4-9 絶望と逃亡
~前話までのあらすじ~
ある日、女子高生『飛鳥和深智』の部屋のドアが異世界につながった。
次の異世界は終末後の世界で、キィという少女に出会い、9人チームで調査活動を行うことになった。
だが急に現れた新型ロボットに、調査チームは一瞬にして全滅してしまった。
あまりに急な出来事に、僕は現実味が感じられなかった。
ガシン……ガシン……
静かな工場の中に、ロボの足音が響く。
心なしか、僕の方に近づいているように感じる。
ロボに見つからないように、僕は1ミリも動かない気持ちで、大きな瓦礫の陰で体をぎゅっとさせる。
自分の呼吸音すらうるさく感じる。
ガシン……ガシン……
気のせいじゃない。
ロボは明らかに僕の方に向かって歩いている。
僕の心臓がどんどん早く鼓っているのが分かる。
ウィィン、ウィン、ウィン
ロボの足音が止まり、かわりにモーター音が聞こえた。
ロボットアームを伸ばすかのような音。
そして、音がしなくなった。
何故かロボが停止したのだ。
――どういう事? 僕が出てくるのを待ってる……?
立ち上がったら殺されるかもしれない。
でも殺すつもりなら何故ロボは攻撃してこない?
そもそも何故、超科学兵器を持った人8人を一瞬で殺せるような武装をしているのに、僕は攻撃されなかった?
もしかして、この世界のロボはこの世界の人間だけを殺すのが目的で、異世界人である僕を殺すつもりが無いのでは……?
意を決して、僕はおそるおそる瓦礫から顔を出し、ロボの様子を見た。
ロボは、僕に向けて手を差し伸ばしていた。
明らかに敵意が無い。
僕をどこかへ連れて行こうという目的が、ロボの行動から読み取れる。
そういえば、この世界に来て最初に出会ったロボも、僕をどこかに連れて行こうとしていたのを思い出した。
――ロボ達の目的は、僕だった……? 僕をどこかへ連れて行くのが目的……。
僕は立ち上がり、ゆっくりとロボに近寄る。
そしてロボの手の上に力なく倒れた。
「戦わなくて、良かったのかよ……」
僕の口からぽろっと言葉が出てきた。
そして無性に腹が立って、僕はロボの手を殴った。
「オマエが最初から、僕が目当てだって言ってたら、みんな死ななくて良かったのに! キィだって、キィだって……」
僕は何度もロボの手を殴った。
調査隊のメンバーは少し前に知り合っただけの間だけど、それでも自分のせいで人が死ぬのは気持ちが悪い。
ロボはそんな僕のことをお構いなしに、僕を乗せた手を動かし、僕が座れるように頭部を変形させて椅子の形にした。
椅子に座ると、滅茶苦茶に壊れた工場を見渡すことが出来た。
最初からここに座れていたら、隊長たちは死なずに済んだのだろうか……。
キィが死ぬ必要だって、無かったはず……。
ガラッ、ゴロゴロッ――
突如、瓦礫が動いた。
「アタシを無視すんな……、ミィは渡さない!」
崩れた瓦礫の中から現れたのは、キィだった。
ロボの火炎放射の直撃を食らって蒸発したのかと思ったが、吹き飛ばされただけで無事だったんだ!
