままヴァルフは僕を持ち上げる。

 足が浮き上がる。

 ヴァルフの手を掴んだり足をジタバタさせたりするが、全然だ。

 魔法を使って空中に固定されているような感覚だ。


「ミチだろうが関係ない。オレはお前を殺さないと、このモヤモヤが晴れないんだよ!」


 ヴァルフは左手で僕を掴んだまま、右手に炎の玉を作り始めた。

 さっきの3倍くらいデカい炎だ。


———ヤバい、なんとかしなくっちゃ……これしかない!


 僕は思い切って、右足を大きく後ろに下げる。

 そして全身全霊を込めてヴァルフの股間を蹴り上げた。


「!!!!!!!」


 クリティカルヒット!

 ヴァルフが声にならない声で悶え叫ぶとともに、僕の体が床にドサッと落ちる。


 やった、今のうちに逃げるんだ!


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