4-8 緊急事態
~前話までのあらすじ~
ある日、女子高生『飛鳥和深智』の部屋のドアが異世界につながった。
次の異世界は終末後の世界で、キィという少女に出会い、9人チームで調査活動を行うことになった。
その道中でミチはこの世界の科学力を見た。そして、この世界を救うことを約束した。
船が徐々に減速しはじめた。
あたりを見回すと、見覚えのある光景が広がっていた。
僕が最初にロボと出会った、あの工場の前だ。
船が止まり、そろそろとメンバーが降りていく。
そこには壊れたフェンスがあり、その奥にはドアが開きっぱなしのボロい工場があった。
先陣を切って進む隊長が、振り向いて僕に向かって言う。
「ミチ、ここで間違いないな?」
「うん。この工場の中に、僕の部屋に繋がる窓があるはず」
ズズン…………
そのとき、少しだけ地面が揺れる感じがした。
地震だろうか?
調査隊の人たちは特に気にせず、ずんずんと工場の中へ入っていく。
工場の中は僕が来たときと同じで、無機質に稼働し続けていた。
そしてその奥に小さく光が見える。僕の部屋だ。
ズズン…………
また揺れた。今度はさっきより大きい。
「地震の予報は無いはずだ。なにかおかしいぞ……? 調べろ」
隊長が声をあげると、他の人達がいっせいにギアを変形させ、天井へワイヤーをのばして登ったり、センサーのようなものを周囲に展開したり、各々が調査を始めた。
キィは銃と剣を構え僕のそばに寄ってきた。
途端に、人見知りな隊員が天井から大声をあげた。
「逃げろ! 緊急事態! なんだあれは。見たことも無……」
そう言い終わる前に、工場全体が大きく揺れるような衝撃が来た。
ベキベキベキッ――
バキッバキッ――
耳が壊れそうな轟音とともに、天井が崩れ落ちた。
鉄柱やパイプが高速で飛び、僕の近くの地面に突き刺さる。
遅れて上を向くと、割れた天井の破片の一つが僕に向かって落ちてきているのが目に入った。
幅1メートル位ありそうな、コンクリートの塊だ。
――これは、ヤバいのでは……?
すぐ逃げるべきだと頭は判断する。
だが、どの方向に逃げたらいいか一瞬戸惑った。
あまりに急のことで体が動かない。
「バリア展開! 最大出力!」
叫び声をあげながら、キィがギアを上に向かって突き出した。
ギアの周囲の空間が歪み、落ちてきた塊は僕たちに降ってくると同時に粉々に砕けた。
「もっとこっち来て! バリアから出たら死ぬよ!」
キィの言葉にしたがい、キィに体を寄せる。
キィは僕より二回りほど体が小さいが、ギアを持っているその手は何より信頼できた。
しばらくすると瓦礫や砂埃が落ち着き、何が起きたのかがやっと分かった。
ロボだ。
8本の長くて太い脚をもつ、全高5mほどの蜘蛛型のロボだ。
工場に来る途中で見たやつより全然大きいロボが、天井を突き破って降ってきたんだ。
さっきの揺れは、このロボが工場に向かって飛び跳ねて来てたのが原因だったんだ。
「新型……? こんなデカいやつ初めて見た」
キィはバリアを解除し、ギアを銃の形に変形させながら、ポツリと呟いた。
隊長が叫ぶ。
「動きを止めるな! お前ら、一気に畳みかけるぞ!」
同時にキィや隊員たちはすぐに飛び上がった。
四方八方から光線がロボに向けて放たれる。
キィを含め隊員たちは、あちこちに移動しながら何発も光線を撃つ。
1分ほど乱射している間、ロボは微動だにしなかった。
「攻撃止め! ……やったか?」
天井から床へ、スルスルとギアのワイヤーを辿って隊長が降りてきた。
他の隊員達も攻撃をやめ、ロボとつかず離れずの距離からロボを観察する。
攻撃をうけたせいか、ロボの上部は赤くひび割れていた。
ロボは全く動かないが、これで倒せたとは思えない。
隊長のセリフもフラグとしか思えない。
