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6-2 角のタバコ屋

   ~前話までのあらすじ~

 ある日、女子高生『飛鳥和(あすかわ)深智(みち)』の部屋のドアが異世界につながった。

 4歳の弟アオが異世界に行ってしまった。キィという少女と異世界をわたり、アオを見つけることを目標に決める。

 次の異世界は日本の田舎を思わせる世界で、キィのセンサーがこの世界に何かあると告げる。

 住宅地までの道はアスファルト舗装されていない砂利道だったが、住宅地の中もすべて砂利道だった。

 立ち並ぶ家はどれもいかにも木造+瓦屋根といったものばかりで、大きな地震が来たらすぐに崩れそうだと思った。

 言い表すなら『ザ・昭和の街』といった感じだろうか。

 2010年生まれの僕には実際の昭和は全然想像できないけど、たぶんコレが昭和なんだと思える。

 あれこれ考えて歩いていると、キィが話しかけてきた。


「なんかここ、ミィの世界に似てるよね」


「どこが?」


「え、どこだろう。文明のショボさ?」


「ショ、ショボさ……? 全然ここのほうがショボいでしょ」


 そう言いながらも、科学が超発達した世界から来たキィからすると、昭和も令和も大差ないのかもしれないと思った。


 田舎のわりに、道行く人は多い。

 すれ違う人はだいたい、安そうな布素材のダボッとした総柄の服を着ている。

 足回りは、裾口だけきゅっと絞ってある野暮ったいズボンの人が多い。

 見たこと無い服だ。

 この異世界のファッションなのだろう。


 それに対し僕とキィはポスト・アポカリプス世界の作業着の姿。

 迷彩のような色に、動きやすいシュッとした未来感あるデザインの服だからか、なんとなく周りの人に見られている気がする。

 いや、『気がする』じゃない。

 露骨にみんなジロジロ見ている。

 この世界には、デリカシーというものはあまり無さそうだ。


「お嬢ちゃんらぁ、どこのもんだえ?」


 個人商店のような店の前を通ると、突然店員に話しかけられた。

 『たばこ』と書かれている看板のとおり、店頭にはタバコの箱らしきものが並べられていた。

 店員は50歳前後の『おかみさん』って感じの女性で、目元はニコニコしているが、なんとなくこちらを警戒しているように見える。

 油断したら、とって食われそうだ。

 僕も心のなかで臨戦態勢をとる。

 だがそんな僕をよそに、キィが元気よく返事する。


「アタシたち、異世界から来たの。アタシたちみたいに異世界から来た人がほかに居るはずだけど、おばちゃん知らない?」


「異世界だぁ? ハッハッハ、お嬢ちゃん、おもれぇこと言うなぁ」


「この服を見たらわかるでしょ。ホントに異世界から来たの」


「よう出来(でけ)た作り話だなぁ嬢ちゃん。おばちゃん感心したがなぁ」


「作り話じゃない! ホントのホントなの!」


 タバコ屋のおばさんはケタケタと笑いながらキィをからかう。

 キィはムキになってあれこれ言うが、おばさんはまったく信じてそうにない。


「アタシたちはここよりもっと進んだ世界から来たんだからね! おばちゃんも異世界にいったら絶対ビックリするんだから!」


「ほぉ、もっと進んどる世界かぇ。そういや若い頃ぁ、旦那と異世界に行ったことあるがな」


「!! おばちゃん異世界に行ったことあるの!?」


「そぉそぉ、通天閣って塔のぼって、串カツを食うて……。いやあれは異世界(いせかい)やのうて新世界(しんせかい)ちゅう大阪の町じゃったかのぉ。通天閣ぁ火事で焼けて、もう()うなったそうだで……」


 そう言っておばさんはまたケタケタ笑う。

 「ムキィー」と言ってキィはマンガみたいな地団駄を踏んだ。


 通天閣……? 大阪……?

 異世界とは思えない単語に僕は反応する。

 ここは『昭和の日本』で間違いなさそうだ。

 でも通天閣が火事なんて聞いたこと無い。

 だから厳密には『パラレル昭和の日本』か。

 果たしてパラレルワールドは異世界と言って良いのだろうか。


 タバコ屋のおばさんに完全に言い負かされたキィは、不貞腐れた顔で僕の手を引っ張った。


「ミィ、このババア全然アタシたちのこと理解してくれないよ。頭が悪いんじゃない?」


 キィは怒りをどこにぶつけたらいいか分からないような感情で僕に言ってきた。

 そんなキィを横目に、おばさんは勝ち誇ったかのように新聞を読み始める。

 新聞……。そうだ、新聞なら何か分かるかもしれない。


「おばさん、新聞を見せてもらえますか?」


「これかえ。ええで。よう読んで地球の勉強しんさい」


 そう言っておばさんは売り物の新聞をひとつ渡してくれた。

 いつの間にか僕たち、宇宙人か何かかと思われている……?


 新聞の日付欄を見ると、「昭和 30年 7月 9日 土曜日」と書かれていた。

 ここはどうやら、昭和の世界らしい。

 昭和30年ということは……、西暦でいうといつだ?

 とにかく、70年か80年くらい昔らしい。

 僕の父方のおじいちゃんが今年で70歳だから、おじいちゃんが生まれる前の時代だ。

 ひいじいちゃんとか居るのだろうか。


——ひいじいちゃんとか、顔も名前も知らないけどね……。


 新聞の記事を見てみると、政治の話とか世界情勢とかいろいろ書かれているが、明治以降の歴史が苦手な僕としては、これが僕の世界とどこまで一致しているのかは分からなかった。

 その中でも比較的分かりそうなものを探したところ、『後楽園ゆうえんち』がオープンしたと書いてあるのを見つけた。

 後楽園……、岡山にそんな遊園地あったのかな?

 岡山の遊園地なんて、鷲羽山ハイランドしか知らないや。


「ミィ、これ見て!」


 新聞をまじまじと見ている僕の袖を、キィが引っ張りながら言う。

 キィが指差す先には、掲示板があった。

 掲示板には手書きのようなポスターがいくつか貼られていた。


「掲示板がどうかした? 宇宙人の話でも載ってるの?」


「何いってんのバカ。ほら、このポスター見て!」


 キィが掲示板まで僕を引っ張り、あるポスターを指差す。

 そこにはいかにもマジシャンといった格好をした若い男性の絵が書かれていた。

 そして、その下にはこう書かれていた。


『これは幻術か?! 本物か?! 鬼才 アスカワ アオ による神秘の大奇術ショー!!』


 アスカワ アオ……。

 僕の弟の名前だ!

~あとがき(ネタバレ微含)~

後楽園ゆうえんちは今は東京ドームシティアトラクションズという名前の、東京にある遊園地ですね。

ミチは岡山にある三大庭園の後楽園と勘違いしています。

ちなみに岡山の遊園地と言ったら鷲羽山ハイランド。

読みは「わしゅうざん」です。

特に「そこらの絶叫マシンより何倍も怖い」と言われるスカイサイクルが有名ですね!

ミチの世代は、もう倉敷チボリ公園を知らないです……。

カブトガニ博物館というマニアックな博物館もオススメ。


ところで、こんなに簡単に弟が見つかって良いのか……!?

ちょっとのご都合主義は勘弁してください。ちょっとなんで。無いと本気で話が盛り上がらないので。

それより、キィというキャラクターが読者にどう見えているのかの方が自分は気になっています。

どんな印象でしょう?


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