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1-3 供物

   ~前話までのあらすじ~

 ある日、女子高生『飛鳥和(あすかわ)深智(みち)』の部屋のドアが異世界につながった。

 異世界は教科書に載っている「弥生時代」のように見えるが、何かがおかしい。

 彼女は長老のもとに連れて行かれるが、長老は彼女の目の前で息を引き取った。

 少し間をおいてから、女がか細い声を出した。


「長老が、亡くなられました。みんなを呼んでください」


 それを聞いて、僕を連れてきた男が「ああ」とだけ答えた。

 そしてまた手を耳に当て、何もない壁に向かって話をし始めた。


「みんな、すぐ来てくれ。長老が……息を引き取った」


 男がそう言った途端、部屋の家具がカタカタと揺れだした。

 地震か? いや、何か違う。床じゃなく空気が揺れている。

 空気がブンッと大きく震えたあと、揺れはおさまった。

 それと同時に、派手な民族衣装を着た赤髪の男がいつの間にか長老の枕元に立っていた。

 長老のすぐそばまで顔を近づけ、赤髪の男は荒々しい大声で叫ぶ。


「おい、ジジイ。くたばったフリしてんじゃねぇぞ!」


 看病をしていた女がそれに反応し、赤髪の男を長老から引き剥がす。


「ヴァルフ! この部屋にワープするのは禁止と言ったでしょう!」


「黙れ、オレはジジイと話してるんだ!」


 突如現れたヴァルフという男と看病していた女の間の会話の中で、ワープという単語が出てきたのを僕は聞き逃さなかった。

 やはりこの世界はただの石器時代ではない、()()()()()()()()だ。

 遅れて、外からバタバタと十人くらい人が入ってきた。


「長老が亡くなられただと?」


「冗談ですよね!」


「寿命、か……?」


「見せて、長老に会わせて!」


 入ってきた人間が思い思いに喋りだした。

 あまりに一斉に話すから、誰が何を言っているかもう分からない。


  パンッ


 最後に入ってきた人が手を叩いた。

 すると、ピタッと全員の口が止まった。

 銀色でサラサラした長髪の男が、優しい口調で喋る。


「ほらほら、みなさん。そんなに騒いだら長老も落ち着いて眠れないでしょう。お静かに、お静かに……」


 さっきのヴァルフという男が『能力はあるが自己中心的でリーダーに選ばれない系のキャラ』なら、この銀の長髪男は『能力はそこそこだが頭脳派で参謀役としてサブリーダーに選ばれる系のキャラ』といった感じだ。

 長髪男はふわっと浮かんで長老の枕元まで飛び、そのまましゃがみこんで黙祷を捧げた。


「長老。静かで尊い眠りを、お過ごしください……」


「おいラセロフ、キサマが仕切ってんじゃねぇ!」


 ヴァルフという男が、ラセロフという男にチョップを食らわせながら言った。

 ラセロフは何事も無かったかのようにヴァルフをスルーして立ち上がる。

 そして、ゆっくりと僕を指さした。

 全員の視線が僕に集まる。

 ラセロフが優しく、周囲に向けて話す。


「こちらのお嬢さんは? 誰か知ってますか?」


「知らねぇよ。オレが来たときからそこに居た」


「ヴァルフ、あなたには聞いてません。誰か知っている人は? 連れてきたのはレハヤフか?」


「あぁそうだ、オレが連れてきた。その子が村の外に立ってたんだよ」


 僕を連れてきた男が、ヴァルフとラセロフの会話に口を挟んだ。彼はレハヤフというらしい。

 レハヤフの言葉を聞いて、ラセロフは目を丸くして驚いた。


「外からの客だって……?」


 周囲がざわざわとする。

 ヴァルフも、驚きを隠せないような表情をしている。

 続けてレハヤフが語る。


「あぁ。よくわからんから長老にその子を会わせたら、長老が死んだんだよ」


「つまり、キサマが長老を殺したんだな!」


 レハヤフの言葉を聞いた瞬間に、ヴァルフが僕の眼の前にずかずかと駆け寄ってきて、僕のセーラー服に掴みかかった。

 その顔は強い怒りに満ちていた。


「ち、違うよ。僕は何もしてない」


「何もしてないのに死ぬわけねぇだろ!」


 ヴァルフは僕に顔を近づけて叫びながら、僕の服を右手で掴んだまま僕の体を前後に揺すった。

 威圧感からくる恐怖とともに、僕の頭の中がシェイクされる。


「ヴァルフ、落ち着きなさい」


 長髪男のラセロフが、僕とヴァルフの間に割り込み、ヴァルフの手が僕の服から離れた。

 た、助かった……。

 殺されるかと思った。

 ラセロフはヴァルフに向かって、なだめるように言う。


「その女の子は悪くない。長老は……寿命だった。誰も悪くないんだよ」


「お前こそ、よく落ち着いていられるな。長老が死んだんだぞ。この気持ちを……このモヤモヤとした不快感をどこかにぶつけないと気がすまねぇ!」


 地団駄を踏むように、ヴァルフは床を蹴る。

 周囲の村人が「落ち着け」と言いながらヴァルフに近寄ってきた。

 だがヴァルフはそんな言葉に耳を貸す様子は無かった。


「供物だ。そうだ、長老を供養するための供物があれば良い。誰かを長老と共に逝かせてやるなら、この気も晴れるだろうよ」


 ヴァルフはそう言いながら、僕に手のひらを向けた。

 その手の中には陽炎が揺らめく。

 炎系魔法だ。

 僕を焼き殺すつもりか!


――これは……、ヤバいんじゃね?

~あとがき(ネタバレ微含)~


ここまで読んだ方、すでに感じているでしょう。

「こんな非テンプレ、なろうでウケるわけないじゃん」と。

そのとおり、もともとネットで掲載するとか考えずに書き始めた小説なので、なろうウケとか1ミリも考えてません。

物好きな人がクスッと楽しめたら本望です。

ただ、非テンプレなこの作品のどこに魅かれたかがちょっと気になったりしてます。感想に「こういうのが魅力に感じた」とか書いてもらえると参考になります。

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