みんなが様子を見ている中、キィが前に出る。
「コイツ、押しつぶすしか出来ないんじゃない? 壊れてるかアタシが確認する!」
そう言ってキィはびょんぴょんとガレキの山を乗り越え、ロボの上に立った。
キィに向かって隊長が叫ぶ。
「気をつけろ、油断するんじゃない!」
ボオォォォッッッ――
突如、ロボから火柱があがった。
ロボが燃えだしたというより、火炎放射のような真っ直ぐな炎だ。
暗かった工場全体が昼のように明るくなるほどの炎がキィを包んだ。
炎はすぐにおさまったが、さっきまでロボの上にいたキィが、次の瞬間には何も無くなっていた。
「キィ!!」
僕は叫び、キィがさっきまで存在していた場所にむけて走った。
だがすぐに女科学者に肩を引っ張られ、後ろに倒れてしまった。
そして近くにあった大きな瓦礫の陰に引っ張られた。
「死ぬ気か!? お嬢ちゃんは下がってな」
「だって、キィが……」
「泣き叫んで敵の前にフラフラ出たらあの子が生き返るのかい? え!?」
女科学者にすごまれ、僕は何も言い返せなくなった。
ヴィィィィンンンギギギギガガガ
突如、ミキサーを空転させるような、チェンソーを回すような、とにかく高速でギアを回転させるような機械音が工場じゅうに鳴り響いた。
巨大ロボの上部の赤いひび割れが開き、中から人型ロボの上半身が出てきた。
ケンタウロスを思わせるような、上半身は人間で下半身はクモという異形の巨大ロボへと変形したのだ。
その上半身には長いトゲのようなものがいくつも生えていた。
そして、ロボは変形が完了したまま、また動かなくなった。
背筋をのばし腕を斜め下に伸ばしている姿に、神々しさと畏怖の念を抱いた。
ハッと我に帰ったように、隊長が号令をかける。
「……ボッとするな! 撃て!」
隊員も一斉に動き出し、またさっきのようにビームを乱射する。
「装甲が厚いようだ。関節を狙え! 脚だ、脚関節からジワジワ壊していくぞ!」
隊長の怒号に従い、ビーム攻撃の対象が変わる。
全方向からほぼ一点に向けてビームが撃たれ、足関節がどんどんと赤熱していき、ついには8本ある脚のうち1本が溶けるように折れた。
脚を失ったことで、ロボが一瞬だけフラッと体勢をくずす。
いつの間にか、ロボから生えている無数の長いトゲが少し光っていることに僕は気づいた。
――あの光は、いったい……?
僕が観察しているうちに、隊員のビーム光線が2本目の脚を溶かし始めた。
それと同時にロボのトゲも急に明るくなっていく。
そのことに気づいたのか、僕のすぐそばにいた女科学者がバリアを展開しながら叫んだ。
「エネルギーの集中を確認! バリアで身を守r……」
そう言うが早いか、ロボのトゲというトゲから、まっすぐと細い光の針が工場じゅうに向かって伸びた。
ロボの長いトゲは、すべてビーム砲だったのだ。
そして、そのビーム砲が、僕を除くメンバー全員の胸を貫いていた。
「バ……バカな……」
すぐそばにいた女科学者の胸にも、針のように細いビーム光線が貫いていた。
バリアを貫通するビームなのだ。
女科学者は力なくその場に崩れ落ちたあと、ピクリとも動かなくなってしまった。
さっきまでの戦闘が嘘だったかのように、急にあたりがシンと静かになった。
――……みんな死んでしまった?!
~あとがき(ネタバレ微含)~
「やったか」は負けフラグです。そこは逆張りしません。
戦闘描写って難しいですね。多すぎると読みにくいし、少ないとイメージしにくいし。
今作は控えめにしているつもりですが、読み返すとまだ多く感じます。
ここまで(約5万字)付き合ってくださってる読者の皆さん、戦闘描写の読みやすさとかどうでしょう?
書き溜めが6万字なので、すみませんがそろそろ更新頻度を落としていきます。




