4-7 僕はこの世界を救いたい
~前話までのあらすじ~
ある日、女子高生『飛鳥和深智』の部屋のドアが異世界につながった。
次の異世界は終末後の世界で、キィという少女に出会い、9人チームで調査活動を行うことになった。
その道中でミチは、ロボットとの戦闘と、この世界の圧倒的な科学力を目撃したのだった。
また宙に浮かぶ船に乗りこみ、目的地へ向けて静かに移動する。
隊長が船の中央に立ち、カバンからカ◯リーメイトのようなものをとりだした。
「ほら、戦いの後は飯だ!」
隊長はそれを一本ずつメンバーに配る。
僕もそれを受け取り食べてみた。
手に持ったときは少し固めなのに、口に入れるとしっとりしてホロッと崩れる。
ミリタリー飯は美味しくないイメージがあるけど、これはフルーティーな深みのある甘さで、もう一本食べたくなるくらい美味しかった。
そして手のひらサイズなのに、食べ終わる頃には適度な満腹感を感じていた。
——これが未来飯……。悪くない。
食べ終わると、女科学者の指示でキィがこの世界についての説明を再開した。
「さっきのがロボット。アタシ達が戦っている相手だよ。あれを全滅させて、生産工場も全て壊して、この星をまた人間のものにするのがアタシ達の仕事なんだって」
そして、キィは左手を僕の方に突き出した。
するとキィの左腕に付いているサポーターがうねうねと動き、さっきのようにまた銃に変形した。
「これがギア。持ち主の思考に従って変形する万能ツール。銃を想像すれば銃になるし、ワイヤーを想像すればそれを使ってビルを登ることもできるし、さっきみたいにバリアを張る事もできる。サイバースライムにポリシリコン基盤を埋め込むだけで作れるし、ミィも絶対持っておいた方が得だよ。あと、体重計にも温度計にもなる」
そう言ってキィはギアをワイヤーに変形させたり、鏡に変形させたりして僕に見せびらかしてきた。
さっきの歴史の話をしていたときよりずっとワクワクした顔をしている。
キィがギアを披露している姿を見ている僕の横に、女科学者がゆっくりと座った。
「お嬢ちゃん、さっきの話の続きをしようか。お嬢ちゃんの力が必要って話」
神妙な顔つきで話しかけられたので、僕も緊張でごくっとつばを飲み込んだ。
女科学者は続けて話す。
「この世界の歴史と現状はわかってくれたかな。ただただ機械を破壊するだけの、なんの生産性もないオワコンな世界だ。でもこの世界で生きている人間は、みんないつかこの戦争は終わるという希望を持って生きている。こんなでも、みんなこの世界に愛着持ってるのさ」
女科学者の言葉に、隊長とかチャラ男とか厨二病女子とかみんながうなずく。
『たとえ生きにくくても、自分の生まれた世界が好き』なんて僕は言えるだろうか。
ふと考えた。
答えはもちろんNOだ。
僕は好き好んで異世界に来てしまう人だぞ。
元の世界よりもっと良い世界があるなら、絶対そっちに移住しちゃう。
だからこの世界の人たちとは価値観が全く違うんだろうな、とか考えてしまった。
僕がごちゃごちゃ考えている間も、女科学者は話を続けていた。
「そこでだ、お嬢ちゃん。我々には足りてない物、決定的に不足してる物がある。ロボットに打ち勝つには、それを充足させる事が不可欠なんだ。そしてその充足のために、お嬢ちゃんの力が必要なんだよ」
女科学者が僕に顔を近づけ、手をぎゅっと握った。
突然のことでちょっと戸惑う。
「不足しているモノ?」
「我々には、人手が足りていない。武器が有っても人が居ないと戦えないんだ」
「人手……? それって、つまり……」
「お嬢ちゃんの世界の人間を、この世界に呼ぶんだよ。そうすればあのロボット共を地上から廃絶できる!」
女科学者は目を光らせるように言った。
――異世界の戦争に、僕の世界の人間を駆り出すってこと!?
そんなのに行きたがる人が居るわけ……、居るだろうなぁ。
たぶん、数万人とか数十万人くらいすぐ集まるだろう。
僕だって戦争はしたくないけど、『戦争を手伝うため異世界に行けるか?』と問われると行くかもしれない。
というか実際に異世界に来てる。
死ぬかと思った事にすでに何度か遭ったのに、それでもまだ異世界に来ちゃってる。
「我々がお嬢ちゃんの部屋を解析すれば、異世界へのドアを解除させることだって出来るだろう。そうすればお嬢ちゃんはいつもの生活に戻れる。我々はそのドアを別の場所で再現して、そこから異世界人を派遣してロボとの戦争に決着をつける。win-winじゃないか」
「……僕は何をしたら良い? 僕にしか出来ないなら、僕はこの世界を救いたい」
僕の応えに、女科学者はニコッと口角を上げた。
なんだか主人公って気分だ。
物語の主人公なら絶対にココで『世界を救う』って言うに決まってる。
世界を救うために実際に何をやるかは全然イメージできてないけど、どうにか出来るだろう。きっと。
ちょっとした不安としては、日常生活に戻るって所だ。
楽しそうな異世界があればそっちに移住するのもアリだなと期待もしてたので、異世界ザッピングが出来なくなるのは後ろ髪が引かれる。
でも今のところ論外みたいな世界しかなかったしなぁ……。
それと、この世界には僕の人生を全て知った人ばかりなのだ。
そんな人たちが僕の世界に来るとか……。
あぁもう。これについては考えたくない。
そんな事を考えているうちに、隊長が立ち上がり全員に向けて声をあげた。
「さて、目的地だ。ミチ、協力を頼むぞ」