ウィンンン
キィの方に向けて、ロボの照準がゆっくりと動く。
このままだと、キィは他の人たちの二の舞いだ。
でもキィはロボを睨んだまま動かない。
キィは、このロボと正面から戦う気なんだ。
「ダメ! 逃げて! 僕は大丈夫だから……」
「超越鼓動!」
そう叫びながら、キィはギアを口に咥えた。
それとほぼ同時に、ロボの光の針がキィを貫いた。
「キィッ!」
だが、キィは貫かれる一瞬前に跳躍し、気づいたときには僕の前に立ちロボに銃を向けていた。
「人間様を、舐めんなぁぁぁぁぁぁ!!!!」
キィの銃からビームが発射され、あたりがぱっと明るくなる。
至近距離で着弾したロボの外装がじわっと溶けた。
だが、威力は不十分だ。
表面が少し溶けた程度で、中まで貫通していない。
すぐさまロボはアームを振り回し反撃を仕掛けてきた。
「だったらこれなら!」
キィは人間離れした速度でロボットアームを避けながら、今度はビームの剣を取り出し、ロボットに突き立てた。
音もなく、ドロドロとロボの装甲が溶ける。
キィはビームの剣を突き刺したままザクザクと切りつけ、ロボの装甲を剥ぎ取る。
ウィィィィィギャッギャギャァァッ――
ロボは悲鳴にも聞こえそうなギア音をあげながら体をひねり、キィを振り払った。
僕まで椅子から落ちそうだった。
「あは。効いてるじゃん」
キィがロボから少し距離を取りながら呟いた。
ロボはすかさず全身のトゲをキィに向け、針のようなビームを一斉掃射した。
だがまたキィは目にも止まらぬ速さで回避し、どこかへ消えてしまった。
キィがどこへ行ったか分からずキョロキョロ探す。
どこからともなく、ビーム剣で金属を切る音が聞こえる。
下を見ると、ロボの足の下にキィが居て、何度も何度もロボの足を切りつけていた。
ロボの下半身の蜘蛛部分がじわじわ赤熱している。
「これで、トドメだぁぁぁ!」
叫び声と共に、両手に巨大な爪を装備したキィが、赤熱したロボの下半身をハサミで切るように引き裂く。
強い力によって引き裂かれるロボの巨躯を見て、プレス機にかけられた車の動画を思い出した。
キィのギアによって引き裂かれたロボは、力なく項垂れたあと、そのまま沈黙した。
キィがロボ全体を見渡すようにぴょんと飛んで距離をとりつつ、僕の前に立つ。
「キィ、良かった。生きてたんだ」
「当たり前じゃん、アタシがあんな炎で死ぬわけ無いでしょ。まぁ……ちょっとふっ飛ばされて、気を失ってたりはしたけど……。バリアも間に合ってたから、ちょっとコゲただけで実質ノーダメージ!」
キィの脚はもうフラフラでいまにも倒れそうだったが、強がりのようにそう言ってニコッとVサインをした。
僕も負けじとVサインを返した。
僕はキィのところに駆け寄りたくなり、ロボから降りようとした。
……が、椅子から降りる前に突然、椅子がロボの中へ格納され始めた。
「ミィ! 危ない!」
一瞬でキィがロボの頭のところにきて、僕の腕を掴んだ。
僕もキィの細い腕を掴む。
ロボの上部がシェルターの屋根のように閉まり始めたが、キィが僕の腕をぐいっと引っ張ってくれたおかげでギリギリロボから脱出できた。
二人でロボから降りると同時に、ロボがまた起動してモーターのような音がし始める。
さっきまでと様子がなにか違う。
ロボは頭を抱えるように体を丸くし、動かなくなった。
「エネルギーがやけに溜まっている。一点に収束していっている感じ……、自爆!?」
キィが叫ぶやいなや、キィは僕を連れて大きく横跳びした。
急に引っ張られたことによるGで、僕の目の前は一瞬真っ白になる。
そして血が頭に戻ってきたときには、僕は自分の部屋に戻っていた。
ドッグアァァァ――
爆発音が聞こえると同時にキィが勢いよく窓を閉めた。
そして糸が切れたあやつり人形のように、キィはその場に崩れるように倒れた。
~あとがき(ネタバレ微含)~
4章はここまでです。
SFは終わり、次はやっとファンタジー……にならない。
もうちょっと逆張りさせてください。具体的には、7章か8章あたりでちゃんとファンタジーしますので。
ところで、そろそろドアの真相とか考察し始めてる人とか居るでしょうか?
まだまだ情報を出してないので考察したところで……。ですが、読者目線だとどう見えているのかは非常に気になってます。
感想とかに書いていただけると感謝感激雨霰です。




