5-3 【急募】
~前話までのあらすじ~
ある日、女子高生『飛鳥和深智』の部屋のドアが異世界につながった。
異世界を巡る中でキィという少女と出会い、二人で旅をするようになる。
ジャングルの世界で巨大なオウムのような怪物に遭遇したが、キィが銃を使い一撃で怪物を討伐した。
キィはギアを掃除機のように使い、部屋中に散った巨大オウムの血を吸い取る。
ついでに朝の雨で濡れたカーペットの水分とかも吸い取ってくれた。
床の髪の毛や壁の細かい汚れまで吸い取ってくれたので、部屋がずいぶん綺麗になった。
最後に巨大オウムの死体をどけようとしていると、オウムの中から声が聞こえてきた。
「あら、ミチさん。お友達が来ているの?」
この声は母さんの声だ。
ドアの向こうから話しかけているようだが、ちょうどドアのところにオウムの頭があるせいでオウムが喋ってるように聞こえて、ちょっと気色悪い。
キィはオウムをジャングル世界に押しのけながら、返事をする。
「おじゃましてまーす。キィっていいます」
「あら、初めての子ね。ミチと仲良くしてあげてくださいね~。そういえばお友達といったら、さっきサァちゃんが来てたわよ。なんか連絡が取れないって心配してたわ」
サァというのは、僕の小学校以来の友人の藤峰沙由という子だ。
スマホを見てみると、たしかにサァから『どこか遊びに行かない?』といったメッセージが来ていた。
僕はすかさず返事を返す。
『メンゴ!』
『部屋から出られん!』
するとすぐにサァから返事が返ってきた。
『おばさんに聞いた』
『異世界とかウケる』
『……ウケないか』
『大変だよね』
『ウチも手伝えることあったら手伝うよ!』
手伝おうにも、外から出来るようなことは何も無いんだけどなぁ。
すぐに『別にいいよ、僕がなんとかするから』と返信しようとして、手が止まった。
おせっかい焼きのサァのことだから、下手なことを書くとそのうち『ウチが手伝ってあげないと!』とか言って異世界に乗り込んでくる可能性がある。
僕に言えたことではないが、異世界は危険だらけなのだ。
サァの身に何かあったらイヤだ。
——どうすればサァが異世界に来なくなるか……。
答えは簡単。
『来ないで』でも『手伝って』でもない。
既読スルー、それが正しい答えなんだ。
「あっ、ところでミチさん」
スマホをポケットに入れたところで、母さんがドアの向こうから話しかけてきた。
「アオさんって、部屋に居ます?」
アオというのは、歳の離れた僕の弟だ。
まだ4歳になったばかりの、少しは言葉が話せるようになったくらいの男の子だ。
アオは一緒に遊んでほしくて、よく僕の部屋に遊びに来る。
でも当然、今は僕の部屋に居ない。
「居るわけ無いでしょ。部屋に出入りできないのに」
「……そうよねぇ。どこへ行ったのかしら?」
……?
『どこへ行った』と言った?
どういう意味?
ザワザワとした悪寒が走る。
「母さん、どういうこと? アオが居ないの?」
「そうなのよ。家の外へ行っちゃったのかしら。公園とか、スーパーとか……。こんなの初めてだわ」
母さんはそう言って、足音を立てながら部屋から離れていった。
アオが居ないなんて、そんなことあり得る?
玄関の鍵を開けるくらいのことは出来るようになったが、でも勝手に外へ行っちゃいけないことくらい分かる歳だ。
家のどこかでかくれんぼでもしているのだろうか。あの子、かくれんぼ好きだから。
そうやって僕が思考を巡らせていると、さっきの会話を聞いていたキィが、僕に話しかけてきた。
「アオって、ミィの家族? 兄弟?」
「僕の弟だよ。4歳の」
「居ないってことは、外からドアを開けて異世界に行っちゃったんじゃないの?」
「そ……」
僕は『そんなわけない』と言おうとしたが、口から言葉が出なかった。
キィの言葉を認めたくなかったが、否定することも出来なかったからだ。
——【急募】小さな弟が一人で異世界に行ってしまったとき、どうしたらいい?